表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌児  作者: 真崎麻佐
63/129

第六十三話:書庫

 満湖は一人、薄暗い書庫で日焼けした冊子を読んでいた。周りに人の気配はない。ただ静寂があるだけだ。

――カタン

「ッ!」

満湖は音のした方をギロリと睨んだ。そして普段の彼女からは想像出来ないような、低い声で尋ねる。

「誰だ」

「それはこちらの台詞ではないかしら、花水木の狗さん?」

目を細めながら、相手をジッと見る。手には武器が握られている。灯だ。それもその筈、満湖が侵入したのは鶯家の書庫なのである。

「何かお役に立つ情報はあったかしら」

「……」

「花水木が何を知りたいのかは分かっているわ」

「……」

満湖は一言も答えない。ただ灯を睨んでいるだけだ。古堤である彼女の、守るべき掟である。情報は決して与えないのだ。灯本人も大して気にしていないようだ。

「余計なことはしない方が花水木家の為よ。三家には知らなくていいことが多すぎる」

「知らなくていいことかどうかは主が判断すること」

「本当に古堤は忠実な狗だこと!」

灯は溜め息交じりに呟く。満湖は顔色一つ変えなかった。書庫の中に一筋の陽の光が差し込む。灯の姿がハッキリと現われた。

「……春日井さまの教育係」

衣砂の姿を見て、満湖はポツリと言った。衣砂は不敵な笑みを見せる。

「意外かしら? 春日井雅に注意しておくべきね。青柳だけじゃない、鶯だって雅を狙っているんだから」

「どういう意味……」

「そのまんま、よ。忌児の大切なお友達なんだから、気を付けないとね」

衣砂はクスリと笑う。

そして静かに書庫を出て行った。残された満湖は冊子を閉じ、大した情報を得られないまま書庫を後にした。しかし書庫には衣砂、満湖のニ人は気付くことが無かったもう一人の人間がいた。青柳草人はひっそりと彼女達の話を聞いていたのだ。草人はハァと溜め息をつき、暫くして不敵な笑みを浮かべながら、その場を去って行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ