表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/38

差し出しちゃった♪

 雄平が花原の家へ戻ると、すぐに異変に気付いた。まずは匂いだ。嗅ぎ慣れた血と臓物の匂いが飛び込んできたのだ。


 雄平が門を潜ると、そこには地獄が広がっていた。ゾンビに襲われたであろう食い散らかされたヤクザの死体。拳銃で必死に応戦したのだろうが、数に押し切られ、殺されてしまったことが一見しただけで分かった。


「偶然ゾンビが襲いに来たという訳ではなさそうだな」


 結局正体の分からなかった勇者がゾンビを操り、花原組を襲撃したのだ。


「可憐は無事なのか……」


 雄平は気づくと駆け足になっていた。家の中に飛び込み、可憐がいた部屋へと急ぐ。


「可憐! 無事なら返事をくれ!」


 雄平は声をあげて、可憐を探す。だが可憐からの返事はない。


「雄平く~ん」


 その代わり高木の声が聞こえる。猫撫で声は、この状況だと無性に腹が立った。


「高木、可憐はどこだ?」

「うん。そのことなんだけどね、雄平君に素敵なお知らせがありま~す」

「なんだ?」

「雄平君には可憐ちゃんより素敵な彼女ができました♪」


 高木が手を挙げて、そんなことを口にする。


「冗談は必要ない。可憐はどうした?」

「答えないと駄目?」

「駄目だ」

「勇者さんに差し出しちゃった。てへぺろっ」


 雄平は気づくと高木の頭を掴み、力を込めていた。


「い、痛いっ、痛いって。ギブギブギブギブ!」

「地獄を体験させてから、地獄へ送ってやる」

「ま、待って。まだ話に続きがあるの!」


 雄平は手に込める力を緩める。


「続きとはなんだ?」

「私のこと、殺さない?」

「内容による」

「だったら話さないも~ん」

「……分かった。殺さない。だから話せ」

「勇者は学校にいるよ」


 雄平は不審げな表情を浮かべる。


「どういうことだ?」

「勇者が可憐を連れていくときに、言い残したの。雄平君の学校で待ってるって」

「……勇者とはいったい誰なんだ?」

「金髪で頭の悪そうな哲也って呼ばれていたチンピラよ」

「あいつか……」


 ブス専だと話していた男だ。美醜が逆転していない世界から来た人間なら、勇者であることにも納得だ。


「だがなぜあいつは学校に来いと?」

「分かんない」


 学校を拠点として雄平を迎え撃つ考えなのだろうか。だがその考えは誤りだと雄平はすぐに気づく。拠点とするなら、花原の屋敷でも構わないはずだ。


「そういえば花原と安藤はどうした?」

「ここにいるであります」


 雄平は声のした方向を見る。安藤と申し訳なさそうに頭を下げる花原の姿があった。


「申し訳ありません、雄平さん。私の力不足で」

「……そんなにも強い敵だったのか?」

「いえ、私は勇者と戦っていません。ですがゾンビの数があまりに多く、可憐さんを守りきれませんでした」

「花原のせいじゃない。こういう事態を想定できなかった俺のミスだ」


 雄平は深呼吸して落ち着く。


「勇者が可憐を連れ去ったということはまだ無事なはずだ」


 でなければ、わざわざ連れ去らず、その場で殺すはずだ。


「俺は学校へ行く」

「なら私も連れて行ってください。必ずお役に立ちます」

「おそらく学校はゾンビが跋扈しているぞ。怖くないのか?」

「怖くありません。それよりも受けた恩を返せず、恩人を死なせるほうが嫌です」


 雄平は花原の同行に同意する。勇者相手なら心許ないが、ゾンビ相手なら十分戦力になるだろう。


「水臭いでありますな。本官も当然一緒に付いていくでありますよ」

「私も! ヤクザの家で一人なんて嫌だし」

「……勝手にしろ」


 雄平たちは花原の屋敷を後にすることを決めた。向かう先は学校だ。雄平はスマホからアイテムを選択する。


『Bランク:学園転移』

 使用者の入学したことがある学校へ転移することができる。一日に一度しか使用できない。


 浮遊感に包まれ、移動した先は、雄平の通う学び舎だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ