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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第2章 戦国乱世!!
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第10話 未成年なんだけど…

義昭公は武田館に入り、そこで旧武田家臣団の挨拶を受けている。義昭公は若狭の国主に認められたようだ。


しかし、そこに一人、招かざる客がやってきた。朝倉家奏者、鳥居兵庫助景近だ。


「主君、左衛門督の使いで参りました。若狭は上様の蔵入り地として存分になされよ、とのこと。一切、朝倉は若狭には干渉いたしませぬ。」


鳥居は、鋭い目を義昭公にむける。


「左衛門督には、骨折り感謝すると伝えてくれ」


「かしこまりました。」


鳥居は下がっていった。


「しかし、驚きましたな。朝倉がなにもしてこぬとは。」


おれが、言うと佑光がわらいだした。


「なんだ?佑光?」


おれが、不機嫌そうに聞いてみる。


「いや。若狭に一切干渉せぬということは、もし足利が三好に攻められても援軍を出さないということだ。」


「あっ…」


おれは気づいた。朝倉は三好と事を構える気はないのだ。


「ま、三好が若狭まで攻めるなどありえぬと思うがな。」


それは同感だ。上様弑逆後、京に14代義栄を入れた三好だが、実質京を支配しているのは、松永だ。それに不満をもった三好三人衆は、義栄を淡路に連れ去り、松永討伐令をだしたそうだ。

この時期に仲間割れとは馬鹿な連中としか思えない。


「そうです。馬鹿な連中ですな。」


光秀が不敵に笑う。おれはぎょっとした。こいつには読心術があるのかと。


「では、そのうちにわれらは丹後を奪い取りましょうぞ。」


「うむ。しかし光秀どうやるのじゃ?」


「はい。まず丹後の海賊、奈佐日本助を味方にいたします。そして奈佐をつかい丹後を荒らし、奈佐を討伐しにきた、丹後の国主、一色をわれらが軍をだして、叩くのです。」


なんというはた迷惑な策だ…おれは呆れた。


「うむ。聞いていたであろう。太郎左。奈佐を幕臣として参れ」


「えっ!おれですか!」


「そうじゃ。荒くれものをつかうのは、荒くれ者がよいだろう。あ、そして慶次もいけ。この二人じゃなにか無礼があったら、困るから、佑光もいけ!」


おれって慶次と一緒の部類かよ…どういうことだ


おれは若干、落胆した。



「おーい。佑光ー」


「信勝。なんだ?」


佑光が、馬鹿をみるような目つきでおれを見てきた。


「海賊ってどうやって仲間にすんのー?」


「しるか」


佑光が一言で切り捨てやがった。そこに慶次が


「その奈佐ってやつをぼこぼこにしたらどうだろうか?」


「冗談いうなよー」


「いや、いたって本気だが?」


おれは、慶次をさっきの佑光みたいに馬鹿をみるような目つきで見てやった。


丹後舞鶴という港町は西国有数の港町になれる可能性がある。だがなれないのはなぜか。海賊の存在だ。


だから、この海賊を無害な存在にすればこの舞鶴が栄え、そしてここ丹後を領するであろう足利家も栄える。つまりおれだって栄えるのだ。


海賊は舞鶴の真ん中に泊めてある安宅船に乗り込んでいる。陸に住まず、船に住むとは海賊らしいな。


「よっしゃ!腕のみせどころだぜ!」


慶次が、腕をまくりぐるぐる回している。


「慶次!頼むから騒ぎは起こすなよ!」


おれは大声を出す。


「信勝。」


「なんだ?」


「なにか考えはあるのか?」


「まあ、あるっちゃあるが。」


「それじゃ、お主に任せるわ」


佑光がこう言った。任せると。え?


「ん?なにか言わんのか」


「おれはなにも思い付かなかったものでなあ」


佑光は、頬を照れ隠しにかいている。


「あ?へえ、足利の?ま、入れよ」


安宅船の前にいた門番風の男に手紙を渡した。


「で、奈佐殿はお会いくださるか?」


「ああ。お頭がいいってよ。」


おれたち三人は、奥に入っていった。


「ガハハハハ!山田太郎左衛門か!一万石の首か!」


一段高いところに座っているのが奈左日本助。かくばっている顔に、手拭いを頭にまき上半身が裸で、首には大きい真珠のネックレスをまいている。


「奈左殿。その真珠、お似合いですね。」


おれはひとこと誉めてやった。


「はは!そうであろう!こりゃ琉球からのやつで、ねっくれすつうもんだって?ガハハハハ!」


なんか、慶次も釣られてガハハハハって笑ってるし、だれかここから帰らしてくれ…


佑光は、開いた口がふさがっていないし…


「奈左殿。上様は丹後の一色を攻めるつもりだ。で、あるからあんたは上様に従い、丹後の沿岸を襲ってもらいたい。」


「で、そうやったらなんかおれにとっていいことあるん?」


日本助がにやつきながら聞いてくる。


「うん。上様はここ舞鶴で商人に交易をまかせるみたいだからね。そいつらの護衛を君らに任せる。うん、護衛費は収益の5分でいいよ。」


「五分だあ?せめて1割もらわなきゃな。」


「じゃあ、8部は?」


「いいぜ。」


8分とは、8パーセントだ。


「へへ。一色の殿様はこんなことやらんからなあ」


「まて。てめえら海で関所もうけてるな?あれはなくせ」


「あ?」


日本助は、きっとおれをにらんだ。


「おのれら。おれら丹後海賊、全員飢え死にせえっていっとんのかい?」


日本助はおれの胸ぐらをつかんだ。


「おい…!」


佑光が日本助を睨む。慶次は今にも殴りかかる勢いだ。


「おちつけ。関所なくなれば、ここ舞鶴にはもっと船が増える。そうすりゃてめえら護衛費で贅沢できる。それに…日本助。てめえら海賊って自由だろ?」


「あ?そうだ。てめえら侍とは違ってな」


「うん。じゃあなんで海を自由にしない?」


日本助が、手を離した。


「海を自由に、なおかつ儲ける。いいんじゃない?これ」


日本助は、黙った。が、それは一瞬だった。


「ガッハハハハ!いいぜ!ただし護衛費は1割5分だ!それが条件!そうすれば関所をなくしてやる!」


「よっしゃあ!!!いいぜええー!」


おれは日本助のテンションにあわせてやった。


「よっしゃ!そうと決まれば今から宴会じゃ!」


えっ…おれ未成年なんだけどー。えー


「飲むぞ!ガッハハハハ!」


海賊共とおれたちの大宴会。何盃飲まされたか、何回厠で吐いたかはおぼえていない。てかいつのまにやら朝日があがっていた。なんだ?これ?

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