38「ブランとバオール」
01ブラン「ラルトス・アルメニア・ブランシュカといいます。怖がらせてしまってすみません。アーナがいつもお世話になっています、そして今も。」
02グア「アーナのお父さんって・・・確か・・殺されたって」
03ブラン「私もはじめ・・デッダにあうまではそう思っていました。私も妻もその覚悟で城に行ったのです。妻が目の前で殺され、次は私の番だと思った時でした。・・・デッダが私を気に入ったのです。」
04クワン「デッダが・・ブランシュカさんを・・」
05ブラン「ブランでいいですよ。私はその時に、娘に手をださないことを条件にデッダの目となり腕となり、足となることを約束させられた。」
06ローラ「それで・・・」
07ブラン「けれど私は逃げ出したかった。人を殺す手伝いをしている自分が気持ち悪くて仕方がなかったんです。そしてどれほどあのひとが恐ろしく、悲しい人なのか思い知ったから・・・。あのひとは止めてもらわなくてはならないんです・・。あのひと自身がそれを望んでいる。」
08ペイン「あいつが自身の死を望んでいるだと?はん、そんなわけがあるか。」
09ロイ「そっか、シャインちんはデッダと会ったことがあるんだよね。」
10ペイン「いい加減その呼び方やめろ気持ち悪い。もう二度とあの顔を拝みたくはなかったんだがな。」
11ブラン「・・・。城までの抜け道をお教えします。私についてきてください。バオールはさておき、バロールに遭遇することは避けられます。」
12クワン「ありがとうございます、ブランさん・・。だけど、デッダの右腕であるあなたが僕たちの手助けをして大丈夫なんですか・・?」
13ドラク「せや、裏切りになるわけやろ・・?おっさんの命狙われたりせえへんのか?」
14ブラン「私の命はもともとあの日で尽きているはずだったもの。君たちに出会えたことには何かの意味があるのでしょう。それに最後くらい、アーナに父親らしい姿を見せなければかっこ悪いでしょう?」
15クワン「ブランさん・・・。」
16ブラン「さあ、急ぎましょう。」
17グア「随分と入り組んだ道だな。確かに俺たちにはわかるはずもない。」
18ブラン「メディア城までの道はもちろんですが、城内も複雑なつくりですから大広間にたどりつけるのは悪魔か私くらいです。あとは・・・あり得ませんが、本物のメディア様も。」
19クワン「本物のメディア様・・・。」
20ドラク「デッダはメディア様になり替わろうとしてるってことなんかな。」
21ローラ「トゥルハンスの象徴であるメディア城を拠点としたということは、この世界を自分のものにしたいと思っているとか・・」
22ロイ「シャインちんはデッダの目的とか知らないの?」
23ペイン「知るか。興味もないな」
24クワン「目的は本人に聞けばいいことだよ。ブランさんこの先は・・・」
25バオール「待て」
26ドラク「ひ・・っ、お、おいこの声・・・・!」
27バオール「何をしている、どこへ向かおうとしているのだ?」
28クワン「バオール・・・」
29ブラン「すみません、警戒はしていたんですが・・」
30バオール「ブランシュカ、お前はいつの間に選ばれし若者の仲間に加わったのだ。随分と楽しそうではないか。私も仲間にいれてもらいたいものだな。」
31ペイン「・・・ちっ」
32バオール「おや、ペインではないか。やはり帰ってきたのだな、お前に光は似合わぬぞ」
33ペイン「黙れバオール。私は戻ってきたわけじゃねえ。デッダを殺しにきたのだ勘違いをするな」
34バオール「ほう、あの方を殺しに。なかなか面白いジョークだ」
35クワン「ブランさん、下がっていてください。あいつは僕たちでなんとかしますから・・!」
36ブラン「クワンくん・・!」
37バオール「やめておけ。あの方との闘いとの前に力を使ってどうするのだ。無駄なことは控えることだな。」
38グア「・・・・どういう意味だ。お前、なんのつもりだ?」
39バオール「そうだな、そろそろ私にも時が近づいているということだろう。」
40ドラク「・・なんの時が近づいてるって?」
41バオール「聞かなかったか?我々悪魔は地上でいう『憎む心』であると。我々も貴様らと同じように歳をとるとな。ここに来た当時は憎しみの心に溺れ、支配され、あの方の言いなりになっていることが当然だった。だが外見は変わらずとも歳をとるにつれて、地上界へと帰る準備がはじまる。」
42ロイ「準備・・・」
43バオール「全ての記憶が消され赤ん坊として生まれ変わる準備だ。そのためか私ほどになると自我が生まれ、あの方の考え方に疑問をもつものや、私のように争いを好まぬものもあらわれるのだ。だが・・貴様らのお仲間ごっこには付き合いきれぬ。さっさと消え失せろ。」
44ペイン「バオールおまえ」
45バオール「さっさと行けと言っている。こちらを振り向くな、さあ行け。殺すぞ。」
46ローラ「この感じ・・・・もしかして・・・・」
47クワン「ローラ?!そいつに近づいちゃ・・・!」
48ローラ「・・・・バオールさん。どうして私たちをかばってくださったんです・・?」
49ドラク「え・・・、・・・っ!おいおいおい、なんやねんこの黒い棒っ・・・?!それにお前・・血が・・・」
50クワン「赤い・・・・」
51ペイン「デッダの術だ。指定した者の体を確実に貫く暗黒術のひとつ。だが、お前なら避けられたはずだ」
52ブラン「・・・・・バオール」
53バオール「黙れ、私に情けはいらぬ。せいぜい生き延びることだ、愚か、で哀れな、選ば、れし・・・」




