MT乗りは死なない。
オートマは認めない。
「なに? お前今時、M2に乗ってんの?」
「好きだから乗ってるだけ。別にあんたに関係ないでしょ? 走りやめて、インプに乗り換えたあんたに言われる筋合いなんて無い」
「インプだって強いけどな。そりゃあミッドシップとかと違って曲がりは悪いけど、安定してんぜ?」
「あっそ、別に勝負とかしないし関係ない」
この男は、かつてわたしと同じMR2に乗っていた。わたしは好きだから乗り換えていないけど、こいつは走り屋をやめて家庭向けのインプに買い替えた。しかもオートマ車。問題外。
「楽だけどな~高速とかは足だけで走るし。いちいちギアチェンとかめんどくね?」
「はぁ? 楽だけど楽しくない。一度でも楽な方に乗ったらもう、戻れないと思うけど? あぁ、あんたはもう一般車乗りだものね。戻るわけないか」
オートマは確かに簡単だし楽だ。仕事では全ての車がオートマだ。だから分かる。けど、だからといって、プライベート車までをオートマに変えるとかしたくなかった。
「もうやめちまえよ、手動は」
「何でそんなことをあんたに言われなければならない?」
「率を考えたらそっちの方が高いんじゃねーの?」
「それを言えばキリがない。オートマだからこそ、どこぞの店に間違って突っ込むんじゃないの?」
マニュアルのギア操作と、クラッチ踏みは癖になる程の面白さがある。これはオートマでは味わえないと私は思ってる。エンジンブレーキだって使いやすいし、ただ単純にブレーキを踏み込めばいいわけでもない。
何よりも、ギアチェンとクラッチを駆使して、ドリフトを楽しめる。オートマでも出来るけど、そんなのはやっぱり面白くない。
「だから俺と別れた?」
「それだけが原因じゃないけど、やっぱり許せないし」
「なるほどな。じゃあ、時代が変わってもお前は変わらないわけか。男の方が手動より自動を好むようになってきてるけどな。それでも求めるのはそっちかよ。なら、好きにしろよ」
「好きにする。私は私がマニュアルを嫌だと思わない限り、オートマになんて乗るものか!」
数年後、私は事故を機に、完全オートマ車ではなく、アクティブドライブ搭載の車で妥協して乗り換えをした……マニュアル車は死なない。心の中では――
実話を元に……以下略です。
アクション性なしの話ですけど、ちょこちょこ短編書きたいなと思いました。




