第78話 世界初(ただしウィザリィ)
先日は別な作品の続きを誤ってアップしてしまい申し訳ありませんでした。こちらのシリーズを読んで頂いている皆様にはご迷惑をおかけしたかと思いますm(._.)m
なんとか今年中に次話を投稿できました。
こっちの作品は、書いていると酒が飲みたくなります。
困ったもんですw
<第78話>
やあ、オレの名前はANDREW!
メモは付箋紙、スケジュールはデジタルなほう、アンドリューです!
しかしポス○イットってのは偉大すぎる。
また、はがせるってのがにくいよ。
色んな形や柄や似たようなのが出回ってるけど、やっぱ本家だよな。
それも強粘着が一番好きだ。
ついでに言うと罫線とかブロック付きが便利だとオレは思うぜ。
さて、時は秋。
スポーツの秋、読書の秋、そして天高く馬肥ゆる秋。
「収穫の時期だな」
「そうね」
この時期は十勝中が大忙しだ。
なんせ農家ばかり。
植えてる作物や業態によって違いはあるだろうが、全く畑作やってませんなんてのはおそらく珍しいだろうからな。
ビートはもうちょっと後になるけど。
「ソラ、どこか一日二日スケジュール開けておいてくれ」
「この時期に!?」
「手伝いが忙しいのは重々承知だ。だけど、ウィザリィでも収穫の時期なんだよ」
「ああ、そっか」
そういうことなんだよな。
ソラのスケジュールに合わせてあっちでの収穫やらなにやらを終わらせておかないといかん。
何せ、ウィザリィで初の新米だ。この記念すべき白米をソラ抜きって訳にもいかんだろうからな。
他にも精霊たちのおかげでこれ以上ないくらいに実った作物たちがオレを待っている!
「分かったわ。掛け合ってみる」
「頼むぜ。あっちで初めての作物ばっかりだ。ソラの腕で料理して振る舞って、来年は今年以上に作付面積増やしていくきっかけにもなるからな」
「そう。そして酒造りもある」
「それはお前らに任せるわ。シルヴィアにノンノ」
十分予習は済んでいるはずだ。
「任せる。私の本気を見せるときが来た」
「旨い酒のためじゃからのう!」
この飲兵衛どもめ。
人のことはいえんが。
「ソラの日程がかたまり次第、オレたちが一足先に跳んで準備しとくから」
「分かったわ。早めに決めるね」
「頼んだ」
ソラのスケジュール調整が済んだので、オレたちは一度ウィザリィへ向かって農場の連中に収穫や事後処理のやり方を教え込んだ。
ちゃんとやらないとダメになっちまうからな!
「覚えたか?」
「勿論であります、大魔術師様!」
「アンドリューでいいっつーの。まあ、お互いにフォローし合って完璧にやれるようにすんだぞ?」
大地の精霊と水の精霊の加護のある農地とかもうね、どんだけチートなのかと。
豊作か大豊作以外の結果は見えてこないな。
「おーい、いるかー?」
『おお、アンドリューか。大豊作じゃな』
『私もいるわよ』
大地と水の精霊王そろい踏みか。丁度良かった。
「ちょうどいいや。今回取れた作物で今度色々やるんだけどよ、もうちょっとあとなんだよな。だから、今日はコイツで我慢してくれ」
そう言ってオレが取り出したのは、福井と石川の地酒だ。
実に旨い。
それとよく煮込んで味の染みこんだおでん。
たまらん。
オレも飲もう。
幸い、乱入したがる飲兵衛二人組は酒蔵の指導に行ってていないからな!
『むむむっ! その瓶からは旨そうな酒の気配がするぞ!?』
『素晴らしい水の力が封じられている。よほどの名水と見たわ』
二人の精霊王が身を乗り出す。
早く飲みたいんだろう?
正直に言いなさい。
「たまらんよ、これは。さっそく一杯やろうぜ」
『然り!』
『賛成よ!』
建立された社の中に入り込み、酒を器に注ぐ。
おでんの取り皿には練り辛子。
「「「かんぱーい!!」」」
酒盛り開始である。
昼間っから飲む酒ってのは何でこんなに旨いんだろうな!!
一方その頃。
「よいか、お主ら。一度で覚えるのだぞ?」
「丁寧に教える。覚えられなかったらお仕置きする」
ノンノとシルヴィアが蔵に集まった男達になにやら指示を出している。
「これよりウィザリィ初の日本酒の仕込みを始めるぞ」
「まずは精米」
今年、量は少ないながらも栽培し収穫された酒造好適米。
それを魔法により即座に乾燥させた玄米を精米し、蒸す。
言ってみれば特別栽培米。
今回はそれを特別純米酒とする。
「いずれ純米大吟醸も造る」
本来であれば精米、洗米、蒸し、冷やしとたいそう時間のかかる作業ではあるが、何せこの世界はファンタジー。
魔法とは偉大である。
「続いて麹作成」
麹米も魔法を使えばあっという間だ。
「酵母菌投下」
魔法により一気に培養。
これにて酒母は完成である。
「本来であれば段仕込みするところ。だが、この世界には魔法がある」
初添え、中添え、留添えを四日に分けて行うのが通例ではあるが、そこは当然のように魔法で突破する。
段仕込みは、雑菌の繁殖を抑えつつ酵母の発酵を容易にするための知恵ではあるが、魔法にかかっては形無しである。
これによりもろみが完成した。
「ここから20日ほどかけて発酵させた後、絞るのが普通。ただし、そんな悠長には待てない。魔法により発酵を促進させる」
無表情のままもろみに魔法を掛けていくシルヴィア。
「シルヴィア様、我々にはそれほど魔法を連発するだけの魔力が・・・」
「杜氏と呼びなさい」
「は?」
怪訝そうな顔の男。
「蔵にいる私は杜氏と呼ぶこと。分かった?」
「杜氏、ですか」
「その通り。総員復唱」
「はっ、杜氏!」
「感無量」
その間にもシルヴィアは魔法をかけ続けていく。
充填された魔力を惜しげもなく消費していく。アンドリューという充電器があるからこそ出来る芸当だが。
「あなたたちに私ほど魔法を連発しろとはもちろん言わない。その為にこの人数が集められている」
「どういうことでしょうか、杜氏」
「それぞれの行程で必要な魔法を分担する。おそらく一桶を完成させるまでに必要な人数は20人前後」
「なるほど、それで」
そんな説明をしている間にもみるみるうちに醸されていく酒母。
「作業完了。あとはこれを絞る」
特注の布で漉していく。
圧力を掛けるのも魔法を使えば楽勝だ。
「これで原酒完成。さっそく味見」
しぼりたて生原酒である。
というか作者も飲みたい。
「・・・・・・」
美しくカットされたガラスの盃をぐいと飲み干すシルヴィア。
「どうじゃ、シルヴィア?」
「・・・・・・」
無言で盃をノンノに差し出す。
受け取って、それを一息に飲み干すノンノ。
「・・・至福」
「全くじゃのう」
シルヴィアの入念な調査と酒に対する情熱は、見事な酒を産みだしていた。
その光景にゴクリと喉を鳴らす将来の杜氏候補。
「・・・飲む?」
「はっ!」
ざっと全員が揃って頭を下げる。
この世界で作られた初めての日本酒がそれぞれに振る舞われる。
その味と香りに驚きの表情を浮かべる男たち。
「この飲み物を、あなたたちが作る。この名誉」
「了解であります、杜氏!」
「では早速実戦あるのみ。細かい指示が出来るのは今日限り。頭と身体をフルに使ってマスターすること。よい?」
「ははっ!!」
これ以降、ウィザリィでは「杜氏」という仕事は戦闘向きではない魔法使いにとって憧れの花形職業となっていくのだが、それはまた別のお話。
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また、作中の酒造りに関しては素人がちょっと調べた程度で書いていますので間違いなどはご容赦下さい。




