第86話 運がいいのか悪いのか 中編
短いです。
<第86話>
やあ、オレの名前はANDREW!
ギャンブルするなら麻雀大好きアンドリューです!
金がかかってなくても面白いってのは偉大だな。
カードもそうかも。
知的遊戯としての側面はやっぱり大事だとオレは思うぜ?
「なるほど」
現金でもらおうなんてヤツは珍しいんだろうな。
オレたちが大勝ちしたことなんて、ホールにいた奴らなら分かってるか。
強盗に襲われないようにって配慮なんかなあ。
しかし、こんな大金どうすっかな。
金を預けておけるシステムはあるみたいだ。だが、またここに来て遊ぶかどうかはまるで別問題なわけで。
ま、ここはオレの魔法で誤魔化すとするか。
犯罪だって?
そこはキミとオレとの秘密だ!
「お客様、実は内密のお話が……」
「ん?」
黒服のお偉いさんの話によると、一晩で一定額以上稼いだ客をVIPルームに案内してさらにレートの高い勝負をさせてくれるんだそうだ。
マンション麻雀みたいだなw
そんなことして大丈夫なのかね。
「そいつは面白そうだな。ぜひ案内してもらおうかな」
「畏まりました。お連れ様もご一緒にどうぞ」
ソラも「トラが行くんなら」とのほほんとついてくることにしたようだ。
危機感ねえなあ。
まあ、オレがいるしな。
オレたちは黒服と共に秘密のエレベーターに乗せられた。
何やら黒服がボタンをいじっている。
あれか。
決まった順番でボタンを押すと秘密の階に止まるとかそういうヤツか?
加速度的には上に向かって進んだようだが、階数表示が分からなくなっている。
秘密の階ってやつだな、やっぱ。
オラ、わくわくしてきたぞ!?
ほら、隠しフロアとかってロマンだろ!?
『ねえ、トラ』
『どした?』
『大丈夫なんでしょうね?』
『任せとけ。オレがいるんだからよ』
『うん……。それもそうね。精霊さんもいるしね!』
その通りだぞ、ソラ。
何かあったらソラだけを優先して護るように言ってあるから大丈夫だ!
「こちらでございます」
黒服が案内だけして去っていく。
この先は別な人員がいるそうな。
黒塗りの重々しいドアを開けると、そこは薄暗い小部屋だ。
ここでボディチェックしたりするらしい。
当然オレたちはパス。
武器なんて必要ないし。
「ようこそ、VIPフロアへ。極上のスリルと興奮をお楽しみ下さい」
フロアに足を踏み入れたオレたちを、黒服が一礼して迎え入れた。
そこは煌びやかな照明が輝く豪華な部屋だった。
少なすぎもしないが多くもない、そんな微妙な人数の男女が思い思いにギャンブルを楽しんでいるようだ。
「とりあえず見だな」
適当にフロアをぶらつくオレ。
ついでにバニーちゃんの持っているトレイから酒をもらって飲む。
怪しい薬は入っていないようだ。
ベットの最低額はチップ1枚1万ドル。ざっくり計算して100万だ。
今のオレたちの所持金だと200回負けたらゲームオーバーか。
もちろん最低額でベットする必要はないから、勝ちたい時に勝てばいい。
「ど、どうするの、トラ?」
「最初は適当に遊べばいいさ。1万ドルの最低ベットで少し遊んでみようぜ。10万ドルまでは負けてきていいぞ?」
「簡単に言うけど、10万ドルって1000万円以上よ!?」
「気にすんな。どうせあぶく銭だ。もともと無かった金だ。ゼロになっても別に困りゃしないんだぜ?」
そう、その基本的なところを見失っちゃいけない。
熱くなって借金してまで賭ける必要なんて無いんだからよ。
全額すったって、元通りになるだけだ。
「それもそうかあ……」
「だろ。気楽に遊んで来いよ」
ソラはどうやらブラックジャックのテーブルに行ったようだな。
まあ、イカサマされなけりゃソラの幸運値ならそれなりに勝ち負けするだろ。
「じゃ、オレはどうするかねえ……」
あまり観客のいないところが良さそうだ。
少し奥まったところにあるポーカーのテーブルへ座る。
「遊ばせてもらうよ」
「ようこそ。テキサス・ホールデムですが?」
「もちろんオーケーだよ」
世界の主流だな。
細かいルールについては知りたい人はググってみてくれよな。
今回は6人でスタートだ。
オレのポジションは5番で、ディーラーの右隣。
そして、初手の2枚はスペードの9とQ。
大物が見えるいい手札だな。当然コール。
プリフロップで見えたコミュニティカードはスペードの8とハートのK、そしてダイヤのJ。
うん、この時点で多分オレの勝ちだな、こりゃ。
流れがそう言ってるわ。
すでに3人がフォールドしている。
ターンの時点で見えたのはスペードのJ。
BBが強気のレイズ。
見えてる手札から考えると、フラッシュかフルハウスか。
もちろんオレはコール。
ディーラーもフォールドしたので一騎打ちだ。
「強気だな」
「アンタもな」
ニヤリと金髪男が笑う。
リバーでオープンしたのはスペードの10。
そうなると信じてたよ、オレの運。
「レイズだ」
「じゃあ、さらにレイズで」
「コール」
金髪男のレイズに倍プッシュ。
間髪入れずにコールしてきた。
フォールドしないのか。
「フルハウス」
金髪男の役は予想通りフルハウスだ。
それもJとKの。
普通は勝つ手役だよなあ。
「悪いね、ストレートフラッシュだ」
ざわめきが起こる。
ロイヤルストレートフラッシュを除くとポーカーで最強の役だからな。
しかもそれが第一ゲームで出たわけだから。
「強気なわけだ」
「はは。たまたまだよ。ツイてただけさ」
この1ゲームでいきなりチップ70枚以上がオレの手元に。
いやいや、びっくりだわ。
「いいね。今夜は楽しめそうだ」
「お手柔らかに頼むぜ?」
そのままゲームは続いていく。
6人なので、全員がディーラー、SB、BBを経験するまで続行する。
ちなみに最終的にトップを獲ったのはオレ。
ブラフをかけられようが、強い手役で真っ向勝負のオレには関係ないからな。
「やるなあ、アンタ……」
例の金髪男がため息をつく。
「悪いね。どうやら最後までツイてたようだ」
「みたいだな」
たまに負けておくのも礼儀かと思ったんだが、せっかくこんな舞台に招待してもらったからひたすら勝ち続けることにしたんだよな。
この6ゲームであっという間にチップの数が400枚を超えた。
400万ドルだ。
文字通り億万長者だわ。
「さて、連れはどうなったか見てくるよ」
テーブルを後にしてソラの様子を見に行く。
「ヒット!」
はあ!?
17からヒットとかアホか、ソラ。
と思ったら、配られるカードを透かしてみたら4だった。
まさに豪運。
結局ディーラーがバーストしてソラの勝ちだ。
「勝ってるか?」
「うーん、ちょい勝ちってとこかしらね」
「十分だろ。オレも遊ばせてもらうかな」
ここでも大きく勝てばいいか。
きっと何かが起きる。
そんな予感がすんだよ。
お読みいただきありがとうございます。




