イラン戦争は「終結」したのか? 「合意の14項目」はアメリカとイランのどちらに有利なのか?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は6月18日に発行したとされる「アメリカとイランの合意覚書」について個人的な意見を述べていこうと思います。
◇この瞬間に合意をした理由
質問者:
そもそもどうしてアメリカはイランに攻撃したのか簡単に振り返ってもらえますか?
筆者:
表向きは「イランの核開発を止めるため」として始まりましたが、イランが核兵器を開発していたとしてもアメリカは遠い上に、西半球にのみ根を降ろす「ドンロー主義」に全く反する方針と言えます。
こちら https://ncode.syosetu.com/n1486lw/ で詳しく書きましたが、
アメリカはトランプ大統領を始めとしてシオニストからの「ユダヤマネー」が入っています。
イスラエルは「約束の地」が「岩のドーム」になってしまっているのでそこを奪取するために「反対勢力筆頭」のイランを排除したいという考えがあるのです。
そしてアメリカ国内でも「艱難前携挙説」を唱えているキリスト教福音派と呼ばれる人々はイラン攻撃を支持していたという事です。
質問者:
それならどうして戦争終結の覚書を交わしたんでしょうか……。
筆者:
一つはアメリカも弾薬に限りがあるという事です。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20260328-GYT1T00084/
この記事にあるようにウクライナへの支援でその前の時点で随分弾薬が減っていると言う情報があります。
その上で、アメリカの11月には中間選挙を控えています。この中間選挙で共和党が過半数を割り込むような事態になるとより政権運営が難しくなるために影響が出にくいところで”手打ち”にしたいというのが本音でしょう。
アメリカもベネズエラのように最高指導者を倒してしまえば「歓迎」されることを期待したのでしょうが、最高指導者直属と言ってもいい革命防衛隊はイラン経済と密接に結びついており、住民の多くが「革命防衛隊がいなくなっては困る」と思っているレベルで存在しています。
しかし、長期化すれば海上封鎖による原油輸出が出来ない上に外貨が入らない戦時経済では流石の住民の気持ちも離れかねないと踏んでイランとしても苦しいので妥協案を見出そうとしたのでしょう。
ここで注目の「合意14項目」ですが https://www.bbc.com/japanese/articles/c9d2j730qdvo BBCの記事を参考にさせてもらいますと、
項目1 「すべての戦線での」紛争の終結
⇒ レバノンなどイスラエルが交戦している地域も含む。
項目2 相互の「内政」の尊重
項目3 延長可能な60日間の期限
項目4 アメリカ軍の撤退と海峡の封鎖を解除
⇒ アメリカはホルムズ海峡の封鎖の解除とイラン近隣からの撤退を行い、戦闘開始前の2月28日以前の状態に戻すことを意味します(完全に中東の部隊を撤収するという意味では無い)。
項目5 イランはホルムズ海峡の通行に関して「最善の努力」をするとともに通行料を取らない
項目6 イラン復興資金48兆円の行方
⇒ アメリカと湾岸地域のパートナー諸国が、イランの復興と経済開発のために、少なくとも3000億ドル(約48兆円)規模の「最終的な、相互に合意された計画」を策定するとされています。
アメリカがイランに「1セントたりとも」支払う必要はなく、資金拠出も求められていないと説明しているものの不明。
項目7 イランへのあらゆる制裁の終了
⇒経済制裁や安保理決議に含まれるものを解除する。ただし時期は不明。
項目8 イランは核兵器を持たない
⇒ 項目7をする前提のための絶対条件とされている。
項目9・10 項目8対応までの間、制裁は現状維持
項目11 凍結資産は項目8履行後に返還
項目12~14 了解覚書の履行と将来の合意の順守を監視する「仕組み」を設ける。最終合意について、拘束力のある国連安全保障理事会の決議によって承認される。
質問者:
???? 日本の記事では「戦争終結」みたいな内容だったんですけど、合意の内容を見ていると「60日間の停戦延長」と言う雰囲気なんですけど……。
筆者:
そうなんですよね。正直な話、イランが核兵器を放棄しなかったり、アメリカが凍結資産を渡さなかったり、イスラエルがヒズボラを攻撃するだけで一気に停戦は破られるリスクはあると思うんです。
理想的には確かに「戦争終結」とは思いますけど、その道のりは「いばらの道」と言わざるを得ません。
日本のマスコミは政府の意向か何かは知りませんが、国民に対して早期の安心材料を与えたいのか「戦争終結」と言うワードに拘っているイメージがありますね。
◇注目は「秋」
質問者:
筆者:
今回の合意に関してイラン攻撃に対して賛成していたクルーズ上院議員を始めとした「ユダヤ側の議員」などは今回の停戦内容について不満を漏らしています。
「核合意」と呼ばれるものはオバマ政権時代にあり、それを勝手に破棄したのが第一次トランプ政権ですからね。
核兵器を捨てることが中核にありそうなので、それが目的なのなら維持しておけば良く、今回の戦争でむやみやたらに血を流す必要はなかったわけですからね。
質問者:
確かに……トランプさんは考えていることが全く分からないので、再度戦争に突入の可能性もありますか……。
筆者
僕は11月の中間選挙までは停戦は続くとは思いますけど、その後は勝っても負けても強硬な手段を取る可能性が高いと思っています。
議会の承認が必要のない「大統領権限戦争の60日ルール」を駆使して、
議会を通さないで60日攻撃⇒ 一旦休み(停戦) ⇒ 60日攻撃 のループを「目標達成まで」するのではないか? という事です。
イラン陣営が安心したところを再びオペレーション作戦を展開する可能性はゼロではないと僕は見ています。
ただ、ポイントはその前に10月末までの間にイスラエルにおいても総選挙が行われ、ユダヤロビーの力が強いネタニヤフ政権が倒れる可能性があるという事です。
しかし、イスラエルは多党制で数多くの党をまとめ上がる力にネタニヤフ氏は非常に長けているためにイスラエル史上最長の政権を維持していることから、「選挙に負けても政権に居座り続ける」可能性もあるようです。
ですが、イスラエルロビーはイスラエル本国を飛び越えてトランプ大統領に圧力をかける可能性があるので、この選挙に全てがかかっている感じもしないんですよね。
質問者:
世界情勢と言うのは一筋縄ではいかない雰囲気が凄いですね……。
筆者:
情けないことに僕の知能と持っている情報では限界があるのでこの程度の分析でとどまってしまいますね(笑)。
ただ、日本の報道だけを見ていると「もう終わった感」がありますが、それはちょっと違うのではないのか? と言うのが僕の感覚としてはあるのです。
◇仮に「終結」した場合はどうなるのか?
質問者:
仮にこのまま「終結した」場合はそもそもこの合意はどちらが有利なんでしょうか?
筆者:
イランは長期間居座った最高指導者と軍幹部を失いましたが、各地域の革命防衛隊が軍指揮を持つ「モザイク戦略」によって戦力を失うほどにはなっていません。次世代に入れ替わるスピードが速まったぐらいでしょう。
またイランの革命防衛隊や政権の体制については全く触れられていませんしね。
体制を守ることがイランの目標の一つでアメリカも「レジームチェンジ」を狙ってイスラエルにとって無力化をしたかったでしょうから全然「裏目的」を達していないのです。
その上で48兆円の投資を得る事が確約されているのでこのままいくのであれば「イランの勝ち」の合意と言って良いでしょう。
「核開発の放棄」なんて形だけで始めようと思えば原子力発電所からプルトニウム取ってくればいいだけですから(ペルシャ湾沿岸にブーシェフル原子力発電所というロシア製のものがある)、いつでも始められますよ。
質問者:
むしろ「48兆円投資」に日本が支払うことにならないか気になりますね……。
筆者:
トランプ氏はアメリカは1セントも払わないと言っていますから、多くの原油がホルムズ海峡を通過する日本としては負担を強いられても不思議では無いです。
政府は「トランプ関税」の時のように「民間投資を駆使するからOK」発言をすると思うんですけど、それの金額分が日本へ投資されないというのは大打撃ですよ。
更に日本円からドルに換えて支払うのであれば、また円安が加速するんじゃないかと懸念します。
質問者:
それでも原油が中東から日本に入ってきてくれれば何とかなりますかね……。
筆者:
ただ、下の記事のようにホルムズ海峡には20機以上の機雷が設置されており完全に除去するには半年以上かかるとされています。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000500617.html
26年2月より前の「安全に運航」と言う状況になるのはかなり先の見通しで、
6月18日時点でホルムズ海峡に取り残されている日本関係船舶38隻、関係者900人がいつ通過しきれるのかは不透明だという事です。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260619-GYT1T00158/
上の記事では18日に戦闘後最大の1250万バレルがホルムズ海峡を通過……とありますけど日本の1日の消費が300万バレルほどなのでたった4日分。しかも全世界の分と考えると少なすぎます。
質問者:
なんと! 機雷がそんなにあるのなら「本当に安全な場所」が限られていても不思議では無いですね……。
筆者:
そのためにこのままの状況では「ナフサ不足」「目詰まり」などの問題が解消されるとは限らないんです。
上のように企業側から見ると不安がまだ根本治癒されているわけではないですから。
質問者:
マスコミの印象操作で「イメージ先行」と言う感じなんですね……。
筆者:
今、議員定数削減やSNS規制など賛否両論がありそうな法案をゴリ押ししようとしていますからね。
ここで支持率が下がるとやりにくくなると見ているのかもしれません。
まだまだ状況は楽観視できませんし、長期的に見ていく必要があるのかなと思います。




