第1話 よくあるタイムスリップ
どうも。泰兵衛です。こっちは無茶苦茶なんで、
まあ、軽い気持ちでお楽しみください。
ご意見、ご感想まってますー!
人は、時々、予想だにしていないことに巻き込まれる。おれは小説のようなセリフを思い出すような状況に巻き込まれている。
自己紹介をしておこう。おれの名前は山田太郎。
平凡な名前。ただの男子高校生。公立高校に通っており、部活は剣道部。一応剣道2段。まあ小学校から剣道はやっている。あと得意科目は日本史、とくに戦国時代には詳しい。 これぐらいの人間だ。ああ。
で、おれはいま薄暗いスラム街にまよいこんでいる。
まったく見当がつかないのだが。
そう、試合、新人戦のかえりおれの乗っていた電車が衝突事故にあった。そしておれはこのスラム街にいる。死後の世界か?と思ったが、おれは生きているようだ。頬をつねったら痛かったし。
この街はひどい。大通りを歩いているが、脇の壁はひびがいき、通りに倒れている人はみな一様に痩せ細り、さらに着物をきているものもいる。
おれの足下にたおれこんでいる男がうっと言ったかと思えば、胃液を吐き出している。
ともかく、ここどこだよ…
おれは、防具と竹刀、それに木刀を担いでふらふらとあるきだし、途中、胃液を踏みにじった。
「そこの異なる身なりのもの」
おれは声が聞こえる方を振り返った。あれ?おれか?おれは思い、人差し指で顔を指した。
すると、声をかけた男はうんうんと頷いた。
その男のもとへと言った。男は身長160台?で40代
ぐらい。身長175のおれにとっては小さく見える。
身なりは上等そうな着物を着ていて、おれは上から下に見ていると、腰に目がいっところおれはそこで目を疑った。
刀だ。そう。腰に。
なんだ?江戸か?ここ。少なくとも現代ではないな。
「お主、なにまじまじみておる!無礼であるぞ!」
男の横の男がわめいた。
「こら、佑光。よさぬか。」
「は。」
佑光と呼ばれた男は一歩後ろに下がった。
「すまぬな。わしは細川与一郎と申すもの。みたところ南蛮の者ではないようだが……お主は?」
細川……与一郎……細川幽斎<ほそかわゆうさい>か。
勝ち馬を見極め、戦国を生き抜いた男。それがいま目の前にいる。
しかしおれはどう名乗るべきか……いきなり未来からきました。なんていっても信用されるはずがない。
「拙者は、山田太郎左衛門信勝<やまだたろうざえもんのぶかつ>と申すものです。」
そう。おれはすべて偽装することにした。信勝っていうのも全部おもいつきだ。
「ほう。山田殿か……ご出自は?」
「はっ。伊勢の地侍でございましたが、応仁の乱により所領を失い、恥ずかしながらこの有り様。」
間髪入れず答えることができた。
それにしてもよく回る口だ。おれは自分で自分でわからなくなる。
「応仁の乱…ああ、先の大乱か。それにしても山田殿。刀は?」
げっ。しまった。つっこまれた。だがここで引けねえわ。
「い、いやあ、拙者、腕がたつ、ゆ、ゆえにこの木刀のみで十分でございます~」
もうかみまくりだ。さっきのおれはどうしたんだよ。
「ほう。ではそれがしと手合わせ願いませぬか?
佑光。木刀を。」
「はっ」
ええー!幽斎といえば新当の達人。それと手合わせかよ
「ええ、き、ききなされ!」
もう後には引けない。引きたいが。本当に。
「参る!」
幽斎さんは、グッと踏み込んで打ってきた。
くるか!!
おれはその動きに合わせて小手を狙う。
出小手。
だが、幽斎さんはそれをさばくと、木刀をつきだした。
ツキか!
おれはのけ反る。幽斎さんの木刀ののびが終わる。
いまだ!
おれは、唇を噛む。
おれは跳躍し、面をうちにいく。
幽斎さんの面まであともう少し……
だが、幽斎さんは、すぐに木刀をもどし、おれの木刀を巻き上げた。
「あっ!」
おれは木刀を巻き上げられ地面に落とした。
そして幽斎さんの木刀がおれの頭を打ち付けた。
「ぐわっ!!」
頭に星が舞った気がする。いや、舞った。目がチカチカする。
「気に入ったぞ。太郎左。どうじゃ?仕えぬか?」
「仕えるって、細川殿にですか?」
「いや。わしではない。上様にだ。」
佑光ってやつが口をあんぐりとしている。
「上……様……?」
驚きすぎて、上と様でわけてしまったよ。
「大樹公、足利義輝公にだ。」
おれは、このままいっても身寄りなどない。そして、どうやろおれは戦国にタイムスリップしたようでもある。ついていくだけしかない。それに幕臣だ。
よし、幕臣ならうまくやれば…うまくやれる!
おれはその場でひざまづいた。
なんにせよ、これでおれに寝る場所と食い物の心配はしなくてもいい。なによりおれはこの後の戦国の成り行きをしっている。生き残れる。このアドバンテージで。
剣道やっててよかったです。はい。
空は、おれの数奇なるこの状況を嘲笑うかのように青く美しかった。