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『恋の女神は逃避中』 by紫陽圭

恋の女神の攻略法 (『恋の女神は逃避中』 &Now)

作者: 紫陽 圭

『恋の女神は逃避中』とその直後。 隣国までやって来た皇帝の狙いは?

(本編を読んでなくても分かるはず・・・。)

 ********** 序章 **********


 フッ。

「・・・陛下?」

 宰相が怪訝けげんそうに問うてくる。

 その声に、思わず口を突いて漏れた笑いを聞かれたと気付く。

いまなお答えを求めて俺を見てるが、正直に答える気は無い。

ついつい思い出し笑いがこらえられなかったなどとバレれば、質問攻めにあうのだから。


 ここは我が皇国の皇帝執務室。

 俺は、来客までの待ち時間も惜しんで執務中、というか実は来客の為に執務を前倒し中。

で、その来客について思い出していたわけだが・・・。

『彼女を苦しめたら天国から戻ってでも張り倒しますからね?』

 お曾祖母様、わかってます、遺言にそむくつもりは有りませんよ。




 ********** 出会い **********


「ラストダンスは、ぜひ私と・・・。」

「え?」

 曲が終わったタイミングでダンスに誘う。

 相手は、この国の伯爵令嬢。 先ほどまでに何人かの男性と休憩をはさみながら踊っていた。 そして、残すはラストダンスのみ。 彼女が微笑みの下に押し隠してる『やっと解放される』という思いも気付かないフリをする。 

彼女は、一瞬、体をビクリとふるわせ、振り向いて固まった。 この反応に『やはり』と思う。

俺はこの王宮でダンスをしたことは無い。 彼女とも初対面。 普通は名乗らなければ俺が誰か分からない。 なのに、彼女は分かった。 そして『拒否できない相手』と考えてる。


「どうぞ?」

「!  はい。」

 彼女に手を差し出しながら、そっとうながす。 我に返った彼女が重ねてきた手が小さく震えている。 緊張しているらしいが、それも俺の確信を強める。

 ラストダンスを踊るのは特別な相手とされているのもあって、戸惑いも大きいようだ。

普通は噂になるのを気にすべきところだが、俺が彼女に話しかけるチャンスはダンスの間くらいのものだし、彼女は今まで他の男たちと踊っていたから割り込むわけにもいかなかったのだという説明で何とかなると判断した。 この時は、『彼女となら噂になっても構わない』と思ってることに自分でも気づいてなかった。


「後で談話室で少し話を。 侍従に案内させる。 陛下の許可はいただいてある。」

「わかりました。」

 我が皇国とはダンスのタイプが異なるため、ステップを知っているとはいえ俺の踊り方には独特のクセが出る。 そのため、この国の令嬢は俺とでは踊りにくいだろうに、彼女はなんなく対応している。 たいしたものだ。

曲の終了間際にささやくように告げる。 事実、事前に許可は取ってある。 そして、彼女は断らないし、断れない。




 ********** 確認 **********


 王宮の、対王族用らしき談話室で彼女を待つ。 

広くて豪華だが、明るさと落ち着きを兼ね備えた上品な造りと内装で、居心地がいい。

 室内には、俺とこの国の国王陛下・王妃・宰相と侍女。 彼らの同席が許可の条件だったわけだが、話の内容が気になるのはもちろんだろうが、警戒ではなく彼女をフォローするのがおもな目的のようだ。 彼女の能力や人格への信頼がうかがえる。 


「たいした話じゃない。 聞きたいことが有っただけで、こんなふう(大事)にするつもりは無かったんだ。 周りは気にせず、答えてほしい。」

 侍従に連れられて彼女が入って来た。 入れ違いに、人払いを指示された侍女たちが退出する。 

メンバーを見て驚き、改めて緊張した様子に、できるだけ穏やかな口調で話し掛ける。 内心はまだ緊張してるだろうに、彼女は一瞬でそれをかくしてみせた。


「テラスで歌ってた歌、あれは何だ? 休憩のたびにテラスで歌ってただろう?」

「? ・・・!」

「「「?」」」

 いきなりだが、単刀直入に聞いてみる。 みんな驚いていたが、彼女と王たちとでは驚いてるポイントが違うと気付いたのは彼女と俺だけだろう。

普通、招待された他国の王がテラスでのささやくような歌声に気付くことは無い。 ましてや、歌う度にわざわざ聴くことは無い。 彼女はそれに気づいてるようだった。


「どうした?」

「・・・祖先(からずっと住んでる国)の故郷の歌です。」

「緩やかな旋律と物悲しい曲調の曲ばかりだったな。」

「教えてくれた今は亡き曾祖母を思い出してしまったので・・・。」

「そうか。 ・・・貴女自身ではないのだな。 わかった。 下がって構わない。」

「・・・失礼します。」

 彼女が歌っていた曲は、俺が幼いころにお曾祖母様から聴いた曲に似ていた。 俺までお曾祖母様を思い出し懐かしかった。 そして、そのお曾祖母様と俺と彼女のお曾祖母と彼女の4人の髪と目の色は似ている。 だから、彼女が歌う度に、人任ひとまかせにせず俺自身で聴いていた。 そして、確信は強まる。 

 俺自身がそうではないように、彼女もそうではなかった。 しかし、おそらく、ほぼ確実に、彼女の曾祖母がそうだろう。

 王たちにあやしまれない程度の内容にとどめ、彼女を開放する。 いつか、たとえ全てを打ち明けるとまではいかなくとも、語り合うことくらいは出来るだろうか。




 ********** 手紙 **********


 帰国後も、彼女の動向は調べて報告させていた。 


 すると、気になる報告が来たので、手紙で彼女にカマをかけてみることにした。 

もちろん、手紙だけなんて無粋ぶすいな真似はしない。 彼女が歌いながら見ていた『さくら』に似た木の一枝ひとえだを添える。 普通、これぐらいなら何かをかんぐられることは無い。 

皇帝と一介の貴族令嬢が手紙を直接遣り取りなんて本来は有り得ないため、王が内容をあらためてから彼女に渡してもらうことにするのも忘れない。


 『あの時の歌の題名を教えてほしい。『荒城の月』という曲は知ってるか?』

 まずは、要らぬ警戒をされないように軽い質問のみ。

 返事に記載されていた曲『さくらさくら』『花』『故郷ふるさと』は祖母との会話で出てきたことが、幼少時の日記から確認できた。 同じく記載の有った『荒城の月』も彼女は教えてもらっていた。 ますます確信が強まる。 同時に彼女に親しみも感じていた。



 次期近衛隊長候補が婚約? あの子犬みたいな男だよな? 子爵令嬢と? 前回は、あの時の公爵子息と伯爵令嬢だったよな?

また、気になる報告が来たので、手紙を送る。 今度は例の木の花を使ったしおりを添える。

気分が落ち着かない。


『貴女と私の瞳の色は似ている。 貴女の瞳の色は誰に似たのか?』

 少し個人的な内容を聞いてみる。 俺は、彼女の曾祖母や彼女の髪と目の色は知っている。 彼女はどうだろうか。 舞踏会の日、俺と似ていることくらいは気付いただろうか。

 『曾祖母と同じ』 とのシンプルな返事。 これでは、俺たちとの関連まで気付いたかどうかは分からない。 残念。 しかし・・・もしかして、わざとはぐらかした?



 またまた、今までと似た報告。 今度は、あの時の王子と公爵令嬢の婚約。 

手紙で反応をうかがう。 例の花の柄のブックカバーを添えて。 

俺は微妙にイラついている・・・のか?


『私の瞳も曾祖母譲り。 歌といい、曾祖母たちは同郷だったのかもしれないな。』

 前回の続きのような内容で少し掘り下げてみる。 『故郷に帰る方法は分からないが、今は幸せだから構わない』と言っていた曾祖母を思い出しながら・・・。

 彼女の曾祖母は『(故郷は)2度と帰れないほど遠い』と言ってたとのこと。 やはり、か。



 似た報告が4度目になると、手紙がまどろっこしい。 例の花のごく小さな絵を添える。


『ゲームというものを知っているか? 曾祖母が故郷で親友と恋愛ものに夢中になってたらしい。』

 俺にとっては、決定打にも近い質問をぶつける。 彼女はどこまで知っている?

 『私の曾祖母も夢中だったようです』との返事の筆跡が少し震えているように感じるのは気のせいか?

 しかし、これでほぼ確定だ。 あの伯爵令嬢が『彼女』で間違いない。 

不思議な昂揚感こうようかんに少し戸惑う。



 5度目の報告。 そろそろ手紙では我慢できなくなってきた。 例の花をモチーフにした髪飾りを添えた。


『他の歌も聞きたいし、曾祖母の話もしたい。 来週、会談で行くので、その時に・・・。』

 今回は質問ではなく、予告というか通告。 ここまできたら、直接会って話すしかない。 拒否はさせない。 王があらためる以上、逃げ場も無いはず。 同時に、その王が放置するわけも無いが、彼女なら上手くやるだろうと信じられるので問題無い。



 会談の準備中、6度目の報告。 安心と不安を感じるも、近々会うので今回は手紙は出さない。




 ********** 女神との再会 **********


 さて、ここは前回と同じ談話室。

今回も国王と王妃は同席して人払い。 宰相は用が有って同席できないらしい。


「ところで、女神様は他国の人間も救ってくださるのかな?」

「は?」

 彼女は、リクエストに応じて『荒城の月』を歌い、曾祖母の話をしてくれた。

その様子に安堵を覚えながら、話題を彼女自身のことに変えてみる。 突然の話題転換にきょとんとする彼女。 ホントに訳がわかってないのか?


「あら? 恋の相談? 貴方、やっと結婚する気になったの? もしかして?」

「女神? 救う? 恋? 相談?」

「最近の婚約ラッシュ、貴女の仲介だと評判よ? 例のダンスは恋愛相談だったのか、って。」

「だから、男も女も恋の女神たる貴女に近づこうと必死だという話だが・・・」

「え? 何ですか、それ。 私はそんなことやったつもりは無いし、女神なんかじゃないです。」

「短期間で6組婚約、そのすべてが例のダンスの相手では、ねぇ?」

「・・・・・・。」

 俺が持ち出した話題に、彼女より先に王妃が食い付く。 やはり、この王妃もこういう話題は好きらしい。 本人はまたもやきょとんとしている。 王は今のところ傍観を決めているようで、王妃にチラリと視線を向けたのみで沈黙。


 自国で受け取った報告。 それは、すべて彼女と特定の人間についてだった。

 それは、あの舞踏会で彼女と踊っていた男たちが彼女以外の女性との婚約を決めた、というもの。 毎回、組み合わせが変わり、それらに彼女が一役ひとやくかっているらしい。 6度目の報告で、あの時に踊っていた男たち全員が出揃っていた。 その結果、彼女を『恋の女神』とみなして相談や取り持ち依頼をしようとする男女が増えているというのだ。

婚約? 彼女以外と? どうなっている? 彼女が仲介? 何故? 彼女は何をしたかったんだ?

分からないことだらけだった。 ただ、報告には彼女自身の婚約も縁談も無かった。 それにホッとしている自分に気付いた時、彼女への想いを認めざるをえなかった。 

それでも、彼女の考えが分からない以上、王妃の探りに言質を与えるようなミスはしないが・・・。


 どうやら、彼女は自信についての噂も評判もホントに知らなかったようだ。

とりあえず、他人への恋人紹介が趣味とかではなさそうなのはホッとした。 

しかし、恋愛相談ではないならば、何故、彼らとだけは踊ったのか。 少し面白くない。 彼らは全員、見た目も育ちも良く将来も有望と言われている顔ぶれなのだ。 普通は、他人にすよりは自分が狙うだろう。 彼女は何を考えている?


「女神でなくて構わない。 ぜひ、これから相談に乗ってほしい。 ・・・でも、話の続きは落ち着いてからのほうが良さそうだな。 日を改めて話そう。 今度は我が皇国に招待する。 隣なんだ、招待受けてくれるよな? 陛下、構いませんよね?」

「うむ。」

 彼女は混乱しているし、ここでこれ以上の話をするのはマズい可能性を感じた。 一息ひといきに話して彼女が反応する時間を与えないようにする。  拒否できないはずだが、逃げ道は潰す。

ただ、せっかく国王や王妃が同席しているのだ。 ついでに許可を取り付ける。 封鎖完了。

聞きたいことも話したいこともまだまだ有る。 さぁ、じっくり話そうか。




 ********** 皇国にて **********


「ようこそ、我が皇国へ。」

「お招きいただき、ありがとうございます。」

「髪飾り、使っていくれてるんだな、似合ってる。」

 自然と笑顔になって相手に歓迎の意を伝える。

後ろで宰相がこっそりと息を飲むのが聞こえる。 後でうるさそうだ。

 相手は隣国の伯爵令嬢。 彼女にハッキリと明かしてはいないが、お曾祖母様の親友の曾孫。

そして、俺が自分の妻にと狙ってる女性。 それは、宰相たちもだが彼女本人にさえ伝えていない。 これから本格的に口説き落とすのだから当たりまえだ。

彼女はかしこい。 自意識過剰かもと自制しつつも警戒してるようだ。

しかし、当然ながら、逃がす気など毛頭無い。 確認すべきことは確認済みで問題無い。 すべての準備も手配済み、後は彼女をとすのみなのだから。



「いきなりだが、これを見せたくて、な。 持ち出し禁止の極秘書籍なので、わざわざ来てもらった。」

 宰相以外を人払いして、彼女に椅子と飲み物をすすめると、1冊の本を見せる。

表紙を見た途端、彼女が息を飲むのが分かった。 俺の後ろからのぞき込んだ宰相は、なんともいえない変な表情かおになっている。


「俺のお曾祖母様の遺品だ。 この本は、俺以外には存在さえ知られていない。 俺は、この『設定集』で貴女たちのことは知っていた。」

 私が出した本、それは、この世界のものではなく、この世界についてのものだった。

お曾祖母様の元々居た世界で作られた本。 『ゲーム』の『設定集』。

表紙には6人の男性の立ち姿とシルエットだけの男女2人の立ち姿。 6人は隣国で見掛けた、彼女が令嬢との仲介をした男たち。 シルエットの女性は、目の前の伯爵令嬢。 シルエットの男性は、俺。


「・・・貴方はこの世界の生まれですよね? あちらには関係無いですよね?」

「俺は、この世界の普通の人間。 あちらから来たのは俺のお曾祖母様。 コレはお曾祖母様がこちらに来た時にたまたま持っていたらしい。 『特別限定盤スペシャルボックスの特典』だとか・・・。」

 シルエットの男と俺を交互に見ながら、彼女は確認するように聞いてくる。

彼女の様子から、この『ゲーム』を知っていること、この『設定集』を知らなかったことが分かる。


「・・・私の曾祖母も他の世界から来ました。 ほぼ確実に、貴女のお曾祖母様と同じ世界から。 その曾祖母から、この『ゲーム』のことも私達のことも聞いてました。 でも、貴方のことは話に出なかったから最初は『ゲーム』の関係者だとは分かりませんでした。 『特別限定盤スペシャルボックス』や『設定集』についても聞いたことは有りません。 曾祖母も知らなかったのでしょう。」

 彼女はそういうと、ゆっくりと呼吸した後、曾祖母や彼ら6人について話し出した。



 ********** お互いの本音 **********


 はるか遠い異国から来たことにして『(お曾祖父様と)2人で周りを論破して結婚した』と笑っていたという、彼女と同じ髪と目をした女性。 『もともと平民だし向こうの言葉が出ることが有る』からと、ぞんざいな話し方になったり聞き慣れない言葉も出てきて、たまに彼女にも影響が出てしまうこと。 

 とても発展していたという娯楽文化の1つである『ゲーム』に、この世界の、それも自分たちにそっくりのものが有って興味を持ち、曾祖母が持っていた『プレー日記』を読みふけっていた時期が有ること。

 あの舞踏会の後で、曾祖母の心配通り『物語と同じ状況に巻き込まれ』そうになってることに気付いて、回避するために慌てて彼らに他の女性を仲介したこと。 でも、俺のことは何も情報が無く途方に暮れたこと。 

 『貴女の人生では貴女が主人公。 ただし、貴女の言動で周りや自分を変えてしまう場合が有るのだから、言動に伴う責任を忘れてはダメ。 でも、人生を楽しむのも忘れちゃダメよ?』 という言葉を忘れずに自分で考えて生きてきたこと。

 それでも、俺については、今でもどうすべきか分からないこと。


 彼女は、記憶を確認しながら、それらを頭の中で整理して話しているようだった。 落ち着いてはいるが、やはり心境の複雑さはどうしようもないらしく表情が揺れる。 その中に、『正直に全部話したら私にあきれて帰してくれるかな』という可愛い計算や『もう解放して?』という懇願こんがんにじんだ瞬間を俺は見逃さなかった。



 ダメだ、逃がさない、俺のものだ、誰にも渡さない、みんなの『女神』なんて許さない。

 お曾祖母様から話を聞き、この『設定集』を託された。 それで彼女のことは知っていたから、隣国のあの舞踏会の招待を受けた。 本人を見てみたくて、話してみたくて、知りたくて・・・。

 思えば、歌を口ずさむ彼女を見た時に、すでに俺はちていたのだろう。 ダンスや態度や話から彼女の人柄や能力を知り、さらに深みにはまっていったのだと思う。 手紙でも想いはつのり、会いたくてたまらなくなるばかりだった。

 『設定集』には彼女の情報も有った。 曾祖母の昔の名前『さくら』と同じ名を持つ花に似た、例の花が好きだと知っていた。 だから、手紙に添えた例の花に、自分でも持て余すほどの俺の想いを託した。 警戒して逃げ出されないように、込めるメッセージはごくごくわずかずつ強くなるように品物を厳選した。



「すまない。 この『設定集』には貴女の好みもっている。 だから、あの花を贈った。 

まだ貴女を帰すわけにはいかない、帰せない。 この本を貴女に預ける。 これと俺自身を見て、俺を知ってほしい。 質問が有れば正直に答えると約束する。 だから、まだ帰らないでほしい。 俺のそばで、俺を見て、俺を知ってほしい。 

俺はもう貴女にちている。 だから貴女を離さない、離せない。 永遠に俺の隣に居てほしい。 これからの全てを分かち合いたい。 しばらくは待つ。 俺を知って受け入れる気になったら、これを受け取ってほしい」

 向かいに座る彼女を真っ直ぐ見つめて一気に言い切る。 

 彼女は、思惑おもわくはどうあれ、正直に話してくれた。

俺も、お曾祖母様に張り倒されないように、そして、なによりも、彼女の心が欲しいのであって政略ででも結婚できればいいなんて半端な想いじゃないから、『設定集』の情報も含めて正直に話した。

 机に置いたケースの中できらめくのは、例の花をモチーフにした指輪。 『さくら』よりやや濃いが、例の花とは同じ色の、髪飾りと揃いの宝石いしで作らせた婚約指輪。 小ぶりだが、産地限定だったうえに今では廃鉱になって入手困難な宝石いしなので婚約指輪として十分な価値が有る。


「しばらくは待つ。 逃がさないから、あきらめて滞在して、俺を知ってくれ。

ちなみに、国王にも貴女の家族にも求婚と長期滞在の許可は貰ってあるから心配はらない。」

 言葉を重ねると、固まって呆然としていた彼女の顔が赤くなった。 その反応に手応てごたえを感じ、安堵あんどと喜びが心に広がる。

 さぁ、始めよう。 自らの望む未来に向けて・・・。



 ********** (&Now) 完 **********

 皇帝は一応ヤンデレではありません。 『すべて話せる唯一の理解者になり得る唯一の女性』でもある伯爵令嬢に、とことん惚れてるだけです。 異常性癖は無いので、ヤンデレではなく執着愛ということで・・・。

 髪飾りや指輪の宝石、なんと実在のモデルが有ります。


 実は、次世代ネタがあって、書こうかどうか悩んでたり・・・(笑)。

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