第31話 快適な(?)空の旅 その2
<第31話>
やあ、オレの名前はANDREW!
ザンギって、某格ゲーの投げキャラだと思っていた方、アンドリューです!
つーか、普通唐揚げのことだと思わないよな・・・。
っていうか、唐揚げと竜田揚げとザンギの違いを、異世界人のオレに誰かレクチャーしてくれよな。
・・・いや、ネタだから本気で反応すんなよ!?
「当機は定刻通りの離陸を予定しております」
アナウンスの通り、オレたちの乗ったジャンボ機は成田を予定通りに離陸した。
直行便で十二時間か。
結構長いな。
「フランスなんて行くの初めてだよね~」
「そうだね。楽しみだね」
女子組の声が前の座席から聞こえてくる。
オレは機内誌を眺めながら、ぼんやりと今後のスケジュールなんぞを考えていた。
元々のスキルや知識は引き継いでいるわけだから、レベル上げ、スキル上げについては今のところ問題なく進んでいる。
ゲームでも二週目の方が簡単なのは当たり前だからな。
ただ、レベルに関しては、この世界にはモンスターがいないので思うようには上がっていない。その辺の野生動物狩り尽くすわけにもいかないし。
だが、それを解決する素晴らしい方法を発見してあるのだ。
それは「霊体」駆除だ。
カテゴリが霊に属するやつらを浄化して回る。
オレは経験値たまる。
ヤツらは成仏できて嬉しい。
誰も損をしない素晴らしい方法だと思わないか?
オレ、除霊師としてもこの世界で生きていけるな、うん。
ヨーロッパにはそういった幽霊スポットが多いそうだが、片っ端から成仏させたらまずいかな。
うん、まずいだろうな、やっぱり。
最悪、自分で魔物を召喚→養殖→倒すのループしかないかと思っていたが、今のところそこまでしなくても何とかなっている。
おかげで、清水家のあるあたりは、非常に霊的に正常なスポットになってしまっているんだがな。
しかし暇だ。
寝るか。
「ダァン!」
オレは銃声で目が醒めた。
なんだ?
ちらりと時計を見ると、5時間程度。
黒海の上あたりか?
「大人しくしろ!」
「我々は【民族解放同盟】だ!」
「大人しくしていれば危害は加えん。人質になってもらうだけだ!」
おいおい、B級アクション映画的なノリになって来ちまったぜ。
あれだろ、人質を盾に金を要求して、拒まれたら人質を一人ずつ殺してくってパターンだろ、こりゃ。
『ねぇ、トラ!?』
『慌てんな。ひとまずいきなり殺されるとかはないだろうから、様子を見よう。騒いで目を付けられたりしたら困る』
『わ、わかったわ』
『隣の二人にもよく言っとけ。パニクられたら元も子もねえ』
一番恐ろしいのはパニックを起こすことだ。
元の世界の迷宮探索でもそうだ。
大切なのは冷静でいること。
落ち着いて対処することが出来れば、大抵のことは処理できる。
武装した男達は、それぞれが武器を持って機内の客を脅している。
乗客の中に暴れ出すヤツがいないことを祈ろう。
ってか、どうやって武器なんぞ持ち込んだんだ。しかも日本発の飛行機に。
こりゃ内部の協力者を疑ってかからんとな。
一応機内は小康状態を保っている。
あとはヤツらと相手の交渉が上手くいっているかどうかだが・・・。
そんなことを考えていると、リーダーらしき男が携帯端末でなにやら連絡を取っている。どうやら交渉の経過報告のようだ。
「分かった。我々の本気を見せてやらねばならんということだな・・・」
端末を懐にしまうと、部下を呼びつける。
うーん、こりゃいかんわ。お約束過ぎる。
部下が近くにいたおっさんを立たせる。
おっさんは怯えきった表情で抵抗していたが、殴られて無理矢理立たされると、両手を頭の上で組まされ、動けないように男達に捕まえられた。
部下の一人が携帯端末を構える。動画撮影ってヤツか。
「今から我々が実力行使も辞さない覚悟だと言うことを証明しよう。同志、やりたまえ」
「はっ!」
部下が銃を構える。
『ねぇ、トラ!』
『今は黙ってろ!』
銃声がすると、おっさんが足を打ち抜かれる。
もう一発で両足ともだ。
「これは警告だ。次は足では済まない。分かるな?」
リーダーが端末に向かって台詞を吐く。
「よし、死なないように止血はしておけ」
「はっ!」
いきなりは殺さなかったか。
お約束の展開とは言え、肝が冷えるぜ。
『ど、どうしよう、トラ』
『心配すんな。少なくともオレら四人になんかあったらどうにかしてやる』
『でも・・・』
『いいから。オレを信じろ。仮に死んでも生き返らせてやるからよ』
努めて冗談っぽく言うオレ。
そうならないように祈ってるぜ。
しかし、オレはともかく、目の前で人が殺されたら普通はショックだよなぁ。
記憶操作も考えておかんとまずいか、こりゃ。
さり気なく魔法で撃たれたおっさんのHPをちょっとだけ回復してやる。少量ずつだが回復効果が持続するので死ぬことはないだろう。一気に治ったらホラーだしな。
しばらくして、再度リーダーが端末で連絡を取る。
「のろまどもめ。やはり殺さねばダメか・・・」
ちっ、やっぱりそうなるよな。
「おい」
「はっ!」
部下が今度は若い金髪の女を引きずり出して跪かせる。
命乞いをする女。
いかん、これはいかんよ。
目の前で頭でも吹っ飛ばされた日にゃあ一瞬でスプラッタだぜ。
『トラ!!』
『わーったよ。オレだって別に誰か死んで欲しいわけじゃねえしな!』
魔法起動。
範囲拡大。
魔法強度上昇。
『どれ・・・。【集団誘眠】!』
操縦士を巻き込まないように魔法の範囲を調整して、乗客含めて全員に眠りの魔法をかける。
魔力の認知されていないこの世界において、オレの本気の魔法に抵抗できる人間などまず存在しまい。
糸の切れた操り人形のように、バタバタと倒れていくテロリスト共。
乗客達も椅子に埋まるようにして寝息を立てている。
『ふう。今のうちに全員ふんじばっておくとすっかなー』
『すごいじゃない、さすがトラ』
『おう・・・ってソラ、寝なかったのか!?』
『え、何のこと?』
マジか。
別にソラだけ範囲から除外した覚えはないんだが・・・。
ま、まぁ、たまにスゲえ確率で抵抗するヤツもいるからな。きっとそうだ。
そうに違いない。
『よし、じゃあ手伝え、ソラ』
『何すればいいの?』
『魔法の眠りなんで、ちょっとやそっとじゃ起きねえから、武器とか全部取り上げて縛り上げちまおう』
銃とかその他諸々の装備を全部取り上げて収納空間に放り込んでおく。
近代武器ゲットだぜ!
テロリスト共が来ていた服を魔法で裁断して即席のロープ代わりにしてぐるぐる巻きにしておく。
とりあえずこれで何もできねえだろ。
『よし。あとは魔法が切れて乗客が起きるまで放置だな』
『放置でいいの?』
『おうよ。テロリスト共が起きたらまた寝かせるさ』
『そういうことね。でも、空港着いたらどうするの?』
『急に意識が遠のいて、気がついたらテロリストがみんなふんじばられてました・・・って言うしかねえよなぁ。まぁ、全員そう思うように思考誘導もかけとくから、不可思議なハイジャック解決劇って感じの謎ニュースになるくらいだろ』
『謎のヒーロー現る的な?』
『どうだろうな』
さてと、ソラを置いて、操縦士達にも話を聞きに行きますかねぇ。
絶対どっちか共犯だろ?
ついでにとっちめてやらあ。
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