第4話 想像通りだよ
明智光秀…へ?この人が?たしか明智光秀って教養あふれる常識人じゃなかったっけ?それで革新的な信長と対立して本能寺の変を起こしたんだろ?それがこの奇人?いや、たしかに礼儀は正しいけどさ。
おれのこんな戸惑いをよそに、光秀はすっと指を向けた。
「あそこに野うさぎがおりまする。」
「ええ。」
30メートルぐらい先には、たしかに野うさぎがいた。
「あれを撃ってごらんに差し上げましょう。」
「バカな!」
佑光が声をあげた。おれもびっくりした。
「あのように遠く、そして動き回るものを!?」
「左様。」
「無理だっ。」
おれは思わず声に力が入ってしまう。
「フハハッ。その声が気持ちいいのです」
光秀はにやりと銃を構えながらうすら笑った。
おれは思わずその不気味さに後ずさりしてしまった。
「ご覧あれ」
パンッと乾いた音が響き、それとほぼ同時に野うさぎは、頭から赤黒い血をどくどく出しながら倒れた。
「いかがでありますかな?」
「す…素晴らしき腕前。これなら上様も…お喜びになられるでしょう」
おれは、光秀の笑みの前では、顔をひきつらせるしかなかった。
国友より京に帰ったところ、目の前より異様な出で立ちの、いや光秀よりすごいともいえなくもないのが歩いてきた。
女ものの着物に、キセル、袴は金色。頭にはまげではなく、かんざしをさし、顔は歌舞伎役者がするような隈取りをしている。
「まことにおもしろきものが京にはいますね。」
光秀が言う。
「いや、明智殿が言えることではありませぬよ。」
おれは思わずつっこみを入れる。
「おや。それがし、あのようなものではありませぬよ。そうでござろう?沼田殿?」
急にふられた佑光は
「ま、どっちもどっちですなあ」
なんて、答えて横をむきやがった。いや、この光秀はなんかやべえわ。
まあ、前の異様な男は、案の定、ごろつき4,
5人に絡まれている。
「あー。佑光、明智殿。助けにむかいましょうか」
「いいぞ。」
「フハハッ。わかりもうした。」
ってな感じで歩いていったら急に、そのごろつき共全員が倒れた。
「へ。ちょろいものだな。あ、これはこれは、助けようとしてくれてどうもすまねえなあ」
その男は、手をひらひらさせながら言う。
「全員、あなたが?」
「おうよ。」
「お強いな。失礼ながらお名前は?」
その男は、まってましたとばかりにざっと見栄をきり右手を前に、左手を後ろにそれぞれつきだして、
「天下一の傾家者、前田慶次郎とは我のことよ!」
あー。前田慶次ね。よくマンガでみる。光秀とはちがい、こっちは想像通りだよ。