餌を与える人
猫が金魚を見つめる。
ツンツンと金魚鉢をつつく。
金魚が慌てている。
また猫は様子を伺う。
ゆらゆらと揺れる尾ひれに目が釘付け。
いつの間にか再び金魚はゆっくり泳ぐ。
猫は金魚に手を出しません。
飼い主が大切に飼っているから。
そう、飼い主はまめな人です。
飼い主は金魚に気を配っています。
大切に思っています。
猫は飼い主の心配りのために我慢できます。
その心に従うからです。
なぜ飼い主は金魚を飼うのでしょう?
なぜ水を綺麗にし、餌を買い、
金魚を死なないように養うのでしょう?
彼はきっと別の方法でも彼の欲求を満たせるのです。
人は常に誰かに養われたいと願い、
それが叶わないと死に急ぎたくなってしまう、
逞しいようでいてとても儚い生き物だ。
餌を与えられる人がいたら、きっと、
その人がおおらかで心の荒んでいない証拠だろう。