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第24話 オレ、東京へ行くんだ・・・ 中編

さて、作中では年の瀬です。

そろそろ急展開・・・でもないですが、ターニングポイントになる話ですね。


ちょっと長いですがお付き合い下さい。

<第24話>


 やあ、オレの名前はANDREW!

 酒を飲んだらコーヒーを飲む方、アンドリューです!


 牛乳飲んでから酒を飲むと悪酔いしないってのはプラシーボらしいな。

 初めてそれを聞いたときにはマジで驚いたぜ。



「着いたね~」

「うにゃあ」


 飛行機から降ろされてソラと合流するまで少々。

 こんなにたくさんの人間が一つの所にいるのを見るのは、この世界に来てから初めてだったので少し驚いた。

 帯広空港とは全然違うんだな!


「よし、じゃあ、モノレールでも使って浜松町まで出るか」

「浜松町に住んでるんだっけ?」

「ああ。マンションだよ。いい暮らししてやがるよなぁ」

「土地成金だったもんねぇ、西村さんち」


 土地成金のボンボンとは言え、こんな大都市で曲がりなりにも働いてるんだ。

 なかなかできるヤツなんだろうなぁ。


 籠に入れられたまま、オレはモノレールとやらに。

 うーん、この世界の乗り物ってはホントすげえよなぁ。魔法で走る列車とか元の世界でも作れないかな。


 移動自体はあっという間だった。

 窓から見える景色を眺めているだけで、非常識なくらいでかい都市だと言うことが想像できる。

 特に驚くのは、あんなに高い建物が自壊せずに建っていることだ。

 元の世界の一番立派な王城だってあんなものは存在しない。


「よう、西村。久しぶり」

「おう、清水。久しぶり。大空ちゃんもすっかり美人になって」


 なに!


「お前にソラはやらんぞ!」

「何言ってんのよ、お兄ちゃん!」


 ソラが大地の後頭部をスパーンとひっぱたく。


「ははは。元気そうで何よりだよ。そんじゃ、とりあえずうちまで案内するわ」

「にゃーん」


 籠の蓋を押し上げて、とりあえず顔を出すと、ひょいと地面に降りる。


「あ、トラ」

「おお、こいつが例の!」

「うにゃーん」


 何て空気の悪いところだ。

 魔法でフィルター作らなくっちゃな。


「気をつけてちゃんと着いてきてよ?」

「にゃん」


 やはり自分の足で歩くのはいいもんだな。

 西村とやらのマンションに着くと、とりあえずお茶でもという流れ。


「しかし、トラはホント賢いネコなんだな」

「にゃおん」


 当然だろ?

 なんたって、向こうでは伝説の大魔術師だったんだからな!


「こうやって受け答えしてくれるだけでも癒されるぜ~」

「お前もネコでも飼えば?」

「結構出張とかあるんでペットは困るんだよ。見るだけで十分だ」

「そっか。まぁ、マンションだしな」

「ホントに人の言葉が分かってるみたいだよなぁ」


 分かってるからな!


「でしょう。ウチの馬や牛とも喋ってるように見えるし。ホントに分かってるかも?」

「まさかだろ、ソラ」

「いやいや、分からんぞ、大地。そういう特殊能力がネコに宿っていても不思議じゃないだろう。もしかしたら最近流行の転生ネコかもしれないし」

「にゃ」


 マジか!

 こいつエスパーか!?


「ネット小説読みすぎだよ。ま、嫌いじゃないけどな」

「そんな現代ファンタジーがあってもいいよな。ところで、コミケの話なんだが・・・」


 大地と西村の二人は、明日以降のコミケの動きについて話を詰めるようだ。

 オレとソラには関係のない話なんだよな。


「お兄ちゃん、じゃあ、私達はそろそろ移動するね」

「おう、悪かったなソラ。晩飯くらいは一緒に食うか?」

「うーん、でも、トラ連れてけないでしょ?」

「ああ、そこまで考えてなかったな・・・」


 んだよ、大地め。温厚なオレ様も怒るぞ。


「いいよ、お兄ちゃん。ホテルで食べるから。私は私で楽しむから大丈夫」

「そっか。わりぃなソラ。あとで埋め合わせするからよ」

「気にしないで。じゃあ、トラ、いこっか」

「うにゃ~ん」


 のそっと起き上がると、ソラについて歩いて行く。


「じゃあ、お邪魔しました~」

「またね、ソラちゃん」


 ソラはこの街で遊ぶために気合いの入った格好で来ている。

 12月末とはいえ、十勝に比べれば全然温かい。

 薄手のコートで十分なくらい。


「さあ、どこに行こうかしらね」

「にゃにゃん」

「何だかんだいっても、全然来たこと無いからなぁ・・・。ミーハーに表参道でも行ってみようかな」

「にゃおーん」


 よくわかんねぇけど、オレはソラが行くところならどこでもついてくぜ?


 しかしこの街はどこも混んでるな。人、人、人だ。

 乗り物が特にひどい。

 まぁ、籠のオレを見るヤツらが「かわいぃ~」と言ってくれるのが救いだな。


 駅で電車を降りると、綺麗に整備された歩道を歩いて行く。

 この世界はホントに人工的に整備されている。

 元の世界では考えられないくらいに。


 道を行く人間達も、思い思いに着飾って、立派な格好をして歩いて行く。

 季節が冬という事もあってか、さすがに肌を大きく露出しているような服装はあまり見かけない。だが、中には明らかに「それ寒くないか!?」というくらい足を出している若い女もいる。

 見ている方にしてみれば嬉しいが、心配になってしまう。


 街を行く若い女達を籠の中から観察しているが、なかなかソラのような美人はいない。もちろん着飾ったり化粧したりで色々と手間を掛けているようだが、ソラはほぼ素のままで十分美人だ。実に素晴らしい。

 娘を自慢する父の気分だな、こりゃ。


 しばらく歩くと、とても立派な建物に入った。ソラ曰く、表参道ヒルズだそうだ。

 建物中は老若男女、人で溢れていた。

 ソラは、下調べしてきたのだろう、お目当てのブランドショップをぶらぶらと物色しているようだ。

 しかし高いなぁ。

 まぁ、どの世界でも手間の掛かった高品質なモノは高いって事だな。


「ふう。ちょっと散財しちゃったかしらねぇ・・・」


 服や小物を中心に数点買い物をしたソラ。

 こりゃあ結構使ったようだな。女ってのはやっぱり買い物好きなのかねぇ。

 オレがパチンコで稼いだ金を寄付してやりたいくらいだぜ。


 オレの入った籠と買い物袋を手にぶら下げて、エスカレーターに乗るソラ。

 この動く歩道を初めて見た時はたいそう驚いたもんだ。

 つーか、別に階段でよくねえか?


 その時だった。


「きゃ・・・」


 ソラの前に乗ったショップの紙袋を肩に掛けた若い女の二人組。

 その女の方が、手に持っていたスマホを落としてしまった。

 慌てて拾おうとする女。

 当然かがむよな。

 その紙袋がソラを直撃したんだ。


 平地なら何てこと無い衝撃だったんだろうけど、無意識に避けようとした事もあってバランスを崩してしまうソラ。


「うにゃん!!」


 やべえ、このままなら落ちる!

 どうする、人化するか!?

 いや、ここで人化するのはスペース的にキツイ。間に合わんかもしれんし。


「にゃおん!」


 仕方ねぇ!!

 無属性魔法【見えざる手】を発動。

 ソラの背中を魔法の腕でぐっと押しとどめて前へ。

 間一髪バランスを立て直したソラは、不思議そうな顔で後ろを振り返る。


「ご、ごめんなさい!」


 紙袋を当ててくれやがった女がこっちを見てぺこぺこと頭を下げている。

 そんなんで済むか!

 オレがいなかったら年末の大惨事でニュースに出るわ!


「い、いえ。大丈夫でしたから・・・」


 ソラはお人好しだなぁ。

 とにかく不思議そうな顔で首を捻っているソラ。


「誰かが背中を押して止めてくれたような・・・。気のせい・・・?」


 気のせいだよ。運が良かったと思って忘れるろよ、ソラ。


「にゃおん?」

「トラ・・・? まさかね」


 そうだ、ソラ。そんなわけないんだ。


 まぁ、とにかく危険は回避したわけで、ほっと胸をなで下ろした。

 だけど、ホントの危険はこれじゃなかったんだよ。


 少し裏通りに入った所にあるショップをソラは目指していたようだった。

 北海道では手に入らない類のブランドらしい。

 心なしか足取りも軽いソラ。


 キィーッ!!


 ブレーキ音とドスンという音。

 投げ出される籠とオレ様。


「うにゃっ!?」


 オレが見たのは、道路に倒れ伏すソラと、今まさにアクセルをふかして逃げ出そうとする黒い軽自動車。

 いくらたまたま人がいないからって、まさかの轢き逃げかよ!?

 ふざけんな、絶対逃がさねえ!!


 オレの放った風魔法が狙い澄ましたように自動車のタイヤをパンクさせる。

 勢いよくアクセルを踏んでいたせいで、迷走した車はブロック塀に思いっきり突っ込んで止まっていた。

 ざまあみろ!


「にゃっ!」


 ソラに駆け寄るオレ。

 胸は上下している。死んじゃあいないようだ。

 良かった。蘇生魔法はまだ使えない。


「と、トラ・・・?」

「にゃ、にゃあ!」


 うっすら目を開けてオレを見ている。

 やべえ、一刻も早く治療しないと・・・。


「にゃん!」


 ソラのステータスを魔法で看破。

 げ、HPが減り続けている。継続ダメージ症状だ。

 骨折もしてるし、内臓も損傷している所があるようだ。

 くそ、無詠唱じゃ限界があるな。


「トラ・・・。誰か呼んできて・・・。賢いからできる・・・げほっ!」」


 今にも消えそうな声でソラが呟く。

 血ぃ吐いてるし!


「うるせえ! 今すぐ治すから少し黙ってろ!」

「あは・・・。トラ、喋れるんだ・・・。私の言葉、わかる・・・?」

「黙れっつってんだろ! 魔力よ、全てを癒やす力と為れ! 【完全治癒(フル・ヒーリング)】!」


 オレのこの手が光って唸る!


「わあ・・・。いたみが・・・」

「これで大丈夫だ。すぐ誰か呼んでくるから、大人しくしてろ!」


 そういってソラを強制的に魔法で眠らせる。

 そのあと人間変身して、表通りに出るとその辺を歩いてた歩行者を捕まえて救急車を呼んで貰い、轢き逃げの現行犯で軽自動車を運転してたヤツもしょっぴいてもらう。

 救急車が到着したので、知り合いだという事にして、同乗して病院まで一緒に行く。

 人間形態じゃないと説明したり、大地に連絡入れさせたりするのが面倒だからな。


 検査のために緊急入院させ、大地と北海道の親父さん達に連絡を入れたらオレはお役御免。

 こっそり猫に戻って、ソラが起きるのを待てばいい。


 さて、どこに隠れてりゃあいいかな?


お読みいただきありがとうございます。

各種ポチッとなや感想などいただけると喜びます(*/▽\*)イヤン


あ、「猫連れてたらダメじゃね?」的なツッコミは無しの方向でお願いします・・・。

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