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戦う資格

「・・・・・・うっ・・・・・・」

 光のまぶしさに顔をしかめ、イツキは手で光をさえぎった。気がつくと、イツキは見たこと

のない部屋のベットの上にいた。

「目が覚めたみたいですね。気分はどうですか?」

 イツキの隣には、見知らぬ少女が小さなイスに座っている。

「キミ・・・は・・・・・・?」 

「紹介がおくれましたね、私はリサといいます。そしてここは、コードBの本部です」

「コードBの本部!?」

 あっさりと言ったリサの言葉に、イツキは驚いた。でもそんな事より、

「そうだ・・・・・・! ジュリ、ジュリは・・・・・・! いっつつ!」

「ああ、ダメですよ! あんまり動くと、体にさわります。ジュリさんなら大丈夫ですから」

 イツキが動こうとするのをリサが止めた。自分の体に巻かれた包帯を見て、イツキはあの

化け物のことを思い出す。

「あの化け物は一体なんだったんだ・・・・・・?」

「・・・・・・詳しい事は、これから隊長が話してくれます」

「隊長?」

「はい。本当は安静にしていないといけないんですが、あなたが目を覚ましたらすぐにつれて

来るようにと隊長に言われています。今から隊長のいる部屋に行きましょう」

「あ、ああ」

 リサの誘導で、イツキは別の部屋へと案内された。イツキの居た部屋から数メートル離れた

場所にある部屋。そこのドアを開けると、聞こえてきたのは―――

「まだ私は戦えるわ!」

 いつもの元気なジュリの声。

「ジュリ!」

「イツキ・・・・・・!」

 イツキをかばって重症を負っていたはずのジュリが、何事も無かったかのように腰に手を置き

目の前の女性と喋っていた。

「ジュリ、もう大丈夫なの・・・・・・か・・・・・・?」

 イツキの言葉に返事をすることもなく、ジュリが無言でイツキにツカツカと近づいてくる。

(あれ、なんか顔が怒ってらっしゃる・・・?)

「だいたいなんであんな所にいたのか、説明しなさいよ!」

「あ、その、ケーキを買いに・・・・・・。「遅くなる」って言ったから・・・・・・」

 ジュリが化け物と戦った場所は、ジュリの一番好きなケーキが売っている街の近くだった。

ジュリはイツキがなぜあそこに居たのかをすぐに理解した。

「そ、それにしてもね! あんなところ二度と通るなって、私言ったわよね!!」

「悪かったよ・・・ごめん」

「ほんっと、しょうがないんだから!」

 そう言って、ジュリは顔をプイッと背けた。

「それで、夫婦喧嘩ふうふげんかはもういいか?」

 さっきまで、ジュリと話していた女性が少し笑いながら言った。

「そんなんじゃないわよ!」

「この人は・・・・・・?」

 イツキがジュリに聞くと、さっきまでジュリと話していた女性はイスから立ち上がり、イツキ

の前に行った。

「はじめまして、私はコードBの隊長をしているリーだ」

「はじめまして。俺は―――」

「藤原イツキくんだね、君のことはジュリから聞いている」

「はぁ・・・・・・」

 20代後半ほどに見えるリー隊長は綺麗な顔をしているのに、なぜかカッコ良く見えた。

「そしてあそこにいるのが」

 そう言ってリー隊長は、大きなモニターの前にでパソコンを使う男性を見た。その男性は

リー隊長の視線に気づいくと、パソコンを打ち込む手を止めてイツキの所へ来た。

「やあ、はじめまして・・・・・・いや、久しぶり。だな!」

「え?」

 ニコッと笑ってそう言う男性は、イツキには見覚えがなかった。

「なんだよ、俺のこと覚えてないのか?」

「あの、どこかで会いましたっけ・・・・・・?」

「ほら、俺だよ」

 そう言って男性はボサボサの髪をかきあげた。その顔をイツキは覚えていた。

「あ! もしかして、職業相談所のお兄さん!?」

「イエス! 覚えててくれたんだな、俺はジンっていうんだ。よろしくな」

 ジンの紹介が終わると、リー隊長はリサを見て、

「そして彼女がリサ。時間もないことだし、さっそく本題に入ろうか。イツキくん、今回キミ

のような一般人に危害を与えてしまったこと、本当にすまなかった」

 あいさつもそこそこに、隊長は頭を下げてきた。

「ってか、あの『化け物』はなんなんだ!?」

「そうだな、まずそこから説明しなくてはな。話しは長くなる、イツキくん座ってくれ」

 隊長の指示にしたがい、イツキはソファーに腰を下ろした。


 隊長が少し考えた後、口を開いた。

「あれはな、なんといえばいいのか・・・・・・例えると―――」

悪魔あくまよ」

「悪魔!?」

 隊長の言葉をさえぎって、ジュリが驚きの言葉をはなった。

「おいおいジュリ、そんなこと急に言われても信じられる訳ないだろ!?」 

「信じられないって言っても、真実をのべただけだわ」

「それにしても順序ってもんがだなー」

「イツキ!」

 ジュリはイツキを真っ直ぐに見つめると、

「私がウソを言ってると思う?」

 と聞いた。

「思わない」

 イツキは即答した。ジュリは、こんなウソをつくようなやつじゃない。ピュ~っとジンが

口笛を吹いた。

「ちゃかさないで!」

 ジンに怒鳴るジュリを見て、頭が痛いとでもいうようにこめかみを押さえてため息をつく

と、隊長は真剣な表情をしてイツキを見た。

「分かりやすくいうとな、あれは幽霊ゆうれいみたいなものだ」

「幽霊?」

「ああ、そうだ。あの化け物の姿を見える人もいれば、見えない人もいる。君は見える側の

人間という訳だ」

「あれが幽霊?」

「幽霊なんて生易しい物じゃないわ!」

「まあ待てジュリ」

 興奮するジュリをおさえて隊長は続ける。

「そうだ、幽霊じゃない。『やつら』は人間の弱みに付け込んで、その体をのっとる」

「やつら?」

「ああ。私達は『やつら』のことを『悪魔』と呼んでいる」

「あく・・・ま・・・」

 悪魔が存在するなんて、普通じゃ信じられない。だけど、イツキは確かに見た。あの『化け物』

を。『悪魔』を。

 そこで、イツキにある疑問がわきおこった。

「え、体をのっとるって、もしかしてあの化けも・・・『悪魔』ってもしかして・・・・・・!」

「ああ、そうだ。君の思っている通り。君が見た化け物は、元は人間だ」

「なっ・・・・・・!」

「そして、悪魔にのっとられた人間は元の姿に戻れない」

「・・・・・・っ! まじかよ・・・・・・」

 次々と聞く信じられない発言の連続に、イツキの頭はパニック寸前だった。だが、隊長は冷静

に話しを続けた。

「その悪魔を誰にも気づかれないように始末するのが、コードBの仕事だ。この仕事は、もう

百年も昔から続けられてきた。今回のように、君のような一般人に危害を与えてしまったのは

隊長である私の責任だ。本当にすまなかった・・・・・・」

「いや、俺があんなところに行かなければ・・・・・・」

「私のせいよ!」

「ジュリ?」

 黙って話しを聞いていたジュリの口から、意外な発言が飛び出した。

「私が油断していたせいで・・・だからもう一度、私に戦わせて!」

「駄目だ!」

「なんでよ!」

「さっきから言っているだろう、お前は戦える体じゃない! みすみすお前を殺させるような

バカな真似はできんと何度言えば分かる!?」

「私は大丈夫よ!」

「だ・め・だ!」

「・・・・・・この・・・・・・わからずや隊長!」

「ふんっ、なんとでも言え」

「何度でも言うわよ、このわからずやわからずやわからずやー!」

「・・・・・・」

「わからずやわからずやわからずやわからずや――――――!!」

「き、さま! 言わせておけば・・・・・・! 大体だなぁ、いったいどっちが―――」

「もう、やめて下さい!」

 ヒートアップする口論を仲裁ちゅうさいしたのはリサだった。

「イツキさんも居るんですよ?」

「ん、ああ、そうだったな。すまない、見苦しい所を見せてしまって・・・・・・」

 んんっとワザとらしい咳払いをすると、隊長は、

「今回の事件で、君を命の危機にさらしてしまった事は本当にすまなかった。そして、この事は

絶対に他言無用でいてほしい。今回のおわびに君が望むものをなんでも与えよう。・・・・・・すまな

いが、これからあの悪魔の処理で追われてるんだ。後の事はリサ、頼んだぞ」

「はい、分かりました」

 そう言うと隊長はまたジュリと話しだした。「戦う」と言うジュリに、「ケガが治ってない

からダメだ」と言う隊長。この繰り返し。

「ジュリのお腹のキズのことなんだけど・・・・・・」

 イツキの言葉を聞いたリサは一瞬だけ険しい顔をした。

「できる限りの治療はしましたが、あまりにもキズは深すぎました。ああやって普通のように

ふるまっている今でも激痛がするはずです」

「そんな・・・・・・」

「おそらく、彼女のキズは一生のこるでしょう」

「・・・・・・!」

 それもそうだ。第一、今こうして普通に会話してること自体が奇跡。そんなキズだったはず

だ。だけど彼女はこうして戦うと言っている。彼女をこんな事態に追い込んだのは――俺だ。

何か俺に出来ることはないのか? 彼女の為にしてあげられる事は―――

「隊長! 俺にも悪魔退治を手伝わせてくれ!」

「なっ! イツキ!? なに言って――!」

「そうだ、君のような一般人をこれ以上巻き込むわけには―――」

「隊長、さっき言ってたよな? なんでも望むものをくれるって。俺は・・・悪魔退治を手伝わ

せてくれることを望む!!」

「む・・・・・・」

 少し考えこむ隊長を見て、ジュリが声を上げた。

「遊びじゃないのよ!」

「わかってる!」

「・・・・・・イツキ・・・・・・」

「俺のせいでこんな事になったんだ、俺にもなにか手伝わせてくれ! 俺に悪魔が見えたって

事は、俺にも悪魔退治ができる資格があるはずだ!」

 イツキの言葉を聞いた隊長は真剣な眼差しでイツキに聞いた。

「・・・・・・最悪の場合は、死ぬかもしれない。それでもやるというか?」

 隊長の言葉を聞いたイツキの気持ちは変わらなかった。

「俺は、死なない!」

「はっ! 面白い! ・・・・・・君にかけてみるか」

「っ! 隊長!?」

「イエスッ! それでこそ男っ!」

「ジン! ・・・・・・あー、もう! イツキ! 死んでもしらないわよ!」 


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