第五話 旅立ちへの布石
よろしくお願いします。
「さぁてさて、全員の面子も揃ったところだしそろそろ――――本題にと入らせてもらおう」
先の大臣の声が発せられて、同時に謁見室内では緊張が走っていた。
トントが己が首周りにたぷついた肉溜まりを指でかき分けて喉元をいじって、ええ、と声を整えだす。
「そなた達が呼び出されたのは、他でもない我らが国王からの直々の勅命によるものである。だが今回、王はここには来られない。よって、不在である陛下に成り代わって、この吾輩トントが陛下から直々に仰せつかった言葉をそなた達に授けることとする。なお、これから吾輩が言うことは、我らが国王からの言葉だと捉え、皆心して聞くように」
ユーリと、エロイーズそれからアレキシスは一斉に固唾を飲むと、同じく一斉になってトントからの言葉に対して傾注の姿勢で臨んだ。
まずトントが二、三ほど咳を払うと、彼の口から次の言葉が語られていった。
「……そなた達も知っているだろうが、かつてこの国でも他の周辺国と同じように『大征伐』が行われてきた」
「『……っ!』」
トントからの突然の発言に年長者である二人が、露骨に反応を示して見せる。エロイーズはぼんやりと
開いていた双眸を突如全開させて、アレキシスは眉間に皺を寄せて口元を真一文字に強く噤み始めた。
☆☆☆☆☆☆
『大征伐』――――――今から十余年前のあくる日まで、エレメタルの世界各地にて繰り広げられた対異端者との内戦・動乱を総称したものである。
元をたどれば全て、小さな諍いに過ぎなかったのだが、いつしか積み重なり、燻りだし、ついには空焚きした鍋みたく一気に爆発してしまったのだ。ある時、人々は嘆いた。
責任者はだれだ、と。
そしてエレメタルにおいて最もポピュラーであると同時に、民衆から絶大なる支持を獲得していた宗教であるアトラティクス教会が神に成り代わって迷える子羊たちに一言こう宣った。
――――全てにおいての、責任は忌むべき彼らすなわち異端者共にあり、また我々の日々の生活を脅かしかねない各地で蔓延する飢饉や疫病もこれまたすなわち異端者共によって仕組まれた陰謀に他ならないのだ――――
そして、各地で異端者廃絶という大義名分の下で少数派の異民族、呪いと死を司ると謂われる黒法力師それから“魔女”の生き残りとされるハーフエルフなどに対する大規模な粛清が勃発したのである。怒れる民衆は火のついた松明を掲げて、聖職者たちは経典を片手に携えながら彼らを先導し、そしてついにはそれらの前衛後衛を軍隊によって守り固められ皆一丸となって魔女たちを殺戮しつくす。そんな光景がエレメタルの至る所で見られ、決して珍しい光景では無かったのである。
圧倒的な正義の名の下に、大正義の鉄槌を食らわせたらば、振り返ると畑の穀物は踏み荒らされ家々には火が放たれて完膚なきまでに母屋が壊れていて、地面には憎き魔女共が相次いで血を流し横たえたことにより形成された死屍累々の山、山、山! 死した母親の腕の中で泣きわめく赤子や、未だ逃げまどい続ける無辜の人々の阿鼻叫喚が魔女たちの住まう集落にて木霊した。
返り血で全身を真赤に染めあがった人々は、その一部始終を目の当たりにした上でこう思った。
――――これでようやく、“平和”で”安穏“に満ちた日常に還ることができる!――――と。
皆そう信じて疑わなかった。いや、誰も彼もが、自分たちの行いを神の思し召しだと正当化しつくしたのだ。そうやって棚上げすることが、一番楽だからと無意識下で悟ったからだ。
かくして、長きに亘って人々をあるいは世界を股にかけて大混乱をもたらした大征伐は民衆の圧倒的な大勝利により、終結に至る。
……例え、それらの行為が自分たちに何の意味もなさないことだったとしても、人々は我を忘れ一心不乱に大征伐終結の喜びをたたえ合い、互いに享受しあうのであった。
☆☆☆☆☆☆
「我が王国もまた、それらに対し一役買い異端者共を残らず制圧するのに尽力した。今ではすっかり反乱分子たちは鳴りを潜めて、すっかりと大衆に溶け込んだようにも思えた。だがいくら戦力を注ぎ込もうとも、完膚無きまでの根絶はどうあがいても成し遂げられなかった。未だにこの国には奴らの残党どもがこそこそと隠れ動いていて、人里離れた僻地に根城を置いているそうだ。何故そう言えるか……現に、我が王国の国境近くの山々で、とある不穏な動きが見られたという報告がこちらへと届いたからだ」
トントはそこまで言うと、一旦、口を噤んでスッと取り留めない感じで右手人差し指をユーリ達の前で掲げてみせた。エロイーズとアレキシスが怪訝な空気を醸し出しつつ、彼のおっ立った指を見遣る。
それから、トントはようやく次の言葉を口にと出していく。
「どうにも発生しているみたいなのだ――――ゾンビが」
「なんとっ……」「そんなバカなッ?!」「……“ゾンビ”、って?」
トントからの衝撃の言葉に、文字通り三者三様のリアクションを披露する彼らである。
エロイーズは驚いたあまり、両手を自身の顔まで持ってくると両頬に当てがった。
アレキシスは思わずたじろいで、その勢いの余り自身が装着している甲冑からカタカタと、音を軋ませた。
一方、ユーリは今日初めて聞いた単語がいったいどんなものなのか見当もつかず、咄嗟にトントへ聞き返した。
「実際問題、国境付近でのゾンビの目撃情報が後を絶たないでいる。これらが全て偽りでないとすれば、はっきり言って……異状だ」
しみじみと言葉を述べたトントに向けて、エロイーズが一旦申し訳の旨を伝え、切り込んでいく。
「恐れ多くも質問させていただきます。大臣は、このゾンビの発生について何が原因だとお考えですか?
是非とも参考までにお聴きしたいのですが」
「……まだ、確定はしていないのでここでの断言は差し控えさせていただこう。だが、バルべリア王国には
古来よりこんな言葉が遺されている。“ゾンビのたむろするところに、ネクロマンサーの影あり”と、な」
すると、今まで静観していたアレキシスが凛とした物言いで、とうのトントにと問いただす。
「つまり、閣下は先ほど来自分で仰られた国境近くの山々でゾンビが出現するようになったのは、その山々でネクロマンサーが隠れひそんでいるためだと。そういうことなのでしょうか」
「まあ、短的に申せばそうなるが……困ったことにそれらを裏付ける目に見えた証拠は、どこにもない。どの目撃証言もせいぜい、性質の悪い噂の域を出ないため我々は自ら動こうにも満足に動かせられないでいる。そこでだ、今回そなた達をここまで呼び寄せたのは他でもない。そなた達には我々が後々駆けつけられるように、ここから暫く行った所にある隣国と国境を接する、タトゥヤンマー山脈の方へと出張ってもらいたいのだ」
「閣下、それはひょっとすると、今日が初対面である彼女らと私たちをその、タトゥヤンマーへと先遣隊として向かわそうという魂胆なのでしょうか」
トントが黙って頷くのに対し、アレキシスは声を荒げさせた。
「閣下それではあまりにも無茶が過ぎます! いくら地図上ではこの王都から国境沿いの山脈までの距離がほど近く見えるとしても、それでも一筋縄ではいかないくらいには遠いのですから! 第一、先遣隊を組もうとするのなら、なぜ常駐している軍隊を遣わずに我々だけで作る必要があったのですか?」
「では、答えてしんぜよう。これはッ………………!」
突如としてトントは、天井のステンドグラスを見上げだした。
狐に抓まれた面持ちで、アレキシスもそんなトントに合わせて目線を上に向けた。
「………………からの、勅命であらせられる。何か?」
そしてまた、唐突にトントが首を元の状態に戻して、未だ上を向いたままなアレキシスにと説いた。
「と、ということは……な、なんとも」
しばらくして頭の傾きを戻すと、アレキシスはハッとさせされた。
そこはかとなく、ジェスチャーで言わんとすることを示されたアレキシスは、困惑と妥協を混濁させたような複雑な表情を浮かべると、騎士団々長の娘という立場上それ以上は口を閉じざるをえなかった。
すかさず、トントが更なる旨を主張しにかかった。
「それにお前たちは吾輩や、陛下からにしてみても見知らぬ間柄ではないだろう!? アレキシスは特に父君が陛下と旧知の仲であらせられるわけだが、エロイーズ女史もまた仕事の都合上頻繁にここへと召喚されているのだから吾輩からすれば、お得意様ということになる。いずれにしても、吾輩はともかく国王陛下はそなた達を一目置いておられる。これは大変名誉なことだ。だろう?」
強要と威圧めいた態度で接するトントに対し、アレキシスは未だ沈黙を貫く。
代わって、エロイーズがとうのトントへと口を開かせた。
「ああ、私からも是非ともお聞きしたいことがあるのですが。……まあ、私と彼女との間にて面識がなくとも陛下からの山よりも高く、谷よりも深い信頼のもとで我々による先遣隊の編成を考えておられる旨は十分理解できたのですが。ともすれば、陛下は……まさか、この子も先遣隊の一員として寄越そうとしてるわけではないですよね?」
エロイーズは己の中で少なからず危惧していることを、あえて直接述べながらユーリを見遣った。一方でとうのユーリは、未だに“ゾンビ”が何たるかを考えるのに没頭していた。
「“ゾンビ”って……“ゾンビ”って……」
トントはそんなエロイーズから送られた不安の旨をまるで、嘲笑うかのようにこう吐き捨てた。
「ハッハッハッハッ…………! 何を言うかと思えば、エロイーズ女史ッ! ハーフエルフの子供も先遣隊として組み込まれるかどうかだと? ――――――無論、そのつもりだ」
これに対して、エロイーズは真っ向切って先の事を宣ったトントに挑み始めた。
「ちょっとちょっと……! 大臣、いくらなんでもそれは酷というものじゃあありませんか?! 私はともかくとして、右も左もわからないような年齢的にあるいは肉体的に見てもずっと幼い子供でしかない彼をそんなところへ差し向けるだなんて、どう考えても異常です! 早急に、改まってください」
「別にユーリ一人だけを向かわそうなんて、思ってはせん。それでは余りにも心もとないからな。逆に思ったんだが、もしも右も左もわからないようであるなら……学ばせたらいいのではないかの。そなたや、アレキシスが直々に年長者として存分に教鞭を振るってやったらいい」
「なッ…………!?」
「それに、よく言うではないか? ほら、可愛い子には旅をさせよ、と。まさかとは思うが………………そなたは、ユーリのことが可愛くないのか?」
「そんなわけッ……! とにかく、それとこれとは話が別です! あなたがた王国政府の都合で、子供の自由意志をそんな簡単に踏みにじってしまうなんてあってはならないことです! 道義的な責任にも関わりますッ!」
とうとうエロイーズは憤慨するあまり、腕を組みトントに対して、徹底抗戦の構えをとるのだった。
分け入っても分け入っても平行線な、ふたり。トントは是が非でも、ユーリを危険性が孕むタトゥヤンマーの冒険にとエロイーズやアレキシスと共に同行させたい考えだった。
「(やれやれ……このままだと、埒が開かんわい。ならばッ!)あー……ユーリくんッ! 君の意見も是非とも取り入れたいんだが、」「えっ……ええっと、その、なんていうかっ」
「ちょっ、大臣! まだ話は……ッ」
茶々を入れる気満々のエロイーズを差し置き、構わずユーリに話しかけ始めた。
「それで……どうかね? ユーリくん」
「あっ……あのう、大臣さん? “ゾンビ”ってなんなんですか?」
「今はゾンビなんて問題じゃない! そんなことより、君に聞かねばならんことがある。そうだな、例えば……極めて自己中心的な人間がいたとする。その人間は、一羽の小鳥を籠の中でひっそりと飼いならしていたんだ。そのことに、彼は満足感を感じていた。小鳥もまたそうだった。そうして、籠の隙間から見える青空を仰ぎ見ながらすくすく育っていった。育っていくさなかに、小鳥はこう考えた。『僕も他の鳥たちみたいに、自由に空をはばたきたい』と! 小鳥は自分のそんな気持ちを嘘偽りなく、主である人間にその思いを打ち明けたんだ。そしたら、」
「そ……そしたら? その小鳥はどうなっちゃったんですか?」
至ってハラハラした面持ちで前のめりになって聞くユーリを目にして、トントは彼から何やら手ごたえを感じたようで尚の言饒舌に続きを語っていく。
「(しめしめ、上手く食いついてくれたな)そしたら、なんと、あろうことかッ! その人間は、正直者の小鳥を生意気だと思い口が利けないように嘴を紐で堅く結んでしまったのだッ!」
「な……なんて、ひどいことをッ! きっとその小鳥は並々ならぬ思いで、主である人間に打ち明けたっていうのに……ッ!」
完全に、大臣によって気持ちを絆されて、やり場のない憤りを露わにするユーリ。
したらば、もう完全にこっちのものとトントは、最後の追い込みに入った。
「(よーし、よーしッ! もうちょいだ、あともうひと押―し!)それからその小鳥は、一度嘴を縛られたことで恐怖を覚え、もう二度とその人間に対して本当の気持ちを打ち明けなんだった。そして、幾ばくかの年月が経過して小鳥は完全に大人の鳥として成長を遂げた……どこまでも、どこまでも、高いあの大空の彼方を見つめながら。それから暫くすると、鳥はやがて年老いて病気にも掛かってしまった。そして、結局、鳥は一度として外に出ることなくしてこの世を去ってしまったのだ。……皮肉にも、彼は自らの死によって始めて自由を手にすることができた。空高く、天国めがけて、天使のコーラス隊のもとへまっしぐらに、己の翼を目いっぱい広げて………………」
トントは、だんだん喋っていく内に熱くなって終いには両腕を振り仰いでのジェスチャーを披露するまでになった。恐る恐るトントが視線をユーリの方へ向けると、なんとユーリは最後の最後に待ち受けていた鳥の悲愴な運命に胸を痛めるあまりぼろぼろとむせび泣いているのだった。
「かっ、可哀想すぎるよぉおおおお………………! あ、ああああ、あんなにぃ、自由になりたかったっていうのにぃいいいい………………!」
溢れんばかりの涙を力いっぱい流すユーリの小さな肩をそっと抱き寄せ、トントは優しく語り掛けていく。
「わかるぞ、ユーリくん。今、君の気持ちが痛いほど伝わってきたところだ。そうとも、鳥は生きた上での自由を望んだんだが、主はそれをしなかった。なぜかッ?! ……それは、主が至って自己中心的な発想の持ち主だったからに他ならない。主は自分が餌付けしている鳥を常に傍に置いとくことによって、底知れぬ愉悦にと浸る人間だったのだ。所詮自分さえ良ければいいという傲慢千万な底の浅い愚か者に過ぎなかったのだよ。だが、これはこのお話の中だけの出来事というわけではない、世の中には自由になりたくとも出来ないまま終わる人たちがいるってことだ……例の御話の、あの小鳥のように」
「そっ、そうなんです、かあっ?」
ユーリはさめざめと泣きながらも、健気に答えてみせた。
そして、トントはユーリに対して実に単純かつ明瞭に、不自由の対象を知らしめていく。
「君は正しく、私の先ほど来口にしていた小鳥さながらの生き様を送っているのだ! そう、私に言わせれば君は意地悪な主人から自由をはく奪され限られた範囲のなかで生きることを強いられている、哀れなことこの上ない、籠の中の鳥そのものなのだよ」
「ユ、ユーリッ! それ以上は、訊いてはなりませんッ! 悪魔の囁きに、耳を貸してはなりませんッ!
そうっと、手を耳に当てがい、拒絶してみせるのです!」
心配のあまり、居ても立っても居られなくなったエロイーズが、心ここに在らずだったユーリに発破をかけた。
そのおかげか、ユーリは途端に冷静さを取り戻し、目の前のトントに語り掛けたのだった。
「あ、あのうっ。ちょ、ちょっと待ってください。百歩譲って、僕が大臣さんがいう『籠の中の鳥』だというのは認めます。でも……でもでもっ、いくらなんでも先生のことを『主』のような傲慢な人間っぽく言うのはやめてもらえませんかっ? 先生は優しくって、頭がよくって、何より僕を暗くじめじめした世界から光の溢れる心地よい外の世界へと解き放ってくれた恩人なんです。そ……それに、先生はすっごく優しい人なんですっ!」
強い口調で、ユーリは少しずつエロイーズに貼られたレッテルを剥がしていく。
虚勢がものの見事に崩れ去っていくのを実感したトントは焦るあまり語調も弱弱しくなっていき、とうとう発する言葉も支離滅裂になってきていた。
「……あ、ああ。そ、そうだとも~。君の言う通りだよ、ユーリくん。確かにエロイーズ女史は大変優しい心の持ち主さ、優しいが時に愚かさを滲みだしてしまうそんな人間なのだから」
「さっきから、どの口がおっしゃられているのですかね……」
「さ、さあユーリくんっ! 選びたまえっ、こうなったら君の自由意志に任せるまでだッ! 君だけ修道院に帰って日常の平穏と安心を取り戻すのか、それとも、いばらの道を歩みながらも本来望んでいた自由を手にするのかッ! 選択肢は二つに一つ……私は、断然後者のほうをお薦めするがね」
「騙されてはいけませんっ、ユーリ! あなたは、惑わされているだけなのです! 一緒に帰りましょう、修道院へ。最悪、どうか、どうかあなただけでもッ……!」
「さあ、ユーリくんッ!」「お願いです、ユーリッ!」
自然と、ユーリはよってたかって大の大人たちによって独擅場という名の土壇場に追い込まれていった。
少年であるにも関わらず、かつてないほど人生の選択を迫られてしまっているのである。
正直言って、ユーリにとってキャパオーバーもいい所で、そのうちユーリは考える事をやめた。だからこそ代わりに、自分の心に従ってみることにした。
「で、でもどのみち王様が決めちゃったんですよね。だとしたら……僕だけが帰っても仕方ないので、僕も先生たちと一緒に行くこととします。た、タトゥヤンマー、に」
ユーリの下した決断に双方は対極的な反応を示してみせた。
最初から乗り気だったトントは、ユーリの身体をひょいと両腕で持ち上げて、大仰なまでに喜びを表してユーリを高々と仰がせた。
一方、エロイーズはあからさまにがっくりとうなだれて見せ、ショックのあまり膝から崩れ落ちて両手を床に着かせてしまう。
ともかく、泣いても笑っても、これでユーリも冒険に同行することが確定したこととなる。
先ほど来ユーリを高く掲げているトントは暫くの間、己が両腕に持ち上げた彼を離すことはしなかった。
「や、ヤッターッ! バンザーイッ! わ……私の勝利だ――――ッ! イェ――――イッ!」
ちなみに、ユーリも最初こそは高く掲げられることを珍しがってたものの、段々、恐怖心が芽生えてきてひたすらそのことをとうのトントに訴えるばかりだった。
「あ、あわわわわわ………………! そ、そろそろ、降ろしてぇええええ………………!」
一方で、エロイーズもまたそんな彼を目の当たりにして、ただただその場にて残念がることしかできないでいる。
「ユーリ……あなたって、人は」
そして、それらを静観して今はただ傍観者に徹するのみであるアレキシスはというと、
(冒険に赴かねばならんのか……彼と彼女らとで!)
逃れられようのない現実を騎士らしく、一身に受け止めてこれからの旅立ちにと臨もうとしているのだった。
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