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何者にもなれない蝙蝠達  作者: 和菜
そして蝙蝠は羽を捨て
27/29

見付けた夢

 

 風が頬を撫でたような気がして、目を開けた。

 ぼんやりした視界一杯に広がったのは、真っ白な天井。

 そして。


「……大和隊長?」


 見慣れた、部下の、涙に滲んだ顔、だった。


「……か、りん……?」


 名を呼ぼうと開いた口は、何だかやたらと重かった。

 唇も震えて、全く上手く音を発することが出来ない。

 けれど夏鈴は、そんな俺を見下ろして、みるみるうちにもっと涙を目に溜めていった。


「っ、柚希さん! 皆!」


 次いで、夏鈴は突然叫び出す。

 夏鈴の後ろから、血相変えて柚希が駆け寄って来て、続くように賢吾と崎原も姿を見せる。

 視界は徐々にはっきりしていたけれど、状況は未だに、よく分からない。


「……、漸くお目覚めね、隊長」


 呆けている俺に、柚希が深い安堵の息を漏らしながら、苦笑交じりに呟く。


「ゆ、ずき……俺、は、一体……」

「話は後よ。ほら夏鈴、先生を呼んで来て」

「は、はい……っ」


 言われて夏鈴が弾かれたように走り出す。

 状況も呑み込めず、意識もまだ朦朧としているがとりあえず……どうやらここは病院で、俺はベッドに寝かされているらしい、ということだけは、何となく、分かった。


 その後、夏鈴に呼ばれた医者が、一通りの診察をして、終える頃には漸く、意識も少しははっきりして来た。

 お陰で、自分の置かれている状況も、そもそも自分がどんな状態なのかも、理解出来た。

 どうやら俺は、酷い手傷を負っているらしい。

 頭と体に包帯を巻かれ、頬にはガーゼ、右手にも包帯。

 しかしそうすると、俺は一体、何だってこんな重傷で病院に居るんだろうか。

 そこんとこが、どうにもよく思い出せなかった。

 診察を終えると、医者は深く安堵の息を吐き出して、俺と柚希達を見回しながら言った。


「もう大丈夫です。後は、傷が塞がって体力が回復すれば、すぐに退院出来ると思います」

「……、良かった……」


 夏鈴が再び涙を流してそう呟くと、柚希も笑って夏鈴の肩に手を置き、賢吾も崎原も、笑みを浮かべて顔を見合わせた。


「しかし、この怪我で、本当によく一命を取り留められました。一時は私も駄目かと思いましたが」

「……俺、そんなに、やばい状態、だったんですか……?」

「やばい、なんてものじゃありませんよ。はっきり言って、即死していてもおかしくなかった。稀に見る素晴らしい生命力です」


 先生は満足気にもう一度笑うと、また何かあれば呼んで下さい、と言い残して病室を出て行った。

 再び皆がベッドの周りに集まって、俺を見下ろす。


「もう……あんまり冷や冷やさせないで、下さいよ……!」

「本当ですよ。こっちの寿命が縮まりました」

「まあ、あんたみたいな男がこんな簡単にくたばるとは思ってませんでしたけど」

「よく言うわよ。何だかんだで崎原だって、すっごい落ち込んだ顔してたくせに」


 夏鈴に賢吾、崎原や柚希が、口々に言う。


「……心配、かけたな。でも、悪い……なんか、よく憶えてねえんだけど……俺、一体、どうしたんだ……?」


 怪我のせいか、意識ははっきりしてもやっぱり重たい口を動かして問えば、全員が痛みを耐えるような顔をして、「……あんたの無茶っぷりには、ほとほと呆れたわよ」と、柚希が呆れ果てたように言った。




 地元から新幹線で一時間半程移動した先の、とある県のとある町。

 俺は、三ヶ月前、そこを訪れていた。

 桜花に一時の別れを告げてから、一ヶ月後のことである。

 その地に、警察組織が密かに追っている殺し屋が潜伏している、という情報を突き止めたのだ。

 殺し屋、と言っても、ドラマや漫画に出て来るような、特殊訓練を受けたプロみたいなやつじゃなくて、所謂闇サイトで名を売ってる、ただのイカれた奴らのことだ。

 三年前に都内で起こった数件の猟奇殺人、その半年後に関西で起こった連続通り魔殺人、一年半前に四国で起こった老人五名が殺害された連続殺人。

 それら全ての犯人が、この地に居る。

 そしてその犯人を、二ヶ月以内に見付け出し、逮捕に誘導することが――俺の“申し出”を聞き入れる代わりに、本部長が突き付けた、“条件”だった。

 本来、逃亡犯を探し出すのにはそれなりの時間と期間を要する。

 何でもありの違法捜査をフルに活用しても、二ヶ月以内なんて殆ど不可能に等しかった。それも一人や二人ではない、各県の、最低三人以上を、だなんて、無謀が過ぎる話だ。

 それでも成し遂げることが出来たなら、俺の申し出を、受け入れてやる、と。

 俺は、即答で首を縦に振り。

 それこそ、あの手この手その手、何でもありそんなのあり、の方法で寝る間も惜しんで調べ尽くして。

 昨日、奴さんらがここに居る事を突き止め、確信した。

 ここに、それら全ての犯人が潜んでいる、と。


 犯人は七人。

 闇サイトに殺しの請負人として登録されている、自称殺し屋達だった。

 俺が手に入れた情報を、その地の県警本部と、そこが統括する“蝙蝠”小隊に開示すると、彼らはものの三日程で七人全員の住所と勤務先を割り出した。

 ある者は某中小企業の上役、ある者は地方公務員、ある者は教師……目を疑いたくなる程に、“普通”の人達ばかり。

 この世で一番怖いのは、幽霊でも猛獣でも害虫でもない。何でもない顔して普通に生きてる、普通の人間だよ、と言っていたのは、先代の第七小隊長だったか。

 俺は、確実に犯人達を捕らえるための作戦として、囮作戦を提案した。

 例の闇サイトに、俺自身の顔写真と名前を書き込み、こいつを今すぐにでも、貴方方の一番残酷なやり方で殺して欲しい、と恨みのたっぷり籠ったコメント書き込む。

 更に、俺がこの地を訪れていることと、今晩の予定も全て書き込み、犯人達をその気にさせた。

 俺が襲われたところを、警察が一網打尽。

 単純な作戦だが、ああいう手合いは自分達のことを正義のヒーローか何かだと思っているし、ここまでお膳立てしておいて何もしないなんて、逆にプライドが許さないだろう。

 その時点で、本部長との約束まであと一月足らず。

 俺自身、ちんたらしてる暇もなかった。

 俺の護衛にその地の“蝙蝠”小隊が就くことを条件に、作戦は実行された。


 そうして俺は、倉庫街まで連中を誘い込むことに成功し、作戦通り、自称殺し屋共がナイフやら拳銃やらを取り出した瞬間、予め配置されていた警官達が一斉に彼らを取り囲み、拘束した。

 だが、往生際の悪い犯人共は、警官達の手を払い除けて逃げ出そうとしたり、持っていた銃をいきなり発砲させて威嚇してみたり、その場はあっという間に、半ば銃撃戦と化した。

 で。

 俺は不覚にも、流れ弾を胸に喰らって。

 それから三ヶ月もの間、生死を彷徨っていた、らしい。




 話を聞くうちに、その捕物の際の記憶が少しずつ、まざまざと思い出された。

 何ていうか……マジでよく生きてたな、俺……。

 思い出した途端寒気が奔り、全身に痛みの記憶が蘇る。

 さっき先生が、「即死でもおかしくなかった」と言ったが、柚希曰く、弾は僅かに急所を外れていたそうだ。

 生きてて良かった……。

 この俺が、そんな風に思う日がくるなんて、夢にも思わなかったけど。


「――聞いたわよ、本部長から」


 不意に、柚希が一層声を低めてそう言った。

 頭だけをゆっくり動かして皆の顔を見回せば……皆、怒りと悲しみが入り混じったような、悲痛な顔を、していて。


「あんたが“蝙蝠”抜ける気だってことも、刑務所に出戻りなしで脱退したいって言い出したことも、その条件に、二ヶ月で殺し屋見付けろって命じられてたことも……」

「……そうか」

「そうか、じゃないわよ。何で黙ってた訳?」


 いつになく、柚希の声が低く、少し震えている。

 本気で怒ってる。

 ……そう、俺が、本部長に申し出た“願い”というのは。

 刑務所への出戻りなしで、“蝙蝠”隊長を辞めさせて欲しい、というものだった。

 だが当然、そんなことは絶対に認められる事ではない。

 隊員の、“蝙蝠”脱退は自由に認められているが、それには、一旦刑務所に戻って奉仕作業に準じることと、除隊後暫くは監視が付いたままの生活を送る事、その後の人生に於いて、如何な相手であろうと状況であろうと、“蝙蝠”の事は一切口を閉ざすことが義務付けられている。

 たとえ隊長と言えども、例外は一切認められない。

 だが俺は、そこを敢えて、どうしてもと喰らい付いた。

 一生監視が付いたままだって良い、どんなことでもするから、と。

 そうして、根負けした本部長が出した条件が、件の殺し屋達の居所を二ヶ月以内に突き止め、逮捕に導くこと、だったのだ。

 各県で起こった殺人事件の犯人達が、実は一つの県を根城にしている集団だった、と分かった時には驚いたが、その事実さえも俺にとっては僥倖だった。

 あちこちに出張ることなく、一網打尽に出来れば、本部長が提示した期間を早めることが出来るかもしれなかったから。

 期待通り俺は、それを余裕でクリア出来ていた筈、だったのだが……。

 俺は少々投げ遣りな気持ちで、柚希の質問に答える。


「今回の事は、お前らに関係ない」


 正式な指令ではない、俺自身が言い出した我が儘への対価に、本部長が俺に課した試練だった。

 “蝙蝠”第七小隊ではなく。

 黒咲大和個人への、挑戦状だった。

 だから、第七小隊の隊員を巻き込むつもりも、手助けを乞うつもりも、最初からなかった。

 それに。


「……俺は一生、“蝙蝠”でいるつもりだったんだ。

 一般人でもなく、“受刑者”でもなく、だが、そのどちらでもあってどちらでもない、中途半端な“蝙蝠”のままで。

 その何処にも行けない、何者にもなれねえ“蝙蝠”共を、高い所から束ねる男で、一生を過ごして終わるつもりだった」


 天職だ、などと思ったことはない。

 しかしそれでも、確かに“蝙蝠”部隊は、俺に一番相応しい身の置き場所だと思った。

 人の罪を肩代わりして、まんまと裏切られて自棄になり、己の命さえもどうでも良くなった、糞つまらねえ男の、生きて、死ぬ場所としては。

 だから俺は、いつも躊躇わなかった。

 逃げる犯人を追い詰める時も、荒み切った隊員を粛正する時も。

 ――女を抱く時も、下手すりゃ死ぬかもしれないような任務でも。

 けれど……だけど。


「それが……“蝙蝠”以外で、生きたいと思う場所が出来ちまった。

 許されるなら、一緒に生きて、死にたいと思う相手が、出来ちまった」


 死にたくない、と、初めて、強く、思ってしまった。


「独りぼっちにさせたくねえと、想う相手が、出来ちまった」


 そして、叶うことなら……独りぼっちにしないで欲しいと、願う相手が、出来てしまった。


「“人”に戻ることを切望しちまった時点で、俺はもう“蝙蝠”としても隊長としても、お前らにとっての裏切り者だ。

 それでも俺は、お前らを置いて去る道を選ぶ。

 なら……せめて、最後の仕事くらい、自分(てめえ)のケツは自分(てめえ)で持たなきゃ、だろ」


 普段よりゆっくりとした口調で言い終えると、俺達の間に沈黙が下りた。


「……惚れたの? その人に」


 ややって、柚希が、そう問う。

 答えようと口を開いたら……言葉を吐く前に、熱の籠った息が、無意識に漏れた。


「……惚れた、なんてもんじゃ、ねえよ」


 ――もしかするとそれは、“蝙蝠”の隊長として、絶対に、気付くべきではなかったかもしれない。

 黒咲大和として、絶対に、芽生えさせるべきではなかったかもしれない。

 でも、こうなったら、仕方ないだろう。

 だって、とっくに、自分のこの熱情を、認めてしまっているから。


「――だとしたら、大和……あんたは本気で、本物の大馬鹿野郎よ」


 ほんの数秒の沈黙の後、柚希が、再び、低く鋭い声音で、言った。

 酷えなぁ、なんて思いながら、無意識のうちに彼女から逸らしていた視線を戻せば――

 目に映った彼女の表情に、内心、ぎょっとする。

 鬼みたいにおっかない形相。母親がとんだ悪さしたガキを叱る時みたいな。

 けれど……胸に痛みが奔るくらいに、酷く、傷付いた目を、していた。


「あんたね、私達が何年、黒咲大和の下で“蝙蝠”隊員やって来たと思ってるのよ?」

「……、っ?」

「“蝙蝠”の隊員には、いつでも“蝙蝠”を抜ける権利が等しく与えられている。

 隊長がそうしたいって言ったからって、裏切り者だと罵るような、チンケでケチな部下だと思ってたの?」

「、……」

「少なくとも私は、今の大和の話を聞いて、かなりムカついた反面……かなり、ほっとしたわ。

 これで大和が、自分の命を、大事にしてくれるようになるから」

「……、柚希……」

「余計な心配も気遣いも無用。貴方がそうしたいと思うんなら、そうすればいいのよ。

 貴方は“蝙蝠”隊長である前に、黒咲大和というただの一人の人間、なんだから」


 言いながら、柚希は、ベッドに一歩だけ近付いて、俺の額にデコピンを一発お見舞いした。


「――もういいでしょう、大和。

 貴方は十分に私達を……“蝙蝠”を束ねる隊長の職務を全うし、十分に苦しんで十分に傷付いて……そして、十分に思い知った。ここいらがきっと、潮時よ。

 もう、自分を許してあげていい。

 人を殺す事さえ躊躇わなかった貴方が、人を愛した事実こそが、その証拠よ」


 悪さをした子供を、十分に叱った後。優しく包み込み許してやる時の、母親のような顔をして。

 柚希はそう、言った。

 途端に、胸の奥から、熱くて、苦しいような、何かが込み上げて来る。

 ――その時。


「――流石は、“蝙蝠”部隊の中でも優秀で気高い人材が集まった第七小隊だ。

 物分かりが良い上に、話も通じて、且つ……思い遣りがある」


 下手をすると皮肉にも取れる台詞を、流れるような口調で言いながら、唐突に割って入って来た、メンバーの誰でもない、声。

 俺を含め全員がはっとして振り向くと、そこには。

 俺達第七小隊の管理官である、県警本部長が、微笑を浮かべて立っていた。


 本部長は俺のベッドの側まで歩み寄ると、抱えていた花束を夏鈴に預けて、俺を見下ろした。


「全国に散らばる隊員の中で、最も“蝙蝠”小隊長に相応しいとさえ言われた男が、何とも無様な姿だな」

「本部長……何故、ここに」

「例の捕物の直後、ここの県警本部長より連絡を受けてな。この三ヶ月、時折様子を見には来ていた。

 今日は第七小隊のメンバー全員で見舞いに行くという話は聞いていたので、私もたまたま非番だったので訪ねてみたのだが……いやはや、何とも良い話を聞かせてもらった」


 至極愉快そうに言うから、俺もメンバー達もちょっと気恥ずかし気に目を泳がせる。

 流石は県警のトップ。全く気配に気付かなかった。

 それも、一連の会話を聞かれていたとは。

 冷静になって思い返してみても、やっぱりちょっと気恥ずかしい。

 だがすぐに本部長は笑みを消すと、側に置いてあった丸椅子に腰掛け、真剣な眼差しで俺を見据えた。


「傷の具合はどうだ?」

「……もう心配はないそうです。後は傷が塞がって体力が戻れば、すぐに退院出来る、と」

「そうか。それは何よりだ。ならば」


 と、そこで言葉を切り、本部長は、スーツの内ポケットから一枚の茶封筒を取り出し、中に入っていた、三つ折りに畳まれた紙を取り出して、勢い良く、広げる。

 それに書かれていた文字は……「特例的除隊許可証」


「っ、本部長、それは……!」

「約束の報酬と対価だ。お前の、即時“蝙蝠”脱退を、許可する」


 思わず身を乗り出し、飛び起きそうになったところを、全身に激痛が奔り、蹲ってしまった。


「隊長……っ」

「馬鹿、急に動くから」


 夏鈴と柚希に両側から支えられて、俺は再び布団の上にきちんと横たわる。


「思わぬアクシデントに見舞われたが、お前は見事私の出した条件をクリアしてみせた。

 正直、お前の“蝙蝠”小隊長としての手腕は、手放すには惜しいが……まあ、約束は約束だ。

 本日限りで、お前は“蝙蝠”第七小隊を除隊、ただの、前科持ちの一般人だ」

「本部長……」

「私との縁も、第七小隊のメンバーとの縁も、今日限りだ。

 明日になれば、ここにいる全員、一切の関わり、接触が禁止になる。

 ……後は、お前達だけで、存分に別れを惜しむと良い」


 微笑みを浮かべ、本部長は、自らが作成した許可証を封筒の中に戻し、ベッドサイドテーブルにそっと置いた。


「――幸せにな」


 そうして、息子を送り出す父親のような、優しくも逞しい言葉を告げて。

 彼は静かに、半ば颯爽と、俺に背を向けた。


「……っ、本部長!!」


 考えるより先に、俺は、痛みを耐えながら、再び無理矢理上体を起こす。

 夏鈴がまた、慌てて俺を支えようとしたけれど、賢吾がそれを、そっと制した。

 振り向く本部長の目をしっかり見据えて、半ば不格好に、小さく、頭を下げた。

 本当はもっとちゃんと、頭を下げて、礼をしたい。

 だけど、体が言う事を聞いてくれない。

 だからせめて――ちゃんと、伝えなくては。


「ありがとうございました。俺、“蝙蝠”部隊に入って、隊長になって、本当に、良かったです。今、やっと、本当に、心の底から、そう、思えます。

 本当に……お世話に、なりました」


 痛みに耐えつつ、少し途切れ途切れになりながら、拙い言葉で、精一杯、伝えた。

 本部長は、少しだけ面食らったような顔をした、けれど。

 やがてすぐに、ふ、と小さく笑って。


「――ああ」


 短く。応えて。

 今度こそ、振り向くことなく、颯爽と病室を、出て行った。

 俺を、“蝙蝠”に導いてくれた人。

 あの人が俺に声を掛けてくれなかったら、きっと、間違いなく俺は、あのまま、牢獄の中で酷い死に方をしていた。

 ――どうか、お元気で。

 柄にもなく祈りながら。

 俺は、閉じられたドアを暫くの間、見つめていた。


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