表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/97

第6話 好奇心猫を殺すっていいますし

何とかなったので、投下します。


ちなみに、病院の下りは完全に想像の産物です。

ホントのことと違っていてもスルーしてください。お願いします。

<第6話>


 やあ、オレの名前はANDREW!

 アンドリューだ!


 ソラの操るゴーレム馬車で「びょういん」とかいう所に連れてこられたんだが・・・。


「おいおい、なんだここは?」


 たくさんの小動物と、おそらくその飼い主だろう人間が大勢いる。

 白を基調とした、清潔感のある大きな部屋。

 たくさんの長椅子や一人掛けの椅子が置かれている。


 薄い緑色の制服に身を包んだ侍女達が、忙しそうに書き物をしたりうろうろしたりしている。侍女というには訓練された感じがあまりしないな。

 ここはいったいどんな屋敷なんだろうか。

 これだけたくさんの人間達が文句も言わず順番待ちをしている所を見ると、もしかしたら教会や寺院の類なのか?


 びょういんの「いん」は「院」なんだな、なるほど。


「あの、予防接種の予約をしていた清水なんですけど・・・」

「ああ、清水さんですね。承っております。こちらの問診票に記入をお願いします」


 木の板とバネに挟まれた紙にソラが何かを記入していく。

 これまでの生活で、この世界では紙が貴重品ではないことにオレは驚いていた。至るモノに上質な紙が使用されているのだ。

 ということは、大量生産の手法が確立しているということだ。

 ぜひとも覚えて帰って、元の世界でも運用したいもんだぜ。

 しかも、書くための道具も羽根ペンや木炭ではなく、「えんぴつ」「しゃーぺん」「ぼーるぺん」といった実に様々な道具が準備されている。

 特に「しゃーぺん」や「ぼーるぺん」はまるで魔道具だ。


「書けました」

「はいはい。トラ吉くんですね。生後二ヶ月、と。これまでに何か病気をしたり気になることはありましたか?」

「いえ、なにも。すごくいい子で手がかかりません」

「それはいいことですね。では、呼ばれるまでもう少しお待ち下さいね」


 ソラは籠を抱いたまま長椅子に腰掛ける。

 ふむ・・・。

 病気という言葉が会話の中に出てきたな。

 やはりここは教会のようなところで、「びょういん」は「病院」と書くのだろう。それなら順番待ちができるのも頷けるというもんだ。

 ちっ、オレが魔術の力を取り戻していれば病気なんぞあっというまに治してやるのに。

 っていうか、オレ、どこも悪いとこなんかないけどなぁ・・・。

 しかし、ただのペットにわざわざ教会での治療を受けさせるとは。この世界の貴族様達はよっぽど金持ちなんだな。

 清水家もやっぱりすごい金持ち貴族なのかもしれん。


 名前を呼ばれた飼い主とペットが次々と奥の部屋へと消えていく。

 時々凄まじい吠え声や情けない悲鳴が聞こえてくることがある。


 なぜだ?


 魔法での治療に痛みも恐怖もないはずなんだがなぁ・・・。

 あんな鳴き声を聞いてたら、いくらオレ様でもちょっとびびっちまうぜ・・・。


「清水さーん。清水大空さーん。診察室へどうぞ~」

「あ、はーい。さ、トラ、行くわよ」

「うにゃあ・・・」


 ええい、びびるな、オレ!

 仮にも伝説の大魔術師様だぜ、オレは!


「はいはい。予防接種だったね~。その前に寄生虫の検査とかするから便とるよ~」


 間延びしたしゃべり方をする神官だな。

 色は白いが、侍女(尼僧か?)と似たような制服を着ている。あまり威厳も神性も感じないが・・・。


「あー、斉藤さん、便とって検査しといてね」

「わかりましたー。清水さん、トラ吉くん、ちょっとお預かりしますね」

「はい。トラ、いい子にしててよ?」

「にゃあ」


 オレだってTPOくらいはわきまえるぜ。


 連れて行かれた部屋は、いろいろな器具の置かれた部屋だった。

 教会や寺院というよりは、なにやら錬金術師の研究室みたいだ。

 オレにとっちゃあ懐かしい雰囲気だぜ!


「はい、トラ吉くん。便とりますからおとなしくしててね~」


 にこにこと笑みを浮かべながら侍女が近づいてくる。

 その手に持っている白くて細い棒はなんだ?



 まて


 なにをする


 やめろ


 うわあああああああああ~!!!



「先生~、終わりましたよ~」

「じゃあ、検査しといて。はい、トラ吉くん、次は予防接種だよ~」

「先生、トラ吉くん、おとなしくてすっごくいい子でしたよ」

「それはいいね。清水さんの躾がいいんだね~」

「そんなことないですよ。トラはずっといい子でしたよ」


 うう・・・。

 いい子か・・・。

 もうダメだよ・・・。

 オレ、汚されちまったよ・・・orz


「はい、じゃあ、打ちますよ~」


 ちょっ!

 待て、お前!!

 それはなんだ。針じゃねぇか!!

 しかもその筒の中に入ってる怪しい透明の液体はなんだ!?



 まて


 なにをする


 やめろ


 うわあああああああああ~!!!


「はい、良くできました~。我慢して偉い子だね~」

「でしょう、先生。さすがトラ!」


 うう・・・。

 いったいここはなんなんだ・・・。

 何かの実験場なのか・・・。

 オレはいったいあの薬でどうなっちまうんだ・・・。


「検査結果は後日ということになりますね。次はまた一月後くらいに2回目を打ちに来て下さい。病気にかからないためには必要なことだからね、トラ吉くん」

「そうよ。せっかく家の子になったんだから病気なんてしないでね?」

「にゃああ・・・・」


 どうやら、病を防ぐための錬金薬だったようだ。

 にしても恐ろしい体験だった・・・。


 ん、まてよ。

 今一月後くらいにもう一回って言ってたよな・・・。


 いやだああああああっ!!!

お読みいただきありがとうございます。

良ければ評価等お願いいたします。


斉藤さん、予防接種の時には再登場すると思います。

別に話には絡んできませんがw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ