世界が滅茶苦茶になっても
「ここは……」
可憐が目を覚ます。目を開くと、いつもの教室と雄平の姿があった。
「どうやら成功したみたいだな」
雄平は彼女の意識がしっかりしているのを見て安心する。
「なにかあったの?」
「可憐、お前はゾンビに噛まれたんだ」
雄平は可憐がゾンビへ変わってしまったことを説明する。
「わ、私、ゾンビになっちゃったの」
「大丈夫だ。ゾンビ化の呪いはすでに治してある」
雄平はゾンビ化を治す方法の一つに将軍ゾンビの血を飲ませるという方法があることを説明する。
「藤田は隊長ゾンビを操っていた。そして隊長ゾンビを操れるのは世界に大王ゾンビか将軍ゾンビだけだ」
世界に一体しかいない大王ゾンビである可能性は低いし、そもそも魔王と同じ力を持つなら、今の雄平に倒すことはできない。
将軍ゾンビだと確信し、可憐に藤田の血を飲ませてみると、無事人間に戻ることができたのだ。
「他のみんなは?」
「みんな無事だ。花原も高木も安藤もな。ゾンビの大群が相手なのに、たいしたものだ」
「良く無事だったね」
「強力な助っ人が来てくれたからな」
雄平が花原たちの元へ行くと、迷彩服姿の軍団がゾンビを殲滅していた。市ヶ谷が助けに来てくれたのだ。
「市ヶ谷に恩を売っておいて本当に良かった」
でなければ、花原たちは死んでいたかもしれない。
「で、これからどうするの、ゆうちゃん」
「可憐を救えたことだし、俺に目的はないよ」
「なら私から提案があるの?」
「提案?」
「うん。将軍ゾンビの血を飲めば、ゾンビの呪いが解けるんだよね。だったら色んな人たちを助けてあげようよ」
「俺に慈善活動をしろと?」
「ゆうちゃんは変わったように見えるけど、結局根っこの部分は優しいと思うの。だから私の提案に賛同してくれると思うのだけれど」
可憐は試すような口調で確認する。雄平の答えが分かっている質問だった。
「仕方ない。可憐の頼みだ。日本の奴らを助けてやるとするか」
勇者のようになと、雄平が続けると可憐は笑った。
「幸運にも俺は日本を救うための力を持っている。花原組という手足もある。だから市ヶ谷のように民間軍事会社を設立し、力と薬で世界を救いたい。勇者の自己満足に付き合ってくれるか」
「もちろん。だって私たち、たった二人の家族だもん」
雄平と可憐の二人は笑いあった。ゾンビが跋扈し、美醜が逆転した世界でも、二人は今幸せだった。
 




