表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌児  作者: 真崎麻佐
8/129

第八話:後悔

 部屋の中の静寂を破ったのは薬史だった。薬史は普段の彼らしくなく、目を大きく見開いている。

「……どういうことだい?」

「……何が?」

千歳の顔を汗が伝う。しかし彼女は辛うじて笑っていた。

「刃はどこにいった?」

千歳の持つ花鳥は、今は柄だけの姿になっていた。ところが、薬史の刀をしっかりと受け止めている。

「刃なら……ここにあるわっ!!」

―ザンッ

沈黙が流れる。辰爾は背を向けて、静かに外を見た。



 私はまたやってしまったのだ。また意味も無く、人を傷付けた。母ならきっと、大変意味がある、これは私の使命なのだと言うだろう。だから私は意味がない、と思いたい。

「千歳」

兄の声が、優しく響く。私はためらいながらも兄を見た。兄は少し困った顔をしている。

「……兄さん、大丈夫?」

「大丈夫だ。私は千歳にまた無理をさせてしまった」

「……ううん、無理をしたは椿達よ。早く手当てをしないと」

うん、と兄はフワリと笑う。私はそんな兄がいつも不思議だった。

「青柳の彼は?」

兄は倒れている薬史に目を向けた。私も同じようにする。

「うん、大丈夫。これ位じゃ、死なないわ」

薬史は花鳥の攻撃を受けて、多量の血を流して倒れていた。部屋の畳に真っ赤な染みが広がる。

「彼にも手当てを」

「……その必要はないみたい」

私はクイッと外を指差す。兄はその先を見た。そこには青柳の残党がいた。

「兄さん、やっぱり甘いよ」

「千歳もね」

「……」

そして、兄だけ部屋に残った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ