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第55話 月と星の下で

<第55話>


 やあ、オレの名前はANDREW!

 最近ヘッドホンはカナル型よりオープンタイプのが好きな方、アンドリューです。


 遮音性高いのもいいんだけど、やっぱりちょっと不安と言えば不安なんだぜ。

 ま、周りから隔絶されたい時は遮音性高いに限るけどな。






「おら、ここなら全裸でも構わんぞ」

「本当か! 風情があっていいところじゃな!!」


 えー、オレ達は今、山の中にある秘湯に来ています。

 コン蔵師匠に教えてもらった場所である。


 それこそ猿でも入りに来てそうな天然の露天風呂だ。

 まあ、北海道にはニホンザルはいねえけど。


「どれどれ、では早速・・・」

「はやっ!?」

「さすがアイデンティティ(笑)です」


 光の速さで脱衣したノンノがいつの間にか風呂に片足を突っ込んでいる。

 あれだ、これがいわゆる「クロスアウッ!!」ってヤツか。

 オレとシルヴィアが目を見張るような速度だ。


「ほうほう、天然にしては何という素晴らしいお湯加減よのう」


 月明かりに照らされて、ノンノの白い裸身が煌めく。


 白い肌に艶やかな黒髪。

 小振りながらもしっかりと自己主張する胸にきゅっと引き締まった腰から尻へのライン。


 うむ。

 スタイルはいいんだよな。それは認めてもいい。


 だがな・・・。


「ご主人様。若干ガン見?」

「なんじゃ、ワシの裸には興味がないのではなかったのか?」

「ああ。ただの観察対象というか、雑誌のグラビアを眺めている気分というか、例えるならそんな感じだな」

「それはそれでワシの存在意義に関わるのじゃよ・・・」


 orzになっているノンノ。

 だからオレはあれほど以下ry


「いいじゃねえか。別にムラッとこないだけでバランスの取れたナイスなプロポーションだとは思うし。客観的に見て可愛いと思うぞ?」

「そうじゃろうそうじゃろう!」

「ババアだけどな」

「うるさいわ。歳なぞ言わねば分からぬものよ。見た目が全てじゃ、見た目が」

「それについては激しく同意」

「シルヴィアも生まれた時期考えれば十分ババアだからな」

「それ以上言うとご主人様を指定無しで強制転移する」

「はいはいっと」


 ジト目のシルヴィア。

 む、そう思うとシルヴィアといいノンノといい水の精といい年齢詐称のヤツばっかりだな。


「ご主人様だって人の事は言えない」

「それもそうだな。つーことはだ、やっぱ気にすんなってことだな」

「むう。お主も相当に適当な男じゃな」

「その通り」


 もともと適当ってのは悪い意味じゃないらしいけどな。

 国語辞典で引くと、「ある条件・目的・要求などに、うまくあてはまること。ふさわしいこと」とある。他にも「程度などが、ほどよいこと。また、そのさま」とかな。

 もちろん今言われている意味もあって、「やり方などが、いいかげんであること。また、そのさま」だそうだ。これが悪い意味で用いられる場合だな。


 うん、スマホって便利だよな。


「ふうう~。極楽極楽」


 湯の中で手足を大きく伸ばしてノンノが呟く。


「同意。月と星の下で入る露天風呂は素晴らしい。人間の文化の極み」

「パクリはいかんぞ」

「これで熱燗でもあればさらに極楽浄土」


 そういってオレの方をチラ見するシルヴィア。

 期待してんな?


「何をチラチラ見てんだ?」

「分かってるくせに・・・」

「ん~。何のことかな~?」

「ご主人が意地悪をする。由々しき事態」


 口をとがらすシルヴィア。


「ん~。何が欲しいのかはっきり言ってみろよ?」

「どうしても私の口から言わせる気。ご主人様は意地悪」

「お主ら、そのどうでもいいノリでまだ続けるのかえ?」


 ノンノ、そんな呆れた口調で言いながらジト目で見んのやめんかい。

 確かにどうでもいいんだけどな!


「仕方ねえなあ。ほらよ」


 収納空間から一升瓶と銚子を取り出して水面に浮かべたお盆に銚子を載せる。

 まあ、燗酒用なのでグレードはそれなりだけどな。

 そして、銚子になみなみと酒を注ぐと魔法で温燗に。


「待ってました」

「なんと。お主はまっこと魔法使いのようじゃのう」

「魔法使いだってえの」

「細かいことはさておいて。ささ、まずは一献」

「調子いいな、シルヴィアは・・・」


 猪口を3つ取り出すと、それぞれに注いでいく。

 軽く猪口を合わせると、ぐいっと一息で。


「ふう。露天で美味しいお酒を堪能。至高の贅沢」

「うむうむ。こんな旨い酒は久し振りじゃのう。こんな洗練された酒なんぞ存在せんかったからのう」

「そりゃ良かったな」


 確かに、こんなロケーション、シチュエーションで酒を飲む。

 本当に贅沢だな。


 月と星の明かりに照らされて、自然が生み出す微かな音を聞きながら。


「どれ、月を呑んでやるとするか」

「風流じゃのう」


 猪口に注がれた酒に月を映して、一息で。

 いい気分だな。






 それから数刻。






「ご主人様。もっと出す」

「いい気分じゃあ~。体が火照って仕方ないわ!」


 すでに一升瓶が4本転がっている。

 お前ら、調子ん乗って飲み過ぎだろ!?


 ノンノは顔も体も真っ赤になって岩の上に転がってるし、シルヴィアは猪口じゃなく銚子から直に呑んでるし・・・。


「せっかくのいい風情が台無しだぞ・・・」

「何か言ったか~?」

「風情よりお酒。ハリーハリー!」


 ったく、この酒乱どもめ!!


お読みいただきありがとうございます。


ぜひ評価やランキングへのリンクを踏んでいただきたい…なんて…


*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*

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