魔術者
隊長はデスクから紙とペンを取り出すとイツキに渡した。
「まずはイツキくん・・・・・・いや、今回の悪魔退治を終えるまで、君はコードBの一員だな。君と
私は隊長と部下だな。イツキ、この紙に書かれた質問に答えてくれ。どんな事にも正直に、だ」
その紙は、心理テストのような感じだった。
「え? 今はこんな事してる場合じゃないんじゃ・・・・・・?」
「なぁに、これは大事なことだ」
「はぁ・・・・・・」
――――五分後。
「できました」
「うむ」
イツキが記入し終えると、隊長は紙を取りまじまじと見て言った。
「ほぅ、ブレインタイプか!」
「ブレインタイプ・・・・・・?」
「へー。イツキ、ブレインタイプなんだ」
隊長の言葉を聞いたジュリは楽しそうだった。紙を見てうなずく隊長にイツキは聞いた。
「あの・・・これが悪魔退治と関係あるんですか?」
「関係おおありだ。この結果が、今回の作戦には重要なんだ。そうだな、順をおって説明しよ
う。悪魔を倒すのが我々コードBの仕事だと言ったな。悪魔を退治する時に使うのが・・・これだ」
「あっ、それは!」
隊長が取り出したのは、包帯でグルグルに巻かれた棒のような物だった。確か、悪魔はこの
刀を見て逃げ出した。
「そう、君も手にしたから分かると思うが・・・・・・これに触れると光の刃が出る」
「えっ、でも・・・・・・」
(どういう事なんだ?)
棒に触れているのに、隊長が持つ棒からは光の刃は出ていない。
「ああ。私が触れても刃は出ない。これは、魔術者にしか使えない」
「魔術者!?」
「そうだ。魔法を使う者、魔術者。我々はそう呼んでいる」
悪魔に魔法。漫画や小説に出てきそうな単語を平然と言い放つ隊長を、数時間前のイツキだった
ら笑っていただろう。だが実際に悪魔を目の当たりにしたイツキには笑えない。
「隊長は魔術者じゃないんですか?」
「ああ、魔術者は今ここに居るのはジュリだけだ。・・・それと、君もだな」
「俺が魔術者!? 俺は魔法なんか使えませんよ」
「君がこの棒を持った時、光の刃が出たのが君が魔術者という証拠だ。いやぁ、君が魔術者で本当
に良かった。でなければ、今ごろはあの悪魔の腹の中だ。フフッ」
(フフッ、じゃねーよ!)
イツキの気持ちを知ってか知らずか隊長はひとしきり笑うと真面目な顔をして話を続けた。
「コードBには、ジュリの他にも10人の魔術者がいる。だが、今は遠くに行っていて今回の悪魔
退治には間に合いそうにないんだ。ジン、二階堂達はどうなっている?」
「はい、さっき入った情報によると、最低でも12時間はかかるみたいだ」
「そうか。リサ、結界は後どのくらい持ちそうだ?」
「はい、もって・・・・・・あと10時間です」
「うむ・・・・・・やはり間に合わんな」
そう言うと、隊長は決心したようにイツキを見た。
「ジュリ! イツキ! これから10時間後に悪魔退治をするぞ!」
「りょーかい!」
「・・・・・・! はい!!」