第94話 北海道の花見って
長編は書けず。
リハビリです……。
半年ぶりでしかも時期外れってどうなのと。
<94話>
やあ、オレの名前はANDREW!!
最近、ジンギスカンバケツが普及してきて嬉しいほう、アンドリューです!!
あれと固形燃料と鍋でいつでもどこでもお手軽開催。
すげえ発明だと思わないか?
このノリも、やけに久しぶりな気がするけど、そこは華麗にスルーしてくれよな!
「うむ。ひとまずお約束は達成したからよしとしてもらおうじゃないか」
「メタ発言して満足げに頷いてるんじゃないわよ」
「へいへい」
ソラは相変わらず容赦がないぜ。
現在北海道十勝は五月初旬。
いわゆる桜の季節。
つまりは花見の季節だ。
「ということは、ジンギスカンの季節ってことだな」
この結論について異論を差し挟む十勝人はいないはずだ。
え、オレがいうなって?
ごもっとも。
だが、オレも猫状態でならば生粋の十勝っ子のはずだ。
「北海道人は強風と雪と低温じゃなかったら年中ジンギスカンの季節でしょうに」
「そうだった!!」
「それは偏見というもの。なぜなら室内でもジンギスカンは美味。つまり……」
「年中だということじゃな! そしてビールも!」
ノンノの言うことには完全に同意するがな。
室内でジンギスカンとかどんなテロだっつー話だよ。
「相変わらずバカばっかり。まあいいわ。始めちゃいましょう」
「バカの一味のくせに何を……」
「トラ、何か言った?」
「いや?」
沈黙は金って言うからな!
さて、ここはとある山奥だ。
そう簡単には人も登ってこないだろう、オレ的桜の名所なんだぜ。
ここを発見してから、実は個人的にちょっとずつ手を加えて整備しておいたのだ。
GJ、オレ。
ジンギスカン鍋を二つセット。
固形燃料に火を付けると、あっという間に準備完了だ。
「今日は、大通りの南、老舗のか◯の精肉店の肉だ」
「いいわね。私も好きよ」
普通のも美味いんだが、塩ジンギスカンが絶品なんだぜ。
ソラが刻んできた野菜を取り出す。
もやしと玉ねぎがあれば十分。
あとはうどん。
フチでうどん食い始めたやつは真実天才だと思う。
オレが表彰してやりたい。
「たまらんわー。ビール、ビールくれい」
「私も最初はビールを所望」
「へいへい」
収納空間からタライを取り出すと、ソラの精霊が冷水を張る。
そこに氷魔法で氷を大量に浮かべ、缶ビールをどぼどぼと放り込む。
プシッといい音をさせながらプルタブを起こすと、ノンノが500缶を一息で空ける。
「っかー! ワシ、このために生きてる!」
実に親父くさい。
「ノンノは本気でそうかもしれんからな。余計美味そうに見えるな」
「同感ね」
「かんぱーい!!」
丸い兜のようなジンギスカン鍋に牛脂で油を引いて、肉を乗せる。
ジュワアっという音とかすかに立ち上る白煙。
肉とタレの焦げる、いっそ暴力的なまでの美味の匂いが食欲を刺激する。
「うまー!」
焼けた肉を口に放り込み、ビールをぐいっと。
嗚呼、北海道人的幸せ。
「この塩ジンもいいわね。いくらでも食べられそう」
「だろ。ハマるんだよ、そいつの美味さは」
「そろそろ日本酒」
いつの間にか500缶を4本も開けていたシルヴィアが、日本酒を開栓。
「静岡の地酒。実は焼肉に合う」
ドヤ顔のシルヴィアに敬意を表して飲む。
「旨い!」
「いいわね、これ」
「ふふふ。日夜情報収集を欠かさない」
「その熱意には脱帽するわ、シルヴィアちゃん……」
焼いては食い、食っては飲み、春を満喫する。
え、桜関係ないだろって?
そんな野暮はいいっこなしだぜ?
肉も野菜もどんどん消費されていく。
そのとき、突然茂みがガサリと音を立てて揺れる。
姿を現したのは、北海道最強の野生動物、ヒグマ。
『親分。ご苦労さんです』
そう言って頭を下げるヒグマ。
何を隠そう顔見知りだ。
え、しってた?
ですよねー。
「よう、お前も食ってけよ?」
『ありがたいお言葉。手土産を持参しました』
「手土産って、え、まさか?」
ソラが若干引いてる。
うん、きっと予想通り。
茂みからクマが引き摺り出したのは、エゾシカの死体だった。
「ジビエきたこれ」
「まさに狩猟の獲物よね……」
「おお、追加の肉じゃな。良い貢物じゃな!」
「肉に罪はない」
いいんだけどよ。
仕方ねえ、さばくか。
「ってか、ジンギスカン鍋でいいのか、これ?」
「BBQコンロと網も出す?」
「うーん、肉質的にジンギスカン鍋で焼いた方が美味そうな気もするんだよなー」
「両方やる。悩む必要を認めない」
「シルヴィアの言や良し!」
一度は言ってみたいフレーズだよな、これ。
と言うわけで、BBQコンロも設置。
炭をおこす代わりに、火加減の調節が簡単な火の精霊さんにお越し頂きました。
弱火から強火まで自由自在です。
「そんなことに火の精霊さん使うのあんたくらいよ」
「オレはいいんだよ」
大魔術師だからな!
おい、火の精霊。微妙な表情まで表現するのやめろよな。
魔法で大雑把に切り分けた肉を、魔法で殺菌洗浄して、熟成まで済ませる。
それをソラが最後の仕上げに、適度な大きさに切り分けてくれる。
「鹿肉ステーキもいいな」
「いいわね」
魔法で処理しているので、寄生虫とか食中毒の心配が全くないのがいいところだ。
レアでも食えるんだぜ。
ジンギスカン鍋で焼くとジューシーな感じ。
網だとちょっと水分がとんでパサつくか?
「これは鉄板案件ね」
ソラの言う通り、ステーキ用の鉄板をコンロに乗せる。
ソラは、丸ごとの塊肉を焼いて、中心部だけ取り出して薄切りにして出してきた。
見た目は上質なローストビーフのようだ。
「……ワインはどこだ?」
「日本酒も合うわよ?」
「ついでにわさび醤油も頼むぜ」
「せっかくだから山わさびでどう?」
実に美味かった。
山わさび万歳。
「ちゃんと食ってるか?」
『勿論でござる。かたじけない』
コン蔵師匠のせいか、サムラーイみたいな喋り方をする奴が多いな、このへん。
どうでもいいことだけど。
『かえってご馳走になってしまい……。ありがとうございやす、親分』
「いいってことよ。この辺の山が平和なのもお前らのおかげだからな。これからも頼むぜ」
『お任せくだされ』
丁寧に頭を下げながら立ち去っていくクマ。
「礼儀正しいクマってのもなんだかなーって思ったり思わなかったり……」
「今更だろ?」
「今更よね」
「と言うわけで、さらに飲もうではないか!」
「賛成票を投じる用意がある」
「知ってるよ。つーか、誰も反対票入れねえっての」
肉もまだあるし。
酒もまだあるし。
天気はいいし。
今日は、いいジンギスカン日和だぜ。
お読み頂きありがとうございます。
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