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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第3章 元亀争乱!!
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第22話 安威川の戦い

金ヶ崎でおれたち朝倉討伐軍が敗北してからしてから、5日たった。


荒木が速攻をしてきたら、やばかったが荒木村重は茨木に腰を据えている。


「殿、沼田殿、前田殿、高山殿が帰還して参りました。」


長盛が報告してきたので、おれは城門まで迎えにいく。


「無事だったか!!」


「ああ、おれらはほとんど損害はねえ。が、その分殿が……」


佑光が説明する。それを聞いておれは絶句した。


殿3千のうち、無事京まで戻れたのは242人。のこりは討ち死にするか、逃亡したらしい。

だが、殿の大将の秀吉、光秀、可成は無事。


全員ふらつきながら、帰っていったと言う。


「とにかく、もどってよかった。お前ら、聞いてくれ。荒木信濃守村重が謀反を起こした」


「なに!」


3人とも驚いている。おれはその3人に説明した。

しかし、村重が押し寄せてくるまえに本軍がもどってきてよかった。


【元亀元年 荒木信濃守村重】


「ええい、九衛門はまだ首を縦にふらんのか!?」


「はっ」


わしは、九衛門から寄越された手紙を地面に放り投げる。


わしは爪を噛む。その様子をみていたわしの家臣が


「池田様はご自身のご出馬をおっしゃっているのですか?」


「ああ」


わしは、池田九衛門のあのバカ面を思いだし、ひとり、苦い顔をしていた。


次の高槻奪取には、わしと従兄弟の中川瀬兵衛でおこなうつもりだったが、九衛門が


「わしもでる」


など言い出した。冗談ではない。高槻奪取も、次に行う伊丹攻めもすべてわしが主導でおこない

恩賞としてこれらをわしのものとし最後に、九衛門を追放し織田家に臣従するつもりであるのに、あのバカがでてくれば……


あのバカを立てなければならない……


「ほかの家老どもも九衛門の出馬には賛成であろうな」


「はっ」


わしもふくめて池田家の家老は21人。そのなかで抜きん出ているのは、茨城を抑えたわしじゃ。だが、池田城の家老をまとめるために従兄弟のの瀬兵衛をおいたと言うのに……


「ふん。わしが池田城にいこう」


「殿がですか」


「ああ」


池田家の兵の大半をにぎるわしじゃ。わしがでれば家中のものどもも黙らなくてはならないであろう。


【元亀元年 朝倉左衛門督義景】


浅井殿が、信長の背後をついた。しかし、この好機をわれらは逃した。


「聞けば、上総介は落武者のような有り様だったと聞きまする!わっはっは!」


目の前で、景鏡が大笑いしている。


信長を討ち取らないと意味がないということすらこいつはわからぬのか……


わしは、腹が立ったので、こいつを下がらし、景近を呼んだ。


「景近、やはりわしがでるべきであったか」


「……そのように思えます」


はっきりと申してくれる景近だ。


「ふむう。朝倉当主の座を狙うやつのことだ。もっと働くと思ったがな……」


わしはあごに手をやりふうと唸った。


「上総介は、若狭に佐久間と丹羽の両氏を配しました」


「若狭をとるのは、能わぬな……」


おそらく、上総介は若狭からここ越前へ朝倉単体を狙うであろう。


「野戦しかないか……」


わしの呟きに景近は、反応する。


「御意。加賀には一向衆、若狭には大兵とあっては籠城策は意味をなし得ませぬ」


そう言って、景近は平伏する。


「信長の首、獲らねばな」


そうなのだ。信長の首さえとれば織田家は崩壊する。さすれば越前に安寧が訪れる。


「そう言えば、景近、主の妹……名はなんと申したか」


「さよにございますが……なにか」


景近は不思議そうな顔をしている。


「いや、縁談も決めなければなと思っての」


「ありがたきしあわせ。さよもきっとよろこびまする」


わしは笑った。そう、このような日々が長く長く続いていってほしいのだ。


【元亀元年

山田大隅守信勝】


おれは、城を失ってしまった茨木左衛門尉重親殿を迎えた。


茨木殿は苦渋の面持ちだ。


「うっ……山田殿、それがしのようなものを迎えてくださりありがとうございます」


といって茨木殿は頭を畳にすりつけるもんだからおれは慌てた。


「いいんですよ!そんなこと。茨木城を奪還するため軍議をいたしましょう」


「ありがたし……」


といって、茨木殿が泣いて、それをみていた右近ももらい泣きしてやがる。おれはため息をついた。


「策だが、半渡の戦いはわかるな?」


おれの言葉に、慶次以外うなずく。


「んだ?はんとって?」


「ああ、慶次、半渡の戦いというのは……」


軍学マニアの佑光が説明する。まあ、半渡の戦いっていうのは、川をわたりながら戦うことだ。

孫子がいうには、もっともやってはならないものらしい。


「これをやらせる。安威川より手前に陣をはり、敵が川からでてきたところを鉄砲でうつ。んで、敵が退却するところを、おれらが追撃」


「まあ、普通だな」


佑光が呟く。


「しかし、鉄砲というのは、発射するまでに時間がかかるものと聞きまするが」


そうか。茨木殿は三段打ちのことをしらないんだ。おれは説明する。すると、茨木殿はもう腰をぬかすくらいに驚いていた。


「では、出陣いたそう!すまないが、茨木殿、おれの下知に従ってもらってよろしいですか?」


「無論でござる」


鉄砲隊2百は佑光にこれとこの鉄砲隊を援助するために百、合計3百を預け、茨木殿の家臣団3百は右翼、慶次に2百を預け、左翼、右近に2百を預け、本陣の右翼、長盛に百を預け、本陣左翼、最後におれは4百を率い本陣。この二段構え。計千5百。


おれらは安威川に陣を貼った。


池田軍は、みると、荒木信濃守村重が総代将で、

これに池田城からきた中川瀬兵衛清秀が参戦している。


荒木軍、みたところ千5百、中川軍、みたところ千。

計2千5百。


数では負けてるが、こっちには鉄砲がある。


それにここで村重に勝たなければ未来はない。


おまえに勝たせるわけにはいかないんだよ。生きるために。


おれは村重の陣を睨んだ。


「報告いたします!それがし沼田隊の使い番!

敵、川をわたり始めました!」


「よし、鉄砲を放つ頃合いは佑光に一任する!」


「御意!」


はじまる。歴史を変えるんだ。このおれがこの手で。


この戦いは安威川の戦いとでもよばれるんじゃないか……

おれはにっと笑った。


「鉄砲隊、うてーー!」


佑光の声が響くのを聞いた。

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