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第一回:現代での帝王切開と余談Z形成術W形成術について

中世風街並が広がっている異世界で手術を行います。

番外編として帝王切開から始めます。

本当は上肢の治療編から始めたかったのですが番外編から始めます。


異世界背景

手術に必要な器械と薬品は総て揃っている前提です。

抗生物質もヨードもあり、吸引に必要なポンプがあります。

バイタルを計測する知識、技能、技術があります。

シリンジがあり中空細管である注射針を圧延する技術を有します。

点滴がありゴムチューブを使っています。

どうしても先端技術が必要な場合は魔法術がある事にします。


まずは現代での手術を紹介してそれを異世界の技術と魔法に置き換えます。


術前


1)麻酔について

体位は側臥位にします。

2%リドカインを使います。

硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔があります。

脊髄クモ膜下麻酔と言ってくも膜下腔に局所麻酔薬を注射します

脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔で通る皮膚経路は一緒です

 皮膚から、皮下組織、棘上靱帯、棘間靱帯、黄色靱帯を通り、硬膜外腔にはいります

硬膜外麻酔はここまでです。

 くも膜下麻酔はこの後、脊髄硬膜、クモ膜、クモ膜下腔に達して初めてクモ膜下麻酔となります。

基本的にはL3/4を目標に穿刺します。

不可能ならL4/5やL5/S1を目標にします。

備考;L3/4のLは脊椎の場所で腰椎になります。

L3/4は第三腰椎と第四腰椎の間にブスッと刺すのです。

下腹を麻酔にかける時は薬剤の比重に注意します。

 比重が軽いと上位の内臓に影響が出やすく特に緊急入院の場合は胃の内容物を麻酔の影響で嘔吐してしまい気管に詰まって呼吸が停止する場合を考慮しなければなりません。

入院している場合は手術の12時間前から絶食して胃の内容物を空にしておきます。

帝王切開では硬膜外麻酔を使います。

硬膜外留置カテーテルは術後使用します。

1)抗生物質

Cefazolin(CEZ:セファゾリン)1-2g 1回 点滴静注する。

セファゾリンは抗生物質です。

抗生物質血中濃度が手術中に最大濃度になるようにします。

手術前60~30分前から点滴静注します。

 MIC(最小発育阻止濃度)細菌の増殖を阻止する為に必要な最小薬物濃度に注意します。


2)術野をヨードで清潔にする

ヨードはたっぷりまんべんなく塗る。

うずまきを描くように塗る感じです。

垂れた汁は化学火傷を起こすので丁寧に拭き取る。


術中


3)縦(正中)切開して開腹する(へそはよける)。

3-1)皮膚を切開します。

3-2)脂肪組織を切開します。

ここまで出血はガーゼで拭き取りながら手術を進めます。ほとんど出血しません。

 (ほとんど~しないは外科医の先生の考え方ですので一般の方から見れば結構出血してると感じると思います)

3-3)ここで広げると腹直筋とその筋膜が見えてきます。

3-4)筋膜を切開して腹直筋の白線を解離し腹膜を露出します。

ここまで出血はガーゼで拭き取りながら手術を進めます。ほとんど出血しません。

開創器をかけ術野を確保します。

(かけない執刀医の先生もいらっしゃいます)

異論はあると思いますが横切りではなく縦切りにしました。

腹直筋と平行して切れること術野が大きくとれること等が理由です。

 皮膚には皮膚緊張線(ストレスライン)があり、縦切りはこの緊張線を切断する形になります。

そのために傷跡が目立つ形になり炎症を起こすと瘢痕を残します。

 ここでは余談ですがZ形成術、W形成術を紹介します。産婦人科ではなく形成外科のカテゴリーになってしまいますが。

腹部の緊張線は横走りなので縦切りにすると傷は開く方向に引っ張られます。

その為に傷跡が炎症を起こしたりするのです。

傷跡治療や修復は機能回復を伴わない場合は美容整形外科になります。

 方法としてはまず傷跡、瘢痕になっている部分を切除します。筋膜と癒着している場合は剥離させます。

次にZ皮弁、W皮弁を作成、緊張線に沿って細かく縫合します。

1針縫合する箇所を10針縫合する感じです。

この処置で傷跡はかなり目立たなくなりますがなくなるわけではありません。

以上余談でした。


4)筋膜の切開法は症例をみて判断する

腹膜を切開すると子宮が見えます。

腹腔内に入る際,膀胱損傷や腸管損傷に気をつけます。

展開した腹膜の上方で子宮が透見できる部位から腹腔内に入る。

ここまで出血はガーゼで拭き取りながら進めます。ほとんど出血しません。


5)子宮下部横切開を行う

腹膜をクーパーで約8cm展開する。

膀胱を用手的に下降させる。

左右の円靭帯を確認し子宮の中央を決める。


ここまではほとんど出血らしい出血はないです。

いよいよ妊娠後期の子宮を切開します。

妊娠後期の子宮の血流は毎分1000ccにも達します。

 そのためここからは素早く児の娩出と胎盤と臍帯の娩出をして子宮の自然収縮を促します。

 胎児が子宮からいなくなり臍帯が切断され胎盤と臍帯を娩出すると自然結紮が起こります。

帝王切開では自然分娩と真逆で素早く行います。

何度も言いますが超迅速です。出血の時間との戦いです。



6)先進部の圧迫により胎盤の厚さが薄くなっています。

この部位を切開すると出血が少なくてすみます。

クーパーで子宮筋を切開していきます。

ここでかなり出血しますが時間との戦いになります。

児の娩出に15秒、臍帯を止血鉗子で挟み切断に20秒、風の如くです。

児の娩出は手を子宮腔内に入れお尻を押して娩出させるとポンッと出てきます。

破水した羊水と出血した血液を吸引します。

相当な量に達しますので素早く吸引します。

ここで胎盤と母体側の臍帯を娩出して子宮の自然収縮を促します。


7)子宮縫合は膜の保護の観点からなるべく腹腔内で縫合する

吸収性の糸で単結節あるいは連続縫合を行う原則的には2縫合を行う。

子宮筋層は縫うことで止血される為、素早く縫合します。

(2縫合は術後の経過に差がないという報告があり海外では1縫合が多い)

ダグラス窩および腸骨窩の血液を吸引洗浄する。

破水後長時間経過している例や羊水混濁例では充分洗浄する。

卵膜胎盤の遺残があってはなりません。

子宮切開創からの出血が確実に止まっていることを確認する。


8)閉腹する

止血を確認した後に,腹膜,腹直筋、筋膜まで縫合する。

感染予防のために生理食塩水で創部を十分に洗浄した後,皮下脂肪、皮膚の順で縫合を行う。


術後

9)抗生物質は術後感染予防の観点から術後3日は投与する

硬膜外留置カテーテルを通して痛み止めを入れる事があります。

これは患者さんが操作してある程度流量をコントロール出来ます。


バイタル省略しました。

以上が基本帝王切開です。

では異世界ではどうでしょうか?

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