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実らない作戦会議

 にらみ合いが続いていた。どちらから奇襲するでもない。ただなにもなく、警戒する日々が過ぎていた。

「依然、かわりなく王国は動いていません」

「そうか」

 そろそろ会議を開くべきだろうか。王国も帝国と手を組んでいるため、深夜に量で攻められたらこちらとしても辛いだろう。

「ツキ、エルフの長、ドワーフの長、あとはレイス、ダイゴン、フォラ、ファラ、従者のなかで頭がきれるもの数人を食堂に連れてきてくれ」

「かしこまりました」


「さて、今の状況をまとめようか」

「では、皆さん、こちらにご注目下さい」

 ツキがどこからともなくホワイトボードを出し、簡単な四国と、相関図を書いた。上に帝国、下は王国で、真っ直ぐ縦に線があり、『同盟?』とあり、右に獣国、左に巡達の国があり、獣国と線が引かれて、十字になった。

「現在、獣国との同盟に成功しており、さらには、ある作戦もたてております」

「巡、その作戦ってなんだ?」

「王国にどれだけ積まれても同盟は組むなって話と、スパイをしてくれっていうのをな」

「しっかし、よくここまだ集めたもんだな! 頭でっかちのエルフもひきいれるんだからよ!」

「黙りなさい、頑固親父。暑苦しいのよ」

 エルミアの罵倒にドワーフの長であるグラスは、豪快に笑った。

「仲良くしようぜ、同じ国に住んでるんだからよ」

「誰が貴方達と――」

「私は仲良くしたいと思ってる」

「リエル!?」

 褐色系美女、グローリエルが口をはさんだ。

「ドワーフの作る武器は、正直言うと凄い。私もつくってもらった」

 言って、二本の短く、細い剣を取り出した。

「この双剣はグラスにつくってもらったけど、最高」

 と、グローリエルは自慢気な表情をしてこの場の全員に見せ付けた。エルミアはそんな姿を見て、まるで恋人にふられたかのような絶望的表情をつくった。

「く……この鍛冶親父……。良いでしょう、私が直々に試してあげます。私の納得のいく武器を作れば、特別に仲良くしてあげても良いわよ」

「勝手にやってろ」

 修羅場三人を表に連れ出し、会議を再開した。

「俺達は王国の民を無意味に傷つけられない。王国は無闇にこちらへ攻めこむと、手痛い反撃をくらう」

「前回は挑発目的で、エルフとレイスを送ったの。壁を一部破壊して、怒った王は雷帝とお父様、兵を百人近く出動させたの」

「それを見事に皆殺しだろ」

「そして、あれから数週間経ったが、何事もなし」

 ダイゴンが締めくくった。

「そうだ。帝は王国の最高戦力。それを二人と、兵を百人失ったんだ。慎重にならずにいられない」

「でも、あの王が冷静でいられるか? 俺には到底そんな風には思えない」

 レイスがもっともな疑問を言った。

「そうだな。だが、帝王が助言していたら? 王はあれでも指揮が上手いと聞く。帝王に指図するな、と言っておきながら、頭は冷えたかもしれない」

「あー、言われたらそうかもしれないな」

 レイスは納得したのかわからない間抜け顔で応えた。

「先日、私が王国に行った時は、雷帝と闇帝が死んだ事に、民は大騒ぎでした、それに、こんな噂もありました」

「噂?」

 クレアが思い出したように言う。

「なんでも、戦果に怒り狂った王をしずめたのは、勇者とか……」

「神谷? まぁ、あいつなら真っ先に止めるだろうな」

 しかし、それだけで王が止まるのだろうか、と巡は同じくして疑問を抱いた。王は以前、神谷の事を役立たずと罵っていたのを、巡は覚えている。

「勇者に止められたからといって、あの王が冷静になるだろうか? 私にはなにかあるとしか思えないが……」

 リサも同じ事を考えていたようだ。

「そこは私にもわからずで……お役に立てず、申し訳ありません……」

 深く頭を下げた。

「いや、これだけでも今はありがたい。それに、聞いたところで怪しまれるかも知れないからな。ありがとう」

「……少しでもお役に立てたのなら幸いです」

「今の話を聞いて、これからの案があるなら聞きたい」

 真っ先にフォラが手を挙げた。

「王と勇者と帝を殺す」

 食堂にいくつもの溜め息が連鎖したように聞こえてきた。

「どうやって殺す?」

「不可視だったり、城ごと潰すかだろ」

「あー、そういえば知らなかったな。不可視は勇者と使い魔に見破られるぞ。全盛期の俺の魔法でさえ見破ったからな」

 フォラが「うげっ本当だろ?」と遮ったので、首を振って続けた。「後者は恐らくは、不可能だ。城には強固な結界と、魔法を使えなくする結界がある。ギルドもそうだ。第一、城の住人を殺してしまうのはな。あそこにも兵士以外、罪のない人がいるわけだし」

「んー、俺、やっぱ考えるのは苦手だろ」

 フォラが閉口してから、誰も開口しなくなった。十分が過ぎた。

 やはり予想も交えて話したほうが、案を提示しやすいだろうと巡は考え、重苦しい雰囲気の中、口を開いた。

「これは俺の予想だが、いくつか敵の動きを予想してみた」

 一つは、このままこちらから仕掛けない限り、相手は動かない。完全な受身となる予想。まず、外れるとみて良いだろう。あそこには血気盛んな王と王女、こちらを嫌う神谷とセラフィムがいる。楽しませろとは言ったものの、奴は蹂躙すべく動くだろう。

 二つ目は、奇襲の隙を窺っている。

 三つ目が問題の、帝国の兵士や、最高戦力、王国の最高戦力が合わさり、四方からの奇襲。三つ目が一番現実的であり、厄介である。帝国には行ったことが無いため、戦力は未知数で、更には帝国は所謂、武力国家なのだ。帝王は帝国の頂点。要は、力だけは国の中で最高。数と質の暴力を、如何に攻略するか、なのだ。

 勿論、案にでてない選択肢をとる場合が大いにある。柔軟に対応し、冷静に考え、どう行動するかが大事だ、という話を全員に伝えると、皆一様に頭を抱えた。

「ご主人、三番目が一番可能性としては高いんだろう?」

「そうだが、そればかりに対処をとっても、相手が確実にそれをしてくるとは限らないから、いざって時に混乱してしまう」

 確認として聞いただけなのか、リサもそれっきり口を開く事はなく、実りのない会議となってしまった。やはり、いきなり過ぎたのと、閉鎖空間の息苦しさを感じるような会議では、駄目なのだろうか。


 雲は走る。まるで競争でもしてるかのように。

 太陽は真上にある。この星を照らすように。

 目の前には、赤いスーツらしきものを着用し、赤い髪に、怠そうな目の変わらない校長がいた。

「単身で攻めに来たんですか? 流石に校長でも無理があるかと」

「いや、違うんだよ。そんな面倒な事はしない。私はただ、生徒の様子を見に来ただけだ」

 校長ならあり得る、と巡は思った。しかし、スパイ行為か? とも訝しんだ。校長は生徒を、偽りなく深く愛しているのを巡は知っているのだ。

「校長、貴方とは刃を交えたくありません」

「私もだよ。今回の戦争においては、一切関与しないと奴には伝えてる。どうか警戒しないでくれ」

 後ろで鋭い警戒の糸を張るツキに、ゆるめるよう言い聞かせた。

「ツキ、ツヴァイ、ミツ、レイス、ファラ、アムを客間に」

 返事をしてから、消えた。

「案内します」

 門を閉じさせ、歩き出すと、校長は大人しく追ってきた。

「巡、力を封じられたか」

「ええ。厄介です。ですが、俺には仲間がいる」

「そうだな。少し会わない内に随分大人になった。所で、まだか?」

「俺も若輩ながら、この国の王となりまして。まだです」

「おめでとう。足が疲れた」

「ありがとうございます。もう少しです」

「疲れた」

「あとちょっと」


「私は、君達の力にはなれない。でもそれは向こうも同じだ」

 校長はあくまで中立だと主張する。向こうには百以上の生徒がいて、ここには数人の生徒。さらに、王にはサリー殺害関与の疑いがある。今までの行いからも、校長は仲間にはなりたくないだろう、と再度推測する。

「私は学園長とあまり話したことがねぇ。だから私は警戒させてもらうぜ」

 ツヴァイは、学園の時より一層鋭くなった眼光を飛ばした。

「学園長は信用出来ると思う。俺は今まで表では落ちこぼれ、裏では全帝をやってた。でも、学園長は内緒にすると約束してくれて、入学させてくれた」

「そうね。生徒を凄く大切にする人だと尊敬してるわ。私としては、ピーチ先生も信用してる。逆に、他の先生とSクラスの佐藤先生は苦手なのよね」

「佐藤先生はあれでも良い人なの。ファラも勿論信用するの」

「うんうん。俺もファラと同意見かな」

 ツヴァイ以外は皆肯定的だった。

 校長が、最後に喋った人物、アムをじっと見つめた。珍しい校長のただならぬ気迫に、アムは喉をならし、若干身体を引き気味にする。

「君は誰だ……?」

 目を細めた校長に、皆が椅子から転げそうになった。

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