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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第2章 戦国乱世!!
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第9話 若狭

無能で名高い朝倉左衛門督義景が目の前にいる。まあ、印象といえば、人の良さそうな中年。まあ、どこにでもいそうな顔だ。


「これは。義昭様。ご無事でございましたか?して当家に如何な用向きで?」


義景が、問い掛ける。義昭公が、打ち合わせどおりに


「うむ。単刀直入に申す。朝倉は上洛して、余を将軍にしてほしい」


「いや、しかし、われらは一向衆議が背後におり、遠征は…」


光秀の予想通り、上洛を渋っている。よし。


「無理か…なら、左衛門督。若狭だけならどうじゃ?」


「若狭でございますか?しかしあそこには正当の守護、武田義統殿がおられるのでは?」


「そうじゃ。しかしあのようなもの無関係じゃ。

それに余も出陣する。名文などなどいくらでもなろう?」


「左様ですな…」


義景は悩んでいる。たしかに若狭武田は名族だから攻めれなかったが、義昭公がでるなら別だ。

勢力拡大を労せずして、朝倉はできる。これには飛び付くはずだ。


「わかりもうした。すぐに支度いたしましょう。」


ひ、ひっかかったー。おれは吹き出しそうになるのをこらえた。


「さすが左衛門督じゃ。礼を言うぞ。」


「いやいや、公方に忠勤をつくすのは当然でございます。」


へっ。若狭GETで受かれているくせによぉー。ま、その若狭もおれらのものになるんだけどね。


出陣だ。朝倉勢は八千。おれも、初めて鎧兜をつけるんだが、普通なんだよな。銀色の鎧に、三日月の前たての兜。それに無銘の太刀に、脇差。テンプレじゃねえかよ。


この若狭平定軍の名目上の総大将は、義昭公だ。まあ、実質上の総大将は、義景…ではなく、筆頭家老の景鏡。筆頭家老でありながら、史実では義景を最後に裏切ったんだよな…こいつ


おれは自信満々な顔をしている景鏡にむかって、ふん、と鼻をならした。


ふと、横を見ると、佑光が不機嫌そうな顔をしている。


「どうした?佑光?」


佑光がむすっとした顔で言う。


「戦だというのに、自前の兵がいないとはな…」


「それも今日までだ。若狭が手に入れば兵士も手に入る。」


おれは、ガッツポーズをする。


「なんだ?それは?まあ、お主が変人なのは元からしっていたがな。ハッハッハ。」


そう言って去り行く佑光の背中におれは蹴りをかましてやった。



若狭に入った若狭を足利に献上する軍…いや、若狭平定軍は少しの小競り合いはあったが、すぐに武田舘を包囲した。まあ、この小競り合いで、慶次が兜首をあげた。どういうことだよ…すげえわ。


「上様、武田は援軍のあてもありません。そろそろ使者をおくるべきかと。」


幽斎さんの進言に光秀が頷く。


「上様。それがしも、細川殿に賛成でございまする。」


義昭公は細川殿を使者として武田に書を送った。

内容は


一、武田一族は一乗谷に移り住むこと

一、若狭守護職を足利家に返上すること

一、武田一族の蔵入れ地(直轄領)は、足利家のものとする。

以上が守られれば武田家臣団の領地は足利家が安堵する。


みての通り、これで守護職も、若狭も足利のものだ。


幽斎さんは、使者に赴き、みごと武田にこの条件を呑ませた。



「いやあ、こうもうまくいくとはまさに上様のご威光かと。」


景鏡は、陣中で上様をヨイショしている。


「世辞はいい。ところで景鏡。恩賞はそなたが左衛門督に伝えてくれぬか?」


「はっ。して?」


「うむ。朝倉左衛門督義景。加賀の守護職とする。」


「加賀の?では若狭はだれが?」


景鏡は、爛々と目を輝かしている。

…こいつ、まさか自分がもらえると思っているんじゃないのか?だとしたら…


ただの勘違い馬鹿野郎じゃねえか。


そして、義昭公が口を開く。


「若狭は、足利のものじゃ。武田の家臣団も幕臣とする。」


景鏡は、口を開けてポカンとしている。多分おれはこの馬鹿面を忘れることはできないだろう。だって、めっちゃおもしろいし


「え…そ、それはどういう…?」


馬鹿鏡はまだ状況がわかっていない。そこで、光秀が前に進み、景鏡の肩に手を置いた。


「加賀は朝倉殿が切り取られよ。わが幕府は若狭を支配し、義栄を駆逐する所存。わかったら越前に帰られよ。われらはこのまま若狭に残ります故」


「おのれい…明智とやら。ただですむと思っておるか…」


景鏡が刀に手をかけたその時、


「うちの仲間になにしやがる…?」


慶次が槍を馬鹿鏡につきつけた。


「くっ…、われらは越前に帰る!」


おれは、その声を聞くと景鏡の馬の横にいった。

景鏡が馬に乗ったその瞬間、おれは思いっきり馬の尻をたたいた。馬は全速力でかけだし、景鏡は

わあ!とかいう声をあげているし、馬も何人かの雑兵を蹴散らしていった。


「これで、領地が手にはいった。礼を言うぞ。」


「上様。次は丹後をとりましょう。そのための準備をしておきます。」


光秀が、頭を下げる。


「室町は終わるべきだ。だがそれは武家の棟梁らしく終わらねばならん。」


義昭公が呟く。


将軍家が領土をもつ。史実にはないことだ。だから、こっからおれの知らない戦国にいくのだろう。何とかして生きないとな…おれは決意を新たにした。

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