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第40話 下ごしらえは大事です

正月休みを利用しての更新連発もそろそろ限界のようです。


今日の登場人物はあのお方です。

別に狂ってませんw

<第40話>


 やあ、オレの名前はANDREW!

 モツ鍋のシメはラーメン食べたい派、アンドリューです!


 味噌味モツ鍋の汁にラーメンぶっ込んで食うのが上手いんだよなぁ。

 雑炊も捨てがたいけど、やっぱりラーメンかな。


 そうか、ラーメンをこの世界でも普及させなくては・・・。

 スープの作り方をしっかり覚えて帰ってこなくちゃいかんな。




「牛の乳と卵と砂糖だけでこんな美味が。シーンジラレナーイ」

「カラメルソース無くても美味いな。生クリームと果物がまた美味い」

「カラメルありが私は好きかな。生クリーム、魔法使ったら簡単だね。バターもあっという間に出来るし。うーん、料理人に魔法は鬼に金棒だねぇ」


 どうやらソラも魔法やスキルの有用性に気づいてきたようだ。

 いい傾向だな。

 こっちの世界にあまり抵抗感をもたれなくて済むからな。


「おかわり希望。出来れば今の倍ぐらいの量で」

「それはすでにおかわりじゃねえよ」

「はいはい。シルヴィアちゃんは気に入ってくれたみたいね~」

「これまで経験した何よりも幸福感がハンパない。一生ソラについていってもいいと思える」

「作り方覚えちゃえばシルヴィアちゃんにも作れるよ~。魔力が必要なんだから、ちゃんとトラの方にくっついていってね~」


 苦笑しながらおかわりを取りにキッチンへ行くソラ。

 冷蔵庫にたっぷりと入っているらしい。

 なんせ卵がビッグバードの卵しかなかったから、すげえ量だったんだと。


「生クリームだけで超美味い。ソラの作る甘味は麻薬」

「うん、ちょっと分かるぜ。甘味は酒並みに危険だよなぁ」

「はい、おまたせ~。そんなに喜んでくれるなら今度ケーキとかドーナツとか作るよ~」

「それはプリンより素晴らしいもの?」

「方向性が違うから何とも言えないかな~。でも、とっても美味しいよ?」

「ソラが言うなら間違いない。いつでも準備OKうぇるかむ」


 ドーナツも美味いよな。

 色々あるけど、やっぱりチョコファッションが最強だとオレは思う。


 その時だ。

 部屋に据え付けられた電話がなった。

 いや、電話じゃなかった。

 本当は遠距離通信魔道具だが、もう電話でいいと思う。


「もしもし、こちら地下迷宮【試練場】」

「おお、帰ってきたんだな、アンドリュー!!」

「ああ、なんだ、ロバートか」

「なんだじゃねーよ、これで連絡してくんのオレしかいねえだろ・・・ってそうじゃないっての。九ヶ月もどこ行ってやがったんだよ!?」


 あ、そういや王城直通電話だっけ、これ。

 説明すんの面倒だなー。


「ねぇ、それ電話?」

「みたいなもんだ。魔法だけどな」

「まて、今の女性の声は何だ」

「え?」

「そこに若い女性が居るんだな!?」

「いるっちゃいるが・・・。口だけで説明すんのめんどくせえから、ちょっとお前【試練場(こっち)】こいよ。帰ってきたから転移陣動いてっからさ」

「分かった、今すぐ行くから待ってろ」


 プツッ。

 そういって電話が切れた。


「誰?」

「あー、この国の王様でロバートってんだ。オレの飲み友達だよ。つーか、この迷宮で探索者鍛えてんのはアイツの依頼だからな」

「王様!?」

「おう。この国で一番偉いってことだな、立場上は」

「王様がここに来るの!?」

「くるぜ。何ならドレスにでも着替えるか?」

「それは遠慮しとくけど」

「私の美貌の虜になる者がまた一人。身分違いの恋は身を焦がす」

「また、はおかしいな。なんせ誰も虜になってねえからな!」

「照れなくてもいい、ご主人様」


 あの調子ならあっという間に来るな。

 ん?

 ゴルドが秘密にしとけって暗に言ってたけど、今さら無理だな。

 ま、アイツはこっちに側に引き込んどいた方が何かと便利だろうからいいか。


「来たぞ、アンドリュー!」


 バンと扉を開いてやってきたロバート。

 深紅のジュストコールを来て、茶色の髪をワイルドなメンズパーマにした感じのイケメンオヤジが登場だ。

 オレのエアリーショートとは対照的だな。

 イケメン度ではいい勝負だけどな!


「おう、久し振りだな、ロバート」

「全くだ。あの晩から姿をくらまして九ヶ月。ようやく帰ってきたと思ったら女連れか。二人、しかも片方は幼女ときた!」

「待て待て、ロバート、お前は多分誤解している。とりあえず飯でも食って落ち着けばすぐに分かるはずだ」

「ふん、言い訳くらいはさせてやるぞ?」


 どっかとソファに腰を下ろすロバート。


「ん、なんだこれは?」

「それはプリンといってな。まあ騙されたと思って食ってみろ」

「おう・・・。こ、これは!?」


 スプーンで一掬いして口に運ぶと絶句した。

 そしてもの凄い勢いでかき込んでいく。


「信じられん。なんだこの食べ物は!?」

「そのへんも関わってくる話なんだよ。話せば長くなる。ゆっくり酒でも飲みながら話そうか」


 時計を見ると、すでに夜の9時を回っていた。

 いや、ホントは9時なんて呼び方じゃないんだが、オレの中では9時に変換される。

 このへんもぜひとも日本式を広めたい所だな。


「酒と聞いて」

「じゃあ、別なおつまみ作るよ。とりあえずそこにあるの食べてて。魔法で温められるでしょ?」

「もちよ。現代知識と魔法のコラボレーション見せてやんぜ」


 そう言って、オレは電子レンジの魔法を使う。

 これでほっかほかよ。


「さて、まずはオレが失踪した所から話そうか」


 かくかくしかじかと順を追って説明していく。

 気がついたら一時間以上経っていた。


「分かってくれたか?」

「ああ。その猫の姿を見せられちゃ納得せざるを得んな」


 オレは猫になってシルヴィアの膝の上に抱かれている。

 撫でられるのも慣れちまったなぁ。

 気持ちいいからいいんだけどよ。


「で、コイツに魔力を充填するまでの間、この世界に日本の食文化を広めんと努力しているわけだ」

「よく分かった。この食い物がオレにとって未知のもので、しかも今まで食ったこの世界のどの料理よりも美味いって事もな」

「それさえ分かってもらえりゃまずはいいさ。というわけで協力しろ」

「無論だ。何から始めればいい?」


 オレとロバートは、ソラが作ってくれた餃子をビールで流し込みながら相談に入る。


 まず必要なのは土地だ。

 幸い大豆類にしてもビートにしても、そこまで豊かな土壌でなくても育つ。

 定期的に一定以上の量を確保するためには、大規模な農園事業を興す必要がある。


 それと、工程を短縮するための魔法使い達。

 まあ、この迷宮で育つ魔法使い達をそういった仕事に従事させるようにすればいいだろう。断るようなら迷宮に入れてやらん。

 至高の一品が完成したら【複製】を繰り返す手もあるが、【複製】は結構難易度高い呪文だからなあ。


「とにかく必要な作物を大規模に、安定して収穫出来るようにする必要があるってことだな。よく分かった」

「さすが王様。理解が早くて助かるぜ」


 後は畜産業か。

 牛や豚、鶏によく似た魔物を管理して家畜化しながら増やしていく必要がある。

 そのへんは【魔物使い】の適性を持った冒険者を集めれば何とかなるだろう。


「しかし、このビールというのは美味いな!」

「だろ。だが、これほどのものを造るのは相当難しい。諦める気は無いがな」


 そう。作るだけならどうにかなるんだ。

 後は根気の問題だろうな。

 酒造りが好きな種族とか魔物を上手く使えばやれそうな気がする。


「となると、農業特区、畜産特区、酒造特区を作る必要があるな。開拓する土地を選んで領主を決めて、ベースとなる街を作ってか。随分と大規模な仕事になるな」

「公共事業は国の基本施策だろ。頼むぜ王様。食の明るい未来がかかってんだ」

「任せておけ。このところそういった大きな事業は計画していなかったからな。ちょうど良かろう」

「よろしく頼まぁ」

「請け負った」

「じゃあ、オレ達の美味い料理と酒のために」


 オレとロバートはビールの缶を合わせて乾杯する。


 おや、ソラが寝ちゃってるじゃねえか。

 しょうがねえなぁ、もう。

 魔法で浮かべて来客用の部屋に連れていき、ベッドに横たえる。


「シルヴィア、お前この部屋でソラを守っとけ」

「任せて。ソラは私の、いや人類の希望」

「おう、大役だな」


 シルヴィアを部屋にセットしてオレはリビングに戻る。


「さ、こっからは久し振りに男同士飲み明かすとしようか」

「そうだな。九ヶ月ぶりだ」


 収納空間から高級ブランデーを取り出す。


 コイツはオトナの飲み物だからな?

お読みいただきありがとうございます。


評価や感想、ランキングリンクなどポチッとしていただけたら幸いでございます。m(_ _)m

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