第三十九話:生徒会
今日は日曜日。しかし椿は学校に居た。そろそろ学祭の準備を始めなければならない時期なのだ。そのための生徒会の集まりがあった。
「神林ってさ、花水木さんと付き合ってんの?」
突拍子もない質問をしたのは、生徒会議長の逢坂勝也だ。椿と勝也は同じクラスなため、生徒会の中でも特に仲が良かった。
「はぁ!? そんな訳ないだろ。千歳とは幼馴染みだよ」
「そんなこと言っちゃってさー! ホントの所はどうなのよ?」
「だから、ただの幼馴染みだって!」
勝也はつまらなさそうな顔をした。椿はハァと安堵の溜め息をつく。付き合ってるどころか、許婚だなんてバレたらただじゃ済まない。自分の為にも、瑶子先輩に知られる訳にはいかないのだ。
「でもよく考えりゃ、お前はよう……ッ」
“瑶子”という名が完全に出る前に、それを制止する。周りには二人の他に多くの生徒達がいる。椿は勝也を思いっ切り小突いた。
「痛いなァ、ったく、分かってるって……」
小突かれた部分を擦りながら、勝也は不機嫌に言う。椿はやれやれといったように、頭を掻いた。
「というか、何でいきなりそんなこと聞くんだよ」
「二人でいる所を見掛けたからさぁ」
「そんなの、普通に友達同士でもすることだろ?」
なんだ、というように見る椿に対して、勝也はうーんと頭を悩ませていた。
「そうなんだけど、何か、違う雰囲気だったんだよ。友達同士でも無い、よく考えれば恋人同士でも無いな。でも強い繋がりのあるような、そんな」
「……へェ」
「俺、何か気持ち悪いな」
勝也はうげ、と舌を出した。椿は何も反応せずに、友人の観察力に感心していた。
「二人共、楽しそうね!」
椿と勝也の間から可愛らしい声がする。それは瑶子のものだった。椿がビクリとなるの見て、勝也は楽しそうにニヤニヤとした。
「そんななかをお邪魔するのはとっても心苦しいんだけど、もうすぐ会議を始めようと思うの。いいかしら?」
瑶子は少し意地悪く笑ってみせる。
「はい」
「はーい」
椿は少し焦りながら、勝也は右手を挙げて返事をした。瑶子が去って、椿が立ち上がると勝也は小さな声で言った。
「瑶子先輩には、お前、恋してるって感じがするよ」
そう言ってから、勝也はクスクス笑いながら椿の先を行った。椿は自分の顔が恥ずかしさから熱くなるのを感じた。
椿の親友(?)逢坂君の登場でした。彼はちょこちょこと絡ませていく予定です。次話は羅水と千歳の出会いの話です!