第14話 本番
お犬様をつれて、舞鶴に戻ったおれを出迎えた、佑光がひとこと。
「ありえない。」
…おい!いくらおれが冴えない顔してるからって!こんな美少女と結婚したからて、ありえないはありえないわ!
山田家、家臣、増田仁右衛門長盛の発言
「」
口をあんぐりとあけ、なにも発言せず。
…君たちが、おれをどう思っているのかようわかったよ。
慶次は、ヒャッハーと叫び、義昭公に光秀、幽斎さん、京極さん、一宮さん、お飾り一色、は、普通に祝ってくれた。
で、おれはお犬様に歌を送贈った。
三千世界の烏を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい
お犬様はめっちゃよろこんでくれた。
え?高杉晋作?だれですかー?
◇
おれが信長と面会してから3日がたった。ついに信長、上洛へ軍を動かす。しかし、その発言が度肝をぬいた。
伊勢へ、柴田勝家を主将とする兵2万。
南近江には、信長率いる一万が出兵、これに浅井5千、徳川3千、足利家も5千を率いて参戦されたし。つまり、合計2万1千
二正面作戦だ。人材の宝庫たる織田家だからこそ可能なのだ。
義昭公はこれみて、すぐさま若狭、丹後に出兵命令を下した。
義昭公は、小浜にとどまる。
総大将は一色式部大夫義道、1千3百を率いる。もちろんお飾り。副将に細川兵部大夫藤孝千2百、軍師、明智十兵衛光秀、千、で、おれいつもどおり佑光、慶次がおれの組下で8百、京極長門守高吉、3百、和田伊賀守惟政4百。出陣のため、家をでるさいにお犬様がおれの手を握って
「ご武運を」
なんて、満面の笑みで言ってくれたから、おれは鼻血をだしてしまった。
…そのときの慌ててたお犬様、かわいかったなぁ…
◇
「おい。信勝、なににやけている?気持ち悪い」
いつものおれなら、こんな発言をした佑光をしばいて、とっくみあいになるが、軽く受け流した。
理由はお犬様がかわいくて、思い出して上の空だったでは、そう、断じて決してなく、おれが大将の自覚が目覚めているからなのだ。うん。
「殿、しっかり」
長盛がおれを肘でつつく。
「なんだい。長盛。おれは常にしっかろりとしているよ。」
「はいはい。」
長盛が、やれやれと首を振った。
「大将よ、ちゃんと働き場をくれるんだよな?」
「…織田様次第」
おれがこう短く呟くと慶次は、んだよとぼやいた。
◇
「太郎左、太郎左はおるか」
おれたちが南近江に布陣したとき、耳にしたのは、お飾りというか、ニート一色の声だった。
「なんでしょう?一色様?」
おれはこのニートがおれになんの用だよと思った。
「織田殿に会いに行くが、そなたは織田殿の義弟。兵部とともについて参れ。」
「はっ。」
一色は、管領っていう肩書きのニートなので、命令には従わないといけない。
「よく来た。一色殿、細川殿…山田」
「なんかおれだけ扱いひどくないですかね?」
「山田。貴様はそういえば、おれの義弟だ。おれのふたりの義弟を紹介してやろう。こちら、徳川三河守家康…竹千代だ。」
「よろしくお願い致す。山田殿。」
おっ!これが家康か!体は痩せてるけど、顔には肉が多いなー。あと、丸顔で目がでかい。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「そして、こちらが、市の旦那、浅井備前守長政だ。」
「よろしく、山田殿。」
金ヶ崎で信長を、義兄を正史では裏切る長政か…細身のイケメンだ。金の前立てが似合ってる。
「お願いいたしまする」
おれがこう言うと長政はニコリと笑った。
「殿!殿!」
慌ただしく入って来たのは、木下藤吉郎だ。
「どうした?ネズミ?」
「南近江の六角めは 和田山に兵を固めておりまする!今は葺作<みつくり>城は手薄!軍義前なれども急ぎ攻めるべきかと!」
「うむ。では、ネズミ、それに山田、ふたりで葺作城を落とせ」
「ええ!?おれ!」
「二度言わせるな。天下のためだ。よろしいな?一色殿。」
「ええ。」
ニートめ!信長に迎合しやがって!
「いやー!山田殿と一緒とは心強いですなー!ではいきましょう!」
上機嫌の秀吉についていくしかなかった。
結論をいえば、葺作城は一日でおちた。まさか敵は攻めてくると思っていなかったので、簡単に大手門を叩き割り、城内に乱入。慶次が槍をふりまわし走ったもののすでに大勢は決していて、慶次はチクショーーと雄叫びをあげていた。一番槍も大将首も木下隊だ。山田隊、挙げた首は、雑兵首のみ。く、悔しくなんかねえ!
で、六角は仰天。急使を派遣し、観音寺を退去した。で、同時に伊勢北畠が柴田の猛攻によって臣従したと伝わった。
「義昭公をおよびいたせ。」
「はっ」
「山田。」
「なんでございますか?」
「これからが本番ぞ。天下へのな。」
信長はじっと西を見詰めていた。




