0:相模野くんの不思議な能力(センサー)
おかしい。なぜだ。一体全体、どうなっているんだ!
なぜ、この俺が、こんなにもモテない?
俺は机の上に両肘をついて組んだ手に顎をのせ、真剣に考えていた。
視界の端では、もうほとんど花を散らせた桜の木が、緑の葉を色濃く輝かせている。
少し開いた窓からの風で教室のカーテンがはためき、俺の額にさっきからバシバシと当たっている。
もぉー、ちょっとコレ邪魔だな誰か留めといてよぉ!
俺はついこの前、高校二年生に進級した。
そうしたら何が起こるのかというと、文系と理系でクラスが分かれるのだ。
俺はもちろん文系クラスだ。なぜなら女子の割合が多いと聞いたから。
実際、このクラスも圧倒的に女子が多い。
ではなぜ、俺はモテないのか? こんなに周りに女子がたくさんいるのに?
お前たちの目は節穴か? ここに最高にイカした男子がいて、こうして物思いにふけっているのだぞ!
その横顔にキュンとするのが普通だろ!
それなのにお前たちときたら、一日中そこかしこでペチャクチャとおしゃべりばかり。
よく話題が尽きないな。何がそんなに面白いんだ、ちょっと仲間に入れてくれないかな。
だんだん眉間に皺が寄ってきたのが分かった。おっと、いけないいけない、近寄りがたい雰囲気を出したら元も子もないぜ。ビークール、俺。
その時。
本当に何と言っていいのか分からないんだが、まさに天啓、きっと俺に運命の女神がお茶目なイタズラをしたんだ。
ピュイィーーーーーン! ときた。
目の前で強い光が瞬いたかと思うと、頭の中がシン……とする。
ユリユリユリユリ……。ユリユリユリユリ……。
……感じる。
感じるぞ、百合の気配を!
百合。つまり、女性同士の恋愛の気配を近くに察知した。
まあとにかく、なぜだか俺は、女性が同性の相手に想いを寄せている場合、その感情の行き先を察せられるようになったわけだ。
いやこれ冗談じゃなくって。
別におかしなことじゃないぞ。
だって、俺が今現在モテていないことに比べたら、よっぽどあり得る話だろ?