第十四章 目覚め
夢で会えたら手をつなごう。そこでの私は強いから、あなたに近づく勇気があります。
夢で会えたら遊びましょ、遊んで疲れて笑い合ったら、あなたと私は友達です。
俺はこの言葉を口にしていた。佳奈が教えてくれたこの言葉、2人を繋げるこの言葉。優しく呟くように何度も何度もこの言葉をささやいていた。
すると、夫人も僕に合わせて同じ言葉をささやき始めた。確か佳奈は絵本に描いてあった言葉と言っていたから、おそらく夫人が読み聞かせた絵本の言葉だったのだろう。
夢で会えたら手をつなごう。そこでの私は強いから、あなたに近づく勇気があります。
夢で会えたら遊びましょ、遊んで疲れて笑い合ったら、あなたと私は友達です。
何度ささやいただろうか、ふと握っていた佳奈の手に力が入り、俺の手を握り返してきた。
ハッとして佳奈の顔を見る、すると佳奈がこちらを見ていた。夫人もそれに気づいたらしく
「佳奈、佳奈、お母さんよ、わかる? 信二さんも来てくれたのよ。」
佳奈は1つ頷くと夫人に向かい
「お母…さん…」
と、何か言いたげだったので、夫人は佳奈の口元に耳を寄せた。
「お母さ…ん、生ん…でくれ…て、ありがとう…ね。」
夫人はそれを聞くと幼子みたいにワンワン声をあげて泣いていた。
「佳奈…佳奈…」と、それだけを言いながら。
俺もそんな2人を見て泣いていた。
佳奈、よく頑張ったな。ありがとう、と。




