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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第2章 戦国乱世!!
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第15話 名物クラッシュ

ついにおれたちは、上洛を果たした。


義昭公と信長が今日、面会する。

義昭公は信長が天下人にふさわしいのかを見るつもりだ。

…信長を天下人にふさわしくないと、義昭公が判断したらどうするんだろう?正史通りに信長包囲網か?その場合、おれはどちらにつくべきなのか。


織田方、と答えるのが普通なのかもしれないが、足利家には兵5千が動かせる。 各地の大名と連携すれば信長の首をとれるかもしれない。


あと、なによりもおれは上様に拾ってもらったご恩もある。


…ま、義昭公次第か。


おれは寝ることにした。


【永禄11年 足利義昭】


わしはここ足利館において一人で上総介を待っておった。兵部は、ついて参りましょうか?などと言っておったがわしは断った。


二人きりで話し、そして見極めるのだ。織田上総介信長の器量を。


ふすまががらっと空き、上総介が入ってきた。真っ赤な直垂をつけている。堂々たる着装だ。


「将軍任官まで、もう少しにございます。」


上総介がその場で平伏する。


「よい。今日はそなたに問いたいのだ。」


信長は、無言で上体を起こした。


「なぜ、天下を?」


「とおい昔、尾張下四郡のころに約束したのでございます。」


「ほう。ではどのような世をつくるのじゃ」


「日ノ本のすべての座、関所を廃止いたしまする。」


わしはじっと上総介を見詰める。


「絢爛豪華なる世。さすれば、人の心に余裕が生まれましょう。」


わしは信長の言葉の続きをまった。


「余裕さえ生まれれば人を疑うこともない。

われが作りたき世とは、大事な人を疑うことなき世の中だ。」


「そのためには」


上総介が、きっとわしを見据える。


「邪魔立ていたすものは、だれであろうと切る。天皇でも将軍でも、神でも。」


わしは、笑い声をあげた。


「大事な人を疑うことなき世の中、か。いいことじゃ。天下はお主に任せる。いつの日かそのような世をつくるまで死なぬように。」


「無論。」


信長は当然だ、という風な顔をしている。


わしは退出した。


【永禄11年

山田太郎左衛門信勝】


「おい、大将。」


慶次が訪ねてきていた。おれは起きる。


「なんだ?」


「松永の腐れ野郎はいつ殺せる?」


おれは、はあ、とおれはため息をつく。

「おれだって、いや、だれだって殺したい、が松永が降伏するなら、手出しはできない。」


おれだって松永弾正をミンチにしたい。だがあの野郎はこの期に及んで信長に逆らわないだろう。


「つまらんことだ」


そう言って帰る慶次の背中をみるしかなかった。



ついに、義昭公が将軍に任官された。淡路公方は三好の本貫阿波に逃げ込んだらしい。

おれたち幕臣や、諸大名らはこの義昭公主催の宴に参加するよう求められている。つまりこれに参加しないやつらは討伐できるのだ。


宴の席にいたのは、おれたちはもちろん、織田上総介信長、徳川三河守家康、浅井備前守長政、摂津の豪族、池田右衛門勝正だ。

…松永がいねえ。


三好一門がいないのは、当たり前だが、松永までもいないとは。


三好と組んで一戦やるつもりか?バカめ。


おれが見ると、佑光も慶次も幽斎さんも京都さんも和田さんも一宮さんも光秀もニート一色もうれしそうだった。


「みなにもうしわたしておく。」


今日の主役、義昭公だ。


「わしが、このまま上総介が領地を増やしたあと、わしは上総介の息子を猶子にして将軍職を譲るつもりだ。みなも協力してくれ。」


信長は、義昭公より2歳上だから、猶子にできない。


…そうか、信長を認めたんだな。


おれは口を真一文字に結ぶ義昭公に深く礼をした。おれがジーンとしてるところいきなりふすまが開いた。


「遅れて申し訳ござらん。」


つり上がった目に、頬には十字の傷。頭髪は少ない。


間違いない。くそ野郎、松永弾正忠久秀だ。


「上様におかれましては、将軍任官大慶至極。我らが三好より奪取した勝龍寺を差し上げます。こたびの上洛を果たされた織田殿には、これを」


紫の風呂敷を松永は出し、それをバッとあけた。


「天下三茄子のひとつ、九十九茄子にございます。どうぞ!お納めを!」


それをみたほとんどの人間がおおっと驚嘆している。一国に相当すると言われている茶器だ。差し出した松永はにやつき、上目遣いで信長をみている。が、どこも卑屈ではなく逆に凄味さえあった。


「うむ。頂戴しよう。」


信長は軽く頷いた。


「上様、織田様、松永殿にわが山田家代々に伝わる余興をお見せしてもかまいませぬか?」


おれはそれをみて、思い付いたのだ。


「うむ。いいぞ。」


義昭公が答える。


「織田殿、失礼ながらその九十九茄子をお貸しくださいませぬか?」


「構わぬ。」


おれは、九十九茄子を手に取り立ち上がる。


おれはそれを高く天井へ投げて、思いっきり足をあげて力いっぱいふみつぶした。


足は九十九茄子の破片を踏み、血が大量にでている。九十九茄子は粉々だ。


「これぞ、名物クラッシュでございます。」


静粛が場を包んだ後、ようやく松永クソ弾正が叫んだ。


「きっ…きっ!貴様ああああ!天下三茄子を!なにをしておるかぁぁあああああぁか!」


汗だくのクソは立ち上がり叫んでいる。


「よい。持ち主のわれがいいと言っているのだ。

さがれ、弾正。」


「く…ははー」


九十九茄子の持ち主になっていた信長の声にクソが引き下がる。


「山田。しかしこのようなことをした罰としてお主はそのまま宴に残れ。退席すれば切る。」


えー!こんな血まみれなのにかよ!出血多量で死ぬんじゃないか?


…ま、でもクソを虚仮にできたのだ。クソはおれをにらんでいる。おれはしっていたが、知らないふりをしてやった。

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