第83話 ファンタジーin釧路 第三夜
この話に出てくる輝夜ちゃんは、拙作に出てくる輝夜ちゃんとは何の関係も有りません。名前だけです。
<第83話>
やあ、オレの名前はANDREW!
キャラメルマキアートよりもカフェモカが好きなほう、アンドリューです!
ストレートで飲むコーヒーとはまた別な楽しみ方があるよな。
そこがコーヒーの自由ないいところだよ。
飲みたいように飲みたいものを飲む。
それでいいんだぜ。
「さて、行こうか」
コーヒーを飲み干すと、真姫がさっと立ち上がる。
「もういいのか?」
「構わん。時間は有限だ」
車のキーケースを指でくるくると回しながら小銭を置いてドアへ向かう。
いちいちかっこいい。
ノンノは見習うべきだな。
「何か失礼なことを考えやせんかったか?」
「勘は鋭いんだな。頭はともかく」
「誰が阿呆じゃ!?」
「そこまでは言ってねえ!?」
ホント面白いヤツ。
店を出ると、駐車場に止まっていたのは真っ青なブルーのインプレッサ。
もちろんSTIのエンブレム付きだ。
「おお、格好いいのう」
「全開で下りを攻めるのが最高だぞ?」
「アレか、頭文字がなんちゃらってヤツか」
「そうそうひけは取らんと思うぞ。某汎用TRPGシステム的に言うと、運転技能は20を越えているからな」
クリティカルが3D6で6以下か。
なかなかやるな。
専門技能でドリフトとか必要そうだけどな、あれやるの。
助手席にノンノが乗ると、端から見たら美女二人組だ。
オレはとりあえず後部座席で丸くなる。
「さて、西港に行けばいいんだったな」
「ああ、よろしく頼む」
グオンとエンジンが唸りをあげる。
愛国を抜け、鳥取方面へ。
「アンタたちの組織で解決できないのか?」
「なんせデータが少ない。ウチにもこういった事件専門の妖怪がいるが、なかなかな。被害者に話を聞いてみても要領を得ん。精神感応系の妖術を使ってみても、水のイメージだけだ」
洗い清められるんだったか。
水行か?
「ま、現場に行けば何か分かるだろうよ」
「ずいぶんと自信があるんだな」
「まあな。オレは大魔術師だぜ」
「魔術を使うのか? それとも魔術という名前の力なのか?」
「うーん、この世界だと魔術という名の力の方が分かりやすいかな」
この世界の魔術というのはいわゆる儀式魔術だからな。
どちらかというと儀式によって力ある存在を召喚し、術者の代わりに力を行使させる例が多く伝わっている。
もちろんそうではない例もあるが、大体がそうだ。
オレのように魔力をそのまま自分の力にして魔法を行使するヤツはレアだ。
「この世界でいうところの魔術師とはイメージが違うな。ゲームの魔法使いが一番近い」
「なるほど。それは便利そうだな」
Half asleepは結構規模の大きな組織らしい。道東では一番だそうだ。
他にも色んなタイプの人外が揃っているので、いつか会う機会もあるだろうとのこと。まあ、人脈は作っておくに越したことはないか。
人じゃねえけどな!
「着いたぞ」
車から降りると、港特有の海のにおい。
そんなに好きなにおいじゃねえ。
海のにおいはともかく、こういう人工的な海はなあ。油臭いし。
「さて、被害者が発見されたあたりに案内してくれよ」
「分かった。こっちだ」
迷いのない足取りで歩き始める真姫。
「この間も来たからな」
「調査にか?」
「そうだ。ウチの探偵と一緒にな」
「探偵か。それはちょっと格好いいな!」
「格好良くはない。可愛いがな」
「美少女探偵か! ラノベみたいだな!」
最近は本格ミステリでもありっぽいけどな。
しかし探偵か。
一般的な探偵じゃなく、事件解決に関われるような探偵は現実にはほぼいない。
日本の警察組織はとても優秀だからだ。
「いわゆる名探偵のイメージでいいのか?」
「そうだな。それで間違いない。小説に出てくるフェアプレーを重んじる、いわゆる『名探偵』だよ」
ますます格好いいぜ。
そんな会話を交わしながらしばらく歩く。
「着いたぞ。ここが一人目の被害者の発見された場所だ」
何の変哲もない港の中だ。
コンクリートにペンキで印がつけられている。
「あいよー。じゃ、ちゃちゃっとやっちゃいますかねー」
オレは魔法を使う。
何もない虚空から、突然素っ裸の男が錐揉みしながら吐き出される。
ごうんごうんという何か機械が動くような低い音。
「なんだ、こりゃ……」
汚らわしいものを見てしまった。
せめて女だったらなあ。
「何をしていたのじゃ、トラさんよ」
「ああ、ちょっと過去に遡って様子を見ていたんだ。過去視ってやつだな」
「ふうむ、さすが大魔術師じゃなあ」
感心したような顔をするノンノ。
オレなんだぜ、当然だろ?
「過去視だと?」
「そうだよ。どうかしたか」
驚いた顔をする真姫にこっちが驚くわ。
そんな不思議なことじゃないだろうに。
「どれほど遡って視ることができる?」
「うーん、そうだなあ。魔力の続く限りかな。過去はすでに確定された事項だからな。未来を視るよりは遙かに簡単さ」
とはいえ、時間に関わる魔法はあまり使わないようにしてるんだけどな。
色々と差し障りがやめてくれと言われてるんだよ。
誰からとは言えねえけどな!
「凄まじい力だな。輝夜がきいたら大いに悔しがるに違いない」
「誰だそれは。あ、さっき出てきた美少女探偵か?」
「そうだ。いずれ会うだろう」
「ふーん……」
さっき視たイメージ映像をノンノと真姫にも伝える。
三人寄らば何とやらだ。
「虚空から吐き出されたということは、何らかの異空間を作り出す妖術で被害者を運んできたと言うことになるんじゃねえか」
「待て待て。人を喰らうタイプの人外で、自分を透明にする力を持っておるかもしれんぞ?」
「それなら喰われた被害者は外からでも見えるのではないか?」
「一理あるのう。しかし、どちらにしても被害者は謎の人外によってここまで直接運ばれてきたんじゃな」
「そのごうんごうんという音は何だ?」
「何かの動力で動いているのかの?」
ブレインストーミングってヤツだな。
何らかの動力で動く。
ごうんごうん。
水のイメージ。
洗い清められる。
「あ」
「どうしたのじゃ、トラさんや」
「分かったわ。犯人の正体」
ひらめいたよ。
つーか、そんなふざけた話なのか。
「一体何だ。参考までに教えてくれ」
「犯人は……」
ノンノと真姫がこっちを見ている。
「洗濯機だ」
「洗濯機!?」
「洗濯機じゃと!?」
二人の台詞が重なる。
「おうよ。問題は何処にその洗濯機が潜んでいるかってことなんだがな」
わざわざここまで来て被害者を吐き出してるんだ。
西港に関係あるはずなんだが……。
大規模な感知魔法でも使ってみるか?
「次の満月まであと二日。その間に対策を練ればいいか」
「あ? 満月、そんなに近いんか」
それなら話は早い。
新たな被害者が出る前に何とかしようなんて考えなけりゃ、満月の夜に西港周辺に網を張ればいいだけの話だ。
「そうだ。よし、とりあえず一度戻ろう」
「そうだな。とりあえず昼飯食いに行こうぜ。スパカツってヤツをよ」
「スパカツ? ならば泉屋だな。末広の本店に行こう」
「おうさ。そっちもよろしく頼むぜ」
夕べはザンギとビールを堪能したからな。
揚げ物続きだが、そんなの関係ねぇ。
堪能させてもらうぜ。
「これがスパカツか」
「盛りが多いのう!」
オレたちの前には、ジュウジュウと音を立てるスパカツが。
ステーキがのってくるような楕円形の鉄板にスパゲティとカツレツ。
その上からミートソースがかけられていて、香ばしい香りが漂う。
美味そうだ。
「あちち」
ミートソースのかかったカツが熱い。
だが美味い。
「美味じゃな!」
「そうだな!」
美女二人とイケメン一人がスパカツをもりもり食べる。
もちろんイケメンは人間変身したオレだ。
周囲の客が奇異の視線をオレたちに向けてくる。
失礼な奴らだ。
「美味いか?」
「ああ、美味いね」
「美味いのじゃ」
「それは良かった」
食後のコーヒーまでをしっかり楽しんで、オレたちはHalf aslepに帰還したのだった。
さて、夜は何を食うかなあ?
お読みいただきありがとうございます。
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