第17話 深夜の攻防
どうも最近忙しいのですが、ちょくちょく書き続けてはいるのデス。
というわけで、投下です。
<第17話>
やあ、オレの名前はANDREW!
ご飯にマヨネーズかけて食べられる方、アンドリューでっす!
できれば醤油も垂らしたいな!
季節は秋。
何を食べても美味しく感じる季節だよな~。
でもみんな、体型にだけは気をつけないとな!
「くっ・・・。油断したわ・・・」
ソラが風呂上がりにバスタオルを一枚巻いて、体重計に乗って呻いている。
恐怖と怒りと後悔がない交ぜになったような、そんな表情だ。
別にそこまで太ってるようには見えないけどなぁ。
ソラはオレが見てもバランスの取れた体型をしているように見える。
欠点があるとすれば一つだけ。
胸がないってことだ。
エルフ並みだな!!
「うにゃ~あ」
オレは気にしないから安心しろ、ソラ!
そんな気持ちを込めて一鳴きしてやる。
「うう、慰めてくれなくてもいいのよ、トラ・・・」
おっと、誤解のないうちに言い訳させてもらうが、別にオレは役得だなんて思ってないからな。
一緒に風呂に入っていたわけでもないし。
これでもオレは紳士で通ってたんだ。
自覚のない女の素っ裸を見て喜ぶような真似はしねえ!
だが、ラッキースケベは否定しない!!
否定しない!!
大事なことなので二回言いました。
「収穫時期で浮かれて油断した私のミスね・・・」
体重計から下りたソラはキッと表情を引き締める。
む、そういう顔をするとますます美人に見えるな。
「これは、ダイエットするしかないわね!」
「にゃ~あ!」
しゃあねえな、オレもつきあってやるか。
まずは朝のジョギング。
農家の朝は早いので、早起きはソラも苦にならないようだ。
清水家の敷地は十分広いので、小麦畑の周りをぐるっと一周するだけでも十分な運動になる。
オレは鍛えてるから全然平気だけどな!
ジョギングから帰ってきたあとは、シャワーを浴びてから朝食。
ご飯と味噌汁、たっぷりの野菜と牛乳。
この牛乳がとにかく美味い。
加熱殺菌がどうとか自分ちで飲む分にはどうとか色々言ってたけど、とにかく美味い。
元の世界に帰るときに、誰か連れて帰るかな、乳牛。
そして学校。
さすがに学校に連れて行ってはくれないからよく分からんが、多分ソラのことだから真面目にやってるんだろう。
料理スキルを鍛える学校らしいから、確かにオレみたいな猫が潜入ミッションするわけにはいかんよなぁ。
あ、言っとくけど、オレは病気もないし虫も付いてないからな!
帰宅すると、料理の手伝い。
学校に通っていることもあってか、ソラは料理が上手い。
いい嫁さんになれるな、きっと。
風呂に入ったあとはストレッチ。
風呂の中でもやってるっぽい。
ストレッチはオレも一緒になってやる。
柔軟性の大事さについては、前の世界でも散々言われてきたからなぁ。
「あら、トラも体柔らかいわね・・・って猫だから当然?」
「うにゃん」
ソラも十分柔らかいぞ。
ぺたんと体が床に着くし。
寝る三十分くらい前に軽く筋トレ。
これも一緒にやる。
狐の師匠にも「体は鍛えておけ」って言われてるしな。
しかる後に就寝。
むう、何て健康的な生活なんだ。
そんな生活を続けて早一週間。
「よしっ! 目標達成!!」
体重計に乗ったソラが小さくガッツポーズをする。
目標ったって、たった2kgじゃねえか・・・。
2kgぐらいたらふく焼き肉でも食えば増えるだろ。
誤差だ、誤差!
だが、事件はそのあとに起こった。
「ふんふんふーん♪」
陽気に鼻歌を歌いながらソラが冷蔵庫から取り出したのは、何とロールケーキ。
しかも十勝では有名な某柳の月の白樺モチーフのアレだ。
まてまて、まさか一本丸々食う気なのか!?
「ご褒美ご褒美~♪」
まて、やめろ。
それは多分一週間を全て無駄にする最低の行動だぞ!?
「にゃっ!!」
行儀悪いなぁと思いながらも、オレはテーブルの上に飛び乗り、ロールケーキとソラの間に敢然と立ちはだかる!
「どうしたの、トラ。テーブルに乗っちゃダメでしょ」
「にゃにゃにゃっ!!」
全身の毛を逆立てて、首を激しく振ってアピールするオレ。
さすがにソラも気づいたらしい。
「食べちゃダメって言ってるの?」
「うにゃん」
「一週間頑張ったのに・・・」
「うにゃにゃん」
「・・・そう、そうよね。今これを食べちゃったら水の泡よね・・・」
大きく肩を落としながらロールケーキを冷蔵庫に戻すソラ。
偉いぞ!
誘惑に打ち勝ったんだな!!
感動するオレをちらりと見るソラ。
「・・・ちょっとだけ」
「にゃにゃにゃっ!!」
せめて今日は。
そして夜は我慢するんだ!
耐えろ、耐えるんだ!
何なら精神力高める魔法使ってやるか!?
「分かったわ、私も女よ。我慢するわ!!」
冷蔵庫の扉がパタンと閉められた。
やった、オレ達は勝ったんだ!!
なんてオレが油断すると思ったら大間違いだぜ、ソラさんよぅ。
ある確信めいた予感を抱いたオレは、いつもの自分の寝床ではなく、台所のテーブルの下で張り込んでいた。
ぎしっ、ぎしっ。
階段の軋む音。
音を立てぬようにゆっくりとドアを開ける人影。
人影はそろりそろりと歩を進め、冷蔵庫の前に立つ。
人影が取っ手に手を掛けようとした瞬間。
「うにゃ~お」
「ひいっ!?」
相当驚いたようだな、ソラめ。
「び、びっくりさせないでよ、トラ・・・」
「うにゃん・・・」
暗がりの中で目を光らせるオレ様。
「見抜かれていたというのね、トラ・・・」
「にゃあ」
当たり前だろ。
そう簡単に甘味の誘惑は振り払えないよなぁ、ソラよ。
「一口、一口でいいのよ・・・」
「にゃっ!」
鋭く鳴いて首を振るオレ。
だから夜はやめろと。
「うう・・・。分かったわよう。朝まで我慢すればいいんでしょ?」
「うにゃん♪」
肩を落としてすごすごと去っていくソラ。
ちょっと可哀想なことしたかな。
だがな、ソラ。
これはお前のためなんだ!
分かってくれるよな!!
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