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忌児  作者: 真崎麻佐
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第八十八話:電話

 環和は千歳からの電話を切った後、ハァと溜め息をついた。妹のように可愛がっている千歳の、この心苦しい決断に、言い様のない哀しみがあるのだ。本当に兄妹そっくりで嫌になる。もう少し周りを頼ってもいいものなのに。

「……どうせ辰爾君にも言ってないんだろうな」


 千歳から涙声で電話が掛かって来た時、何処か諦めに近いものを感じていた。ああ、とうとう我慢出来なくなってしまったのか、と。椿との話を聞いた時、それはますます強まった。

「千歳ちゃんはそれでいいの?」

環和は言った後に、酷な質問をしてしまったと後悔した。受話器の向こうから、弱々しい声が聞こえた。

「うん、そうしなきゃいけないんだもん」

「義務じゃないの。千歳ちゃんの気持ち次第なのよ?」

「……」

環和はつい厳しいことを言ってしまう。千歳が無理無理に納得するための都合のいい言い訳だと知っているのに。

「ごめんね。でも千歳ちゃんがまだ椿ちゃんと一緒に居たいと思うなら、そうするのが一番じゃないかと思うの」

「……椿は瑶子さんと両思いなの」

「失恋した、ってことなのね」

瑶子が誰なのかは知らなかったが、千歳の声からそれが椿の片思いの相手だと、何となく分かった。

「椿ちゃん、逆にその人と付き合えない気がするわ」

「どうして?」

「だって椿ちゃん、優しいもの。千歳ちゃんに気を使っちゃう」

「……そう、だね」

千歳の声に一気に迷いが生まれたのに気が付いた。彼女の計画では、自分だけ傷付くことで万事解決だった。環和はその考え方が大嫌いだ。自分勝手過ぎる。

「もう少し、よく考えたら?千歳ちゃんにも時間は沢山あるの」

「そうかなぁ」

「誰が忌児は短命だと決め付けたの?辰爾君が千歳ちゃんを易々と見捨てると思う?」

「……思わない」

「じゃあ、何も気にしないでドカンとぶつかって行けばいいのよ!ね?」

「分かっ、た」

そうして二人の電話は切れた。環和は上手く彼女を励ませたのかどうかは、分からない。


 辰爾が鶯家と接触を取る、と言った時、環和は彼に会いに行った。そこでも同じように言ったのだ。

『辰爾君、自分だけ傷付けばいいなんて思わないで。貴方はそれでいいかもしれないけど、貴方の大切な人達がどう思うかなんて、知らないでしょう?』

環和の言葉が辰爾にどれ程影響したかは分からないが、彼女には確かな手応えはあった。実際に鶯家でも無理をすることは無かったという。千歳もこれ以上自分を犠牲にしないといい、と環和は切実に願っていた。


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