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夢現物語  作者: 矢口 希
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第十章 繋がり

「ん…」

 俺は時計に目をやる、目覚ましをセットした時間よりも1時間も早く起きてしまった。

 何か夢を見ていたような気がするが、どうしても思い出せない。何か、思い出さないといけない気がするのだが、頭がうまく回らない。

「まーどうせ夢だしな」

 俺は考えるのをやめた。せっかく早く起きられたのだから、今日は弁当を作っていこう。俺はキッチンへ向かった。

  まだ頭がモヤモヤする、弁当を作りながら今朝見た夢のことを考えていた。普段はこんなことないのだが、今朝見た夢が思い出せないことが妙に引っ掛かってい るのだ。確か、女の子が出てきたような気もするのだが、全く思い出せない。夢なんてそんなものだ、と何度も自分に言い聞かせてみるのだがモヤモヤが晴れる ことはない。着替えている時も朝食を食べているときもトイレに行っているときでさえ、ずっと考えてしまうのだ。

 しかし、結局何も思い出せないままに通勤の時間がきてしまう。こんなことじゃ仕事にならないから考えるのはやめだ。そう言って思考を夢のことからはずすと俺は職場へ向かい歩き始めた。

  見覚えのある道を今日も行く。おそらく今日も何の変わりばえのない1日が始まるだろう。そう思いながら歩いていると、公園が見えてきた。向かいにあるのは もちろん病院。いつもなら何も考えずに通りすぎていくのだが、今日は何かが違うような気がした。あるべきものがないような、いるべき人がいないような、そ んなモヤモヤした感情が俺を襲う。

「おっと、仕事、仕事。」

 こんなところで立ち止まっている場合じゃなかった。職場に向かわなければ。俺は少し足早に職場に向かった。

「おはよう、鷹神君。今日も時間ぴったりだね。」

「おはよーっす」

  社長といつもの挨拶をかわす。今日は楽な仕事ばかりだ、午前中は、パソコンに向かっての仕事だけだ。俺の職場は年配の人ばかりで、パソコンが使えるのが俺 くらいしかいないから、パソコンを使う仕事は全部俺にまわってくる。俺はキーボードをカタカタならしながら、また今朝のことについて考えていた。

 こんなにも思い出したい夢ってなんなのだろう。たかが夢ごときに、と自分でも笑えてくるが、その時突然思考が動き始めた。

「女の子・・・、公園・・・、病院・・・。」

 この3つのキーワードがぐるぐる頭の中を駆け回り、やがて繋がり、みるみる昨日の出来事が思い出されていく。

「佳奈!!」

 気づいた時には俺は立ち上がり駆け出していた。

「ちょっと、鷹神君、どこ行くんだい?」

 社長が呼び止めてくる。

「すいません、今日は早退させてください。」

 それだけ言うと俺は駆け出していた。

「ちょ、ちょっと鷹神くん。」

 社長は俺を追おうとしているらしい。

「あなた・・・」

 社長の奥さんがそれを止める。

「鷹神君はやっといろいろな柵から解けようとしているんだと思うわ。私、あの子には幸せになってもらいたいの。」

「うん…そうだな。鷹神くんは、いろんな事を抱えすぎるところがあるから…」

「今日は有休にしてあげましょう。」

「そうだな、5年間も有休を使わずに溜め込んでいるんだ。本来なら1ヶ月くらい休んでもらってもいいくらいだしな。」

 2人は優しい視線で、駆けていく信二を見守っていた。


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