36「守り方」
01レイ「は・・・?何言って・・・」
02ドーナ「あなたのことはここでずっと見ていました。あなたの知らないところで、あなたのことをよく知る子から話も聞いていた。」
03クワン「ロイはドーナさんと話していたのか・・・」
04ドーナ「あなたは地上でイジメを受けていましたね。親にも周りの人にも無視され、あなたは自分の存在を全否定されたような気持ちで生きていた。」
05レイ「うるさい!!知ったような口を利くな!!黙れ!!!」」
06ドーナ「いいえ黙りません。あなたが彼らを拒むのは、自分を守れるのは自分しかいないと思っているからです。」
07レイ「・・・・っ」
08ドーナ「レイ、あなたは闇の使いに問いましたね。なぜこの者たちを信じるのかと。どうして彼女だったのか、それは自分と重ねたから。そうですね?自分ともっとも近い人間であるとあなたは感じていた。だから彼女に聞いたのです。どのように彼女が自分を守ってきたのかをあなたは知りたかった。」
09ペイン「ふん、そんなことか。私は私を売った親も、その相手も殺した。お前も逃げずに殺してやればよかったんだ。」
10クワン「シャイン…!そんな言い方…!」
11ドーナ「いいえ、彼女は間違ってはいません。レイ、あなたには彼女の痛みがわかりますね。そして、彼女の優しさも。彼女の守り方はそれで、レイの守り方はそうではなかった、それだけなのです。ただ、自分を守りたいだけ。」
12ペイン「………ちっ、」
13レイ「ちがう・・・」
14ドーナ「違いません」
15レイ「嫌だ・・・違う・・・嫌だ・・・!」
16ドラク「おいおい・・・やばいんちゃうか・・・?」
17グア「レイ・・落ち着け・・!」
18レイ「いや・・・・い、・・いやだ・・・・っ・・ああ・・いや・・・い・・・!!!」
19ドーナ「黙んなさいっ!!!あなたはいやいや坊やですか!!!!その歳になって恥ずかしいですよ!?」
20レイ「っ!」
21ドーナ「黙っていましたけどね、さっきからずっと気になっていたんですよ、レイ、あなたその口の利き方はなんですか。目上の方には敬語を使いなさい!私に向かってうるさいだの黙れだのよくそんな風に言えますね?いやいやとなんでも嫌がって。嫌なら何が嫌なのかはっきりおっしゃい!否定するなら別の案を提示するのが筋ってものです!」
22レイ「ご、ごめんな、さい・・・」
23グア「謝った・・・」
24ローラ「ドーナさんお母さんみたいですね・・・」
25クワン「そういやドラクのときも似たような感じだった気が・・」
26ドラク「・・・・優しくされるのも確かにええんやけど、叱られるんも嬉しかったりするんや。俺のことを考えてくれてるんやって・・・そう思えてな。」
27ペイン「・・・・」
28ドーナ「謝ることができましたね、レイ。いい子・・・、あなたはとてもいい子なのですよ。私はそんなあなたが大好きなんです、わかりますか?そしてこの子たちもあなたを信じていると言ったのです。レイ、あなたのことをです。」
29レイ「そ、れは・・・」
30ドーナ「ここにいる子たちは、みんなあなたのことを知らない。そうね、その通りです。だけどレイ、あなたもそうでしょう?それなのにどうして嫌うのです?嫌われていると思うのですか?」
31レイ「・・・・・」
32ドーナ「それはあなたがあなたを嫌っているからです。あなたは自分を責めるのです。みんなが僕を無視するのは僕が悪い子だから。僕がもっと勉強ができて、運動ができて、明るくて、笑顔で、ちゃんとしていれば。僕がもっと。もっとうまくできる僕だったら。」
33レイ「・・・うぅ・・・・」
34クワン「それであのロイがうまれたのか・・・」
35ペイン「・・・馬鹿なやつ」
36ドーナ「あなたは他人を恨むことより自分を恨むことを選んだのです。だから自分が壊れてしまった。他人でも自分でも、恨むことや責めることは苦しいことです。レイとは違う守り方をした闇の使いも、傷を負った使いたちもそれを知っているから、あなたを迎えにきたのですよ。苦しんでいるあなたを助けにきたのです。」
37レイ「た、すけに・・・・」
38クワン「・・・うん」
39ドーナ「今、誰かがあなたと同じように苦しんでいます。壊れてしまった自分は、自身では救えません。救えるのは、誰かだけなのです。そうでしょう?そしてあなたは、この世界を救う選ばれし者、魂の使い。今度はレイ、あなたが、誰かの『誰か』となって助けることができるのです。」
40レイ「・・・・・」
41クワン「レイ・・・」
42レイ「・・・・るよ」
43クワン「・・・え?」
44レイ「・・・使いーズ。・・・はいるよ。」
45ローラ「あ・・・!」
46グア「レイ・・・!」
47レイ「お、お試しだよ・・・僕も、ただのお試しだ。」
48ペイン「かわいくねえな」
49レイ「お前にだけは言われたくない・・・!」
50クワン「ドーナさん・・・あの、」
51ドーナ「何も言わなくてよいのです時の使い。あなたの傷は私の傷でもある。これはちょっとした傷のなめ合いです、そうでしょう?」
52クワン「・・・・そうですね。僕、サレバルトがあなたを愛した理由がわかる気がします。」
53ドーナ「あら嬉しい。けれど私は一生サレバルトの妻ですから、ご期待には応えられませんよ。」
54クワン「ああいや・・・そうじゃなくて。あなたに少し似ている女の子を知っているから。強気で、でも優しくて、本当は弱い・・・」
55ドーナ「・・・。大事になさい時の使い、その子もあなたも。私に似ているのなら・・・。大切な人の人生を失うのは本当に恐ろしいことなの、自分を失うことよりも。」




