第14話 結局弟子入りすることにしました
毎日暑いですね。
<第14話>
やあ、オレの名前はANDREW!
アンドリューだぜ!
なんだか話の流れが変な方向に行っちまったけど、どうなる、オレ?
「弟子ってなぁどういうことだ?」
「そのまんまの意味よ。このオレが、直々に戦いのイロハってのを手ほどきしてやるってこった」
さも素晴らしいことのようにコン蔵が言うんで思わず頷きかけちまったが、猫が狐に戦い方を教わるってのはどうなのよ?
「オレは猫だぜ。狐じゃねえ」
「そんなことは百も承知よ。種族なんて関係ねえのさ。オレはオレのこれまで磨いてきた技、いや業を誰かに継がせたい。それだけの我が儘さ」
コン蔵の顔が少し寂しげな気がする。
気がするだけだぜ。
「アンタほどの実力者なら、同族の中で後継者なんぞ選び放題だろうが?」
「残念だがな、今時オレのような古くさい考え方は受け入れられねえのよ。自分に必要な分だけを狩り、仲間同士助け合い、目上が目下を守るような」
そこでいったん言葉を切り、オレの方を見るコン蔵。
「最近の若いヤツらは何を差し置いても自分が一番さ。強い者には媚びへつらい、弱い者には同族だろうが容赦しねえ。そんなのは、粋じゃねえだろう?」
「・・・・・・」
ああ、言いたいことは分かるぜ。
世の中の誰もがそう思ってくれりゃあ、こんないい世の中はねえよなぁ。
「お前さんはまだ若いが、なんだか分かってくれそうな気がしてなあ」
「ああ、分かるぜ。人間も含めて、みんながそう思ってくれりゃあ、世の中もっとマシになるだろうさ」
「なら・・・」
「ああ、コン蔵さんよ。アンタのいう業とやら、教えてもらおうじゃねえか」
オレは素直に頭を下げる。
オレにとっても悪い話じゃねえ。
この四足動物の体での戦い方が学べるならそれにこしたことはねえし。
魔術がいつでも使える訳じゃないしな。
「おうよ。オレ様の修行は厳しいぜ?」
「誰に言ってるんだよ。ま、よろしく頼むぜ、師匠」
「任せとけ」
そう言ってコン蔵は、ちょっと照れくさそうに笑った。
なんだ、笑えるじゃねえかよ。
「ってもな、今から山籠もりとかは勘弁だぜ?」
「オレだって勘弁よう。毎晩ここで落ち合うってのはどうだ?」
「分かった。体調整えて待ってるわ。よろしく頼まあ」
「そんじゃあ、今晩はこれでお暇すらぁ。またな」
「ああ、またな」
そういってオレ達は別れた。
うーん、不思議な展開だ。
気がついたら師匠と弟子になっていたんだぜ?
「トラ吉さん! よくぞご無事で!!」
家に帰ろうとしたオレを鶏たちが大喜びで迎えてくれた。
「よせよ。この通りピンピンしてるだろ?」
「狐と戦って五体満足だなんて・・・。さすがトラ吉さん!」
「オレ達にできないことをやってのける!!」
「「そこにシビれる憧れるぅっ!!」」
よせよ、照れるじゃねえか。
「つーか、あの狐はそんな危険なヤツじゃねえ。何せこれからオレの師匠になるんだからな」
「師匠?」
「おう。戦いの、な」
そういってニヤリと鶏たちに笑ってやる。
「あの狐はともかく、他のが来たらオレに教えろよ。ぶっ飛ばしてやるからよ」
「分かりました、トラ吉さん!」
鶏たちに盛大に見送られながら寝床に帰る。
夜中に随分と激しい運動しちまったもんだ。
朝まではゆっくり寝るとすっか。
朝起きて、日課の散歩をすると、どこでも夕べの話題で持ちきりだった。
「トラ吉よう、夕べは随分無茶したみたいじゃねえの」
「そういうときは、オレ達んとこに逃げ込んできてもいいんだぜ?」
「そんなんじゃねえよ。でもまぁ、ありがとな、クロもベイも」
確かにこいつらなら狐なんぞ目じゃねえよなぁ。
軍馬だとてっきり思ってたら輓馬だもんなぁ。
訛ってたわけじゃねえんだな。
でも、きっとこいつらなら全身金属鎧の騎士だって余裕で運べるだろ。
「まあ、狐と一戦やらかして無事だったんだ。お前も相当やるってこったな」
「まぁな。そんじゃな~」
「おうよ。皆によろしくな」
牛舎でも。
「トラちゃん! 危ないことしちゃダメじゃない!」
「たいして危なくねえよ。お前はオレのおかんか」
「あら乳牛だもの。おかんよう」
「そういう意味じゃねえよ・・・」
つ、通じてねえ・・・。
「トラちゃんが怪我なんかしたらみんな悲しむでしょ」
「そうよそうよ」
他の牛たちも口々に言う。
「それに、トラちゃんが助けてくれた仔牛もだいぶ大きくなったんだから」
「おお、そうか。あいつ元気でやってるか?」
「ええ。問題なく元気で育ってるわよう」
「そんならよかった。そんじゃな~」
「またね~」
うん、今日も平和なようだ。
いいこった。
さて、次は芋の収穫だな。
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