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サリーの属性

 チャイムが鳴った時だ。魔法書を取り出し、魔法書を速読する巡に、一人、話しかけてきた。 

「皆、話があるの」

 神妙な面持ちで唐突に言い出すサリー。珍しいこともあるもんだ、と思い、返事をすると、ミツ、ツヴァイ、レイスが集まってきた。

「どうしたんだ?」

「いや、サリーがゆっくり話をしたいらしい。俺の家でしよう」

「そういえば、なんだかんだでお前の家がどこにあるかも知らなかったな」

「王国の外だ」

「え」

「王国の外だって」

 レイスと幾つか話をしてから、皆に服を掴むように言って転移した。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 三人のメイドが挨拶してきた。皆仕事を終えて、巡の私室に直立で居たらしい。

「ただいま。座っててもいいぞ」

 学生服を脱ぎ渡し、四人を見ると、唖然としていた。

「なにしてる? あ、ヤミ、飲み物持ってきてくれ。お前らの分もな」

 ヤミの返事に頷いて、レイス達に向けて、座るように促すと、各々適当に座った。レイスは巡の向かいのソファーで、ツヴァイは壁に持たれ、ミツはレイスの右、座る場所はまだあるのだが、サリーは巡の隣に座った。

 何故隣なんだ、と疑問に思うが、口には出さない。わざわざこちらに座ったのに、拒絶したように感じられるからだ。

 一言、飲み物をテーブルに置いた。ツキは背後で立っているらしく、ヤミとリサに座るよう言った。

「さて、落ち着いて話をしようか。サリー、どうしたんだ?」

 吃りながらも、うん、と話出した。

「私、本名はサリー・グランって言うの」

 グラン、というと、ここの王と一緒だ。

「グラン!? じゃあ王族なの?」

 ミツが驚きに顔と声を染める。他の者も驚いている様子だ。

 巡自身も多少なりとも吃驚していた。

「うん。でも、私魔力は少ないし、属性もないの。だから昔からお父さんとお母さん、リリーちゃんから嫌われてて……」

 リリーが顔を合わせては口悪く罵っていたのはこれのせいか、そう思った。

 三人で相槌を打ちつつ、真剣に耳を傾ける。

「それで、なんとか働きながら自分で学園費は払ってるんだけど、バイトじゃ限界があって……って、そうじゃないや! えとね、王族だけど、落ちこぼれで、もしかしたらリリーちゃんのことで迷惑かけちゃうかも……」

「結局なにが言いたいんだ?」

 要領を得ないサリーにもやもやしながら、聞いた。

 暫く黙考して、答えがまとまったように顔をあげる。

「今回の戦いで、私だけが役に立ってなくて、やっぱり私は出来損ないなんだ、って痛感したんだ。だから、私を強くしてください!」

「よし、いいぞ」

 巡は即答した。

「いいの!?」

「ああ。レイスも手伝うだろ?」

「いいぞ。面白そうだしな」

 レイスは全属性の魔法を使える全帝を務めているので、魔法に関しては詳しいだろう。巡も魔法書のおかげで最上級までは暗記した。

 これも能力を幾つか増やしたおかげだ。今では教科書をぺらぺらと捲っただけで覚えるので、授業では必要としなくなっていた。

「つーかよ、お前らは何者なんだよ。レイスは剣技や魔法を巧く使ってSクラスを圧倒するし、大将は魔法を使わないにも関わらず、勇者を、まるでガキを捻るように倒すし」

 壁際のツヴァイが怪訝そうに言った。大将とは、巡のことだ。恐らく、リーダーだからだろう。なぜ大将なのかはさっぱりだが。

「そうだなぁ。サリーも勇気を出したんだ。俺も言うかな」

 ソファーで、足を組む。誰かが息を飲んだのが聞こえた。

「俺はランクX《武神》だ。因みに、魔力がない訳じゃない。魔法を知らなかっただけだ」

 レイス以外が叫び声を挙げた。便乗したらしく、レイスも口を開く。

「ランクX《全帝》。学園では落ちこぼれを装ってる。一応任務でな」

「お前、いってよかったのか?」

「……こいつらなら大丈夫だろ」

 叫び声がやんで、次に口をあんぐりと開いた。

「じゃあ私が会ったことのあるのって」

「多分俺か、違う帝だな。もしくはただの怪しい奴」

 思案顔になったツヴァイを放って、答えはわかっていたが、ミツにも聞いておく。

「ミツも修行、手伝うか?」

「私が強くないのに教えられることなんて無いわよ」

 想定通りの応えが返ってきた。何処か諦めの入った声色だ。

 レイスがなにか喋りたげではあるが、言いはしないようだ。レイスはいつも、仕事柄言うことはすぐに言うのだが。

「ツヴァイもやらないか?」

「悪いが私はパスだ。魔法の使えない私は役に立たないだろうしな。あんたらでやってくれ」

 サリーに目線を向けた。

「じゃあ、俺とレイスとで特訓するか」

 何度も頷くのを確認してから、帰るらしいミツとツヴァイを寮に送っていった。

 残った従者と三人で、特訓を開始する。

 まず、属性を映す水晶を創造して、それに魔力を込めるよう言った。

「巡君はなんでも出来るね!」

 褒めながらも水晶にやると、光が出た。しかし、どこかただの光属性とは違う、なにか神々しさを感じた。

「これはなんだろうか。光属性……ではないな」

 呟くが、返事は来ない。レイスとサリー、ツキだけが驚愕していた。リサもヤミも巡もわからず、首を捻るだけ。

「うそ、私属性出なかったんだよ?」

「ご主人様、サリー様、これは……希少属性の《神聖》でございます」

 名前だけに、納得出来る神々しさだった。優しい、包み込んでくれるような光。

「知ってるのか、ツキ」

「ええ。光属性の最上位で、神に愛された者にしか扱えない属性でございます。治癒に秀でており、こちらの属性の光を浴びると、魔人は灰になると言い伝えられております」

 この目で見ることが出来るとは、そう呟いてから、いつものように無表情で直立した。

 魔人とはよくわからないが、人となにかのハーフみたいなものだろう。

「攻撃も一応出来るが、人には効かないだろうな。グールとかなら神聖属性を付与した魔力風で浄化出来る」

 皆で感心し、何度か頷いた。

 魔力風は、魔力を放出して出る衝撃波のようなものだと、魔法書に書いてあったのを思い出した。因みに、多ければ多いほど周りに影響があるらしい。その人より多ければ冷や汗など、圧倒的に多く放出すれば、気絶するらしい。一説では死ぬこともあるのだと。

 巡はなるほど、と理解して、気づいたことを口にした。

「歌にのせること、出来ないか?」 

 歌にのせれば、戦いながら治癒が出来る。相手がグールなら歌うだけで殲滅出来る。

 しかし言ってから後悔した。というのも、聴こえるのは相手も同じで、それならば両者治癒してしまう。

 それをレイスに指摘されてしまって、少々悔しさを感じた巡は、黙ることにした。

「しかし、俺の知り合いにも神聖属性を持っているのも居ないしな。手探りか、治癒が出来るならいいんだが……」

「あ、私治癒なら出来るよ」

「先に言えよ!」

 黙れず、つっこみをいれてしまった。咳払いし、気を取り直して話に加わる。

「ごめんね。唯一出来る治癒が私の属性だったなんて思ってなかったから……でも、これで私も役に立てるよ」

 はにかんだ。サリーがあまりにも魅力的に見え、巡は心臓が高鳴ったのを自覚する。反射的に視線を反らしてしまった。

 正直なところ、巡は生半可な攻撃で怪我をしないが、サリーの嬉しそうな笑顔を見るとどうでもよくなった。

 そうだな、そう言って頭を撫でると、サリーは一瞬驚いたが、赤面しながらも受けてくれた。

 レイスの咳払い。

 我にかえると、レイスから白い目で見られていた。顔に熱を帯びたのを感じ、視線をサリーに向けると、顔を赤くして俯いていた。

「まあ、これで一件落着というわけだ。よかったな、サリー」

「うん、ありがと!」

「誤魔化せてないぞ」

 気恥ずかしさが勝ち、つっこむレイスを無視し、サリーとレイスを寮に転移させた。これも魔法書にあった、自分の魔力を使って、他人を転移させるものだ。実力が上でなければ、転移させることは出来ない。

 魔法書をボックスから取り出す。分厚い、それこそ、六法全書のように厚く、三分の二は見終わっているこの本だが、能力のおかげで、短い間にここまで読めたのだ。

 創造には世話になりっぱなしだと、改めて思わされる。食べ物、能力、その他諸々をデメリット無しで使えるのは大きい。その内、魔法も創造して出来るのでは、と考えている。

「ご主人、時間は午後五時半だ。どうする?」

 床から立ち上がったリサに聞かれ、考え出す。

 まだ夕食には早い。それに、依頼を受けなくても金には余裕があるし、食材も古代竜が残ってる。思い付くことと言えば、魔法を覚えること位しかなかった。

 それを伝えると、ヤミとリサは、「掃除してくる」と部屋から出ていった。

 見た目城にも見えるこの巨大な家のどこを掃除するというのだろうか。客室は数十、大浴場に食堂と時間の止まった倉庫等などを掃除するなら、一日掃除しても時間は足らないだろう。少し位なら放っておいてもいいというのに、仕事熱心な従者達だ。

「ツキ、お前は行かないでいいのか?」

「お側に居たく思います。もちろん、命令とあればすぐにでも」

「いや、いい。ここに居てくれ」

 返事を聞いてから、ソファーからベッドに寝転ぶ。大きく、低反発なベッドは、巡の体を沈ませ、微睡みを与える。

 急に襲った眠気を振り払い、魔法書を読み込んだ。

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