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2:妹よ、お前もか

 うーん。


 気のせいかと思ったが。やっぱり、聞こえる、よな。


……ユリユリユリユリ……。


 百合の気配がする。


……おかしい。なぜならここは俺の家、自室の中。女子がたくさんいる学校ではないのだ。

 なのになぜ、百合センサーが反応しているんだ? さっきからユリユリうるさいんだけどぉ!


 とりあえず部屋の中を探ってみると、割とすぐに原因は見つかった。

 本棚にあった、可愛らしいカバーのマンガ。

 いや、何だコレ。見覚えがないぞ……。


 パラパラッと中を見てみると、百合モノだ。どうりで。

 俺のものではないということは……。まさか。まさかあいつ……いやでもそんなまさか。


 その時、妹の弥生やよいが部屋に入ってきた。


 瞬間、ピュイーン! ときた。

 なるほど。やはり間違いない。こんな身近にも存在していたとは……。


「あぁーっ! 何してんのよ!」

「いやそれ俺のセリフですけど……」


 プライベートスペースという認識はないのか?


「お前ほんとノックとかしないよね……結構急に部屋入ってくるよね……」

「それ私のだから! おに……アニキは触んないで!」


「イヤイヤ……ここ俺の部屋だからね。何勝手に親に見られたくないモノの隠し場所みたいな扱いにしてんの!

 ていうか、俺に気づかれないと思ってたの? どんだけお兄ちゃんバカだと思われてんの!?」

「うるっさいな、早く返して」

 手にしていた百合マンガを奪われた。


 まあ、こんなやり取りにももう慣れている。

 俺は兄の余裕を醸し出しつつ、鮮やかに切り込んだ。


「ところで弥生お前、好きな女の子がいるのか?」

「はあっ!? ち、違うからぁ! 別に、そんなんじゃないし。コレはそういうんじゃないし!」

「まあまあ、お兄ちゃんそういうの分かっちゃう人だから。何たってお前のお兄ちゃんだから。お見通しだから」


「はあ? きもっ……きっしょ……何それ?」

「その子、家に連れて来なさい」

「えっ……何する気? サイテー、サイアク、マジで気持ち悪い!」

「オイオイ止まんないな! お兄ちゃん心折れちゃうからやめて!」


 ほら、俺って好奇心旺盛だから。すみませんね!


「なあなあ、一体どんな子なんだよ? 写真とかないのか?」

「絶対見せないから! このロリコン!」

「なっ……、人聞きの悪いことを言うなっ! 俺は大人のエッチなおねーさんが好きなんだから!」

「本棚見たから知ってるけど……」

「なーんだそっか、……ハァ!? プライバシーの侵害! 母上には言わないでぇお願い!」


 弥生は俺のカワイイカワイイ妹。……だったのだが。いや、今もカワイーんだけど。

 小学校高学年になり、お年頃というのか、最近特にナマイキだ。

 今まで「おにーちゃんおにーちゃん」だったのが、無理にアニキ呼びしようとしてるし。

 何なんだ「おに……アニキ」って。鬼兄貴? 何それめっちゃ強そう。


 この間なんか、髪型に悩んでたみたいだから、ツーサイドアップなんか可愛くて萌えるぜってオススメしたら、

 次の日にバッサリショートカットにしやがった。

 それも似合ってて凄く良いけど、口に出したらどんな仕打ちを受けるか分からないので言わない。

 お兄ちゃんはこれ以上傷つきたくない。



 フッ、やれやれ。本当に素直じゃないんだから。可愛いヤツめ。

 この俺に任せとけって!



「なってやるよ、お兄ちゃんがキューピッドに!」

「いらないから」



………………断られるパターンあるのかぁー、そっかぁー……。

 この前はたぶんうまくいったのになぁ。

 よく分からないが、俺のおかげだろ? あの二人。


「もー、ウザイから出てって!」


 廊下に押し出され、扉を目の前でバタンと閉められる。


……………………。



「だからぁ、ここ俺の部屋なんですけどぉー!?」




***




 何あれ。何がキューピッドよ! イタすぎ。

 まあ、でも。


「おに……アニキ、止めたりしなかったな……、嫌がったり、否定したりとかも、しなかった……。

 私、頑張ってみようかな……好きって伝えても、意外と大丈夫なのかも……」


 何か、やる気出てきちゃった。

 明日からあの子にどうやってアプローチしてみようかな、なんて。

 あー、ワクワクが止まらないっ。あんなに悩んでたのがウソみたい。


 もし、うまくいったりなんかしちゃったら……。

 「お兄ちゃん、ありがと」くらいは言ってあげちゃうんだから!

 楽しみに待ってなさいよねっ!

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