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作戦会議


 隊長の言葉は衝撃的なものだった。

「それでは、今回の作戦を発表する。まず、初めに言っておくが・・・イツキ、今回の悪魔退治には

キミ一人で行ってもらう事になる」

「えっ!? 俺・・・・・・一人?」

 突然の言葉に、ジュリが当然ともいえる講義をする。

「・・・! なんで!? なんでイツキ一人なのよ!」

「安心しろ。一人で行くが、一人じゃない」

「どういう意味だ?」

 隊長の言葉はイツキにはまったく理解ができなかった。だが、ジュリは驚きの表情で隊長を見て

声をあげた。

「・・・・・・まさか!」

「そうだ、ビコームを使う」

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら隊長は答えた。

「ムリよ!」

「ムリじゃないさ、イツキはブレインタイプだ」

「だからって・・・・・・無謀むぼうすぎるわ!」

「だから言っただろう。これは賭けだ」

「そんな―――」

「あの~・・・・・・」

 話しについていけないイツキは二人の話に割り込んだ。

「さっきから一体なにを話してるのかさっぱりなんだけど・・・・・・」

「そうだったな、すまない。まずはブレインタイプの事から説明しようか」

 そう言うと隊長はジュリと言い合うのをやめ、最初にイツキに記入させた紙を取り出した。

「あ、それって心理テストの・・・・・・」

 イツキの言葉に、隊長は首を横に振った。

「これは心理テストなんかではない。これは魔術者のタイプを調べるテストだ」

「魔術者のタイプ!?」

「ああ、そうだ。魔術者には10種類のタイプがいる。それぞれのタイプで、魔術者同士の相性が

決まる」

「それで、俺はブレンド・・・・・・?」

「違う、ブレインタイプだ。ブレインタイプは理知的で公平性を重視する人に多いタイプだな」

 そこまで黙って聞いていたジュリが口をはさんだ。

「マジメで冗談の通じないバカってことね」

「なんでそうなるんだよ・・・・・・」

(いちいち一言おおいヤツだ)

 イツキは少し気になったことを聞いてみた。

「ジュリもブレインタイプなのか?」

 隊長は少し嬉しそうに笑うと、

「違う。ジュリはパワータイプだ」

「パワータイプ?」

(なんだか強そうだな・・・・・・) 

「ああ、パワータイプの特徴は、戦いや競争などの人と争うパワーに優れていたり、格闘家などに

多いというデータが出ているな」

 隊長の言葉を聞いてまんざらでもなさそうに、うんうんとうなずいている。そんなジュリを見て

ジンがイツキにボソッと言った。

「それと、分かりやすいタイプでもある」

「・・・・・・当たってる」

「ジン! 今なにか言った?」

「・・・・・・そんでもって地獄耳」

「・・・・・・当たってる」

「ちょっと! 今のはわざと聞こえるように言ったでしょ!!」

「まぁまぁ」

 イツキ達に飛び掛ろうとするジュリをリサがなだめると、隊長がため息を付きながら話を戻した。

「キミがブレインタイプで良かったよ」

「え?」

 隊長の意味深な言葉がイツキは気になった。

「というのも、ブレインタイプはどのタイプとも相性がいいんだ。今回の悪魔退治をするには、こ

の相性が悪いとまず話しにならないからな」

 その言葉を聞いたジュリとジン、リサの顔までけわしくなった。

「さっき今回の悪魔退治には、キミ一人で行く事になると言ったな?」

「・・・・・・! ・・・・・・はい」

 その言葉で、イツキの心臓がドクンと跳ね上がる。

(あの悪魔を一人で倒せるのか・・・・・・? 一歩間違えれば―――――死)

 そんな不安が頭をよぎる。

「だが安心しろ。一人じゃない。ジュリがキミの中に入るからな」

「・・・・・・え?」

 さらっと理解不能な事を言い放った隊長は真剣な顔で続けた。

「ビコーム。魔術者が魔術者の体に入ることで二倍の力を使うことができる技だ」

「そんなことが・・・・・・」

(できるのか!? 俺に!?)

 そんなイツキの言いたいことがわかるかのように隊長は言った。

「できる。相性が良い魔術師同士なら可能だ。だが、本来なら魔術が二倍になる技も、ジュリの高

い魔力にキミの低い魔力で、力は二倍にならないだろう。それでも、今のジュリのケガを考えると

今回の作戦はジュリがキミの中に入り、キミの体で悪魔を戦ってもらう。これしかないんだ」

 まだピンとはこなかったが、どうやら一人じゃないらしい。魔術のことなんてわからないけど、

イツキの気持ちは変わらなかった。

「・・・・・・わかりました! 手伝うって言ったんだ、できることならなんでもする!」

「うむ・・・いい返事だ。助かるよ。それでは――――」

 隊長は腕時計をチラッと見ると、

「あと8時間後には悪魔退治をする。それまでキミの自由にしてくれ」

「え? ビコーム・・・だったっけ? その技の練習をしといた方がいいんじゃ・・・?」

「いや、ダメだ。ビコームは魔力を大きく使うんだ。悪魔退治をするまで魔力を温存しておいた方

がいい」

「ってことは・・・」

「ああ、ぶっつけ本番ってことになる。だから、悪魔退治をするまではゆっくりしていてくれ」

「・・・・・・だったら」

「ん?」

 イツキは少し考えて隊長に聞いた。

「実家に・・・母と妹に会いに行ってもいいですか?」

「・・・・・・ああ、もちろん構わない。いや、むしろそうした方がいいだろう」

 その隊長の言葉はそういう意味を指していた。もしかしたら命を落としかねない、と。

「今から7時間後、悪魔退治をする1時間前にはここに着くようにしてくれ。あと、コードBの事

は家族はもちろん誰にも言ってはいけない」

「・・・はい、わかりました。それじゃあ、7時間後に」

「ああ、この建物を出るとキミの知っている道に出るだろう」

「・・・?」

 イツキはコードBの本部を出て、隊長の言葉の意味を知った。

「マジかよ・・・・・・」

 そこは、4年間通い続けた仕事場。ジュリの家の目の前だった。

(誰もこんな所に世間を騒がすコードBの本部があるなんて思わないだろうな・・・)

 なんて事を思いながらイツキは自分の家に向かった。



 イツキは家の前に着くと、フーッと息を大きく吐いていつもより元気に家のドアを開けた。

「ただいま!」

「・・・・・・え? おにー!! どうしたの!?」

「また後から仕事に行かないといけないけど、少し休憩の時間を長く貰ったからモモとお母さんに

会いにきたんだよ」

「そうなんだー! わーい!」

 飛び跳ねて喜ぶモモの頭をなでて、イツキは母さんの寝室へと向かった。寝室のドアを開けると

母さんが驚いた顔でイツキを見た。

「あら、イツキ。どうしたの?」

「なんか長い休憩時間もらっちゃってさ、後からまた出勤するけど」

「そうなの・・・・・・」

「うん」

「おにー! モモとあそんでー!」

「うん、いいよ」

「わーい!」

 モモの気が済むまで遊んであげて、平日は作ってあげられないご飯をイツキが作ってあげ、4年

ぶりに平日のご飯を家族で食べた。時間も深夜になり、遊び疲れたモモは母さんの隣でスゥスゥと

寝息をたてていた。

(もう時間だな・・・・・・)

 イツキはモモを起こさないように小さな声で母さんに言った。

「じゃあ、・・・・・・もう行くよ」

「イツキ?」

「ん?」

「また、週末には会えるわよね?」

「・・・・・・え、なんで? 当たり前じゃん!」

「そう・・・・・・よね。おかしなこと聞いてごめんね。仕事のある平日に帰って来たことなんて今まで

一度もなかったし、今日のイツキはムリして明るくふるまっている気がして。なんだか・・・イツキが

急に居なくなったお父さんとダブって見えちゃってね・・・」

「母さん・・・・・・」

 イツキはギュッと手を握りしめると、笑顔で母さんに言った。

「大丈夫。俺はちゃんと帰ってくるよ」

「そうよね、引き止めて悪かったわね。気をつけて遅れないように行くのよ」

「うん、ありがとう。行ってきます」

 そしてイツキはコードBの本部へ向かった。

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