※飛んでいったアイスピックはスタッフがおいしく頂きました
「待てオラァァァァァ!」
「イヤだぁぁぁ!」
これを読んでいるあなた、こんな経験はありますか。
ゴミ箱から現れた美少女にまるでク○ウザーⅡ世みたいな超重低音ボイスで奇声を発せられながら(キャラ変わりすぎです)、アイスピックを投げつけられる。こんな経験ありますか。……僕にはあります……ってか現在進行形で追いかけられてます。
オイ! 平和な日常パートはどこ行った!? まだ授業も始まってないのに、これじゃあ僕の命はアレです、雨の降った日のホタルです。戦いの直前に「もし生きて帰ったら……俺、彼女に告白するんだ」って言う人です。死にます!
「ちょこまかと動くな! 泊まれ!」
「嫌だ……っていうか字間違えてるぞ! 俺にどこに泊まれってんだ!? 田舎か? 田舎に泊まればいいのか?」
「止れま!」
「昔あったCMかっ! どの会社のものでどんな内容だったかは忘れたけど、それ昔ドラ○もんとか観てたらよく流れたCMだよ!」
「ここが美味しいココスだよ〜」
「それは今でもたまに観るよ! てか無駄に似てるなわさびドラに!」
まあのぶ代ドラが至高の僕には関係ありませんけど。
「これを避けてみろ、槇原としあき!」
「うおっ!」
止まれって言ったり避けろって言ってみたり忙しい人ですね、杉浦猫美さん。
……ってそんな事言ってられません! 振り向いた僕の視界いっぱいにアイスピックががががが。
……落ち着け、冷静になれ僕。ある漫画でこんなセリフがありました。
『心は熱く、理論はクールに』
これですよ。落ち着け、落ち着けば大体のことはうまくいく。
まずは現在地の確認です。ここはこの高校の中にある四つの棟のうちの一つ、理科棟の二階の廊下です。僕から見て左側に窓が、右側には理科関係の特別教室があります。普段から人の通らないこの廊下なら関係ない人を巻き込まずに済みます。……他の人の事まで心配出来るなんて……まるで僕、主人公じゃないですか。
次は状況確認です。視界いっぱいのアイスピック、以上。……どうする。目算ですが、杉浦と僕との間にある距離は約十メートル。投擲されたアイスピックはもっと近く約七メートル。そのスピードは……流石にわかりません。少なくとも、何も行動しなければ三秒もしないうちに僕は串刺しにされます。それだけはわかります。
……腹括るしか無いですね。
僕は走るのを止め、その場に大きくしゃがみ込みました。
「あれー? やっと諦めてくれた?」
「……諦める気は、あるわけ無いだろがっ!」
ジャンプ一番! 僕は窓を突き破り、一気に地面へと着地……したかたったんですけど、窓の下にある転落防止の迫り出しているところで腰を強打。頭からの着地でございます。
「へえ、意外といい根性してるね」
杉浦が僕に向かって何か言っていますが、僕は「痛い痛い痛いよー」状態です。頭はクラクラするし、腰はもう既に服の上からでもわかるくらいに腫れ上がっています。その上体中ガラスの破片で血まみれ。
……生きて帰ることが出来たら我が友、ハブラレルヤ君に治してもらいましょう。
というわけで僕は痛む腰を引きずりながら(腰は引きずれないだろなんて野暮なことは言わないで下さい)グラウンドを目指します。そこには多分朝練を行っているサッカー部や、陸上部の姿があるはずです。さっきは他の人を巻き込まずに済む(キリッ)とか言ってましたけど、もうそんなこと言ってられません。死ぬわ。
「……何でやねん」
思わずそう口にしてしまいました。いないじゃんサッカー部&陸上部。
……あっ、そう言えば今日はインターハイ的な大会があるとかサッカー部の室井君が言っていました。
……まずいぞまずいぞまずいぞ。
ここにはアイスピックを投げる上での障害物がありません。見晴らし最高です。
「ヤバい……」
「ゲームオーバーってとこかな」
振り向けばやつがいる。アイスピッカー猫美です。
「どうしてこんなだだっ広い場所に逃げるかな? さっきまではうまく校舎の中の物を使って私のアイスピックを避けていたのに」
「さ、作戦さ」
言わなくてもわかりますよね、ハッタリです。
「バレバレ〜、嘘つくの下手だね槇原としあき。まあいっか」
「それじゃあ死ね」と杉浦はアイスピックを僕の顔めがけて投げてきました。
……距離は約五メートル、これなら避けれるっ!
「ふっ!」
「おりょ?」
アイスピックは僕の眉間に突き刺さることなく、遠くに飛んでいきました。
「……流石だね、まさかこの状況で私のアイスピックを避けきることが出来るなんてね」
「どうも」
「でも……」
杉浦はどこからともなく大量のアイスピックを取り出すと、それを……。
「これでおしまい。さ〜よ〜な〜ら〜」
放った。
……いやいやいや無理無理無理。流石にこれは避けきれませんよ。さっき廊下で飛んできた分の三倍はありますよ。
……嫌だ。僕はまだ死にたくない。彼女が出来た事は無いし、もちろん童貞だ。まだ読みたい漫画もたくさんあるし、やりたいゲームだってある。
……助けてください。お願いします。どうか僕を助けてください。だってそのために未来から来たんでしょう? ねえ。
「ちゅらさぁぁぁぁぁん!」
「呼んだ?」
声が聞こえたその瞬間、全てのアイスピックが明後日の方向に飛んでいきました。
「いやーごめんねぇとしあき君。道に迷っちゃって」
いや、寮から学校までは一本道何だから迷うはず無いでしょう……ってそんな事はどうでもいい。
「あんたか、槇原としあきの守護者とやらは」
「ガーディアンって言ってよん! そっちのが格好いいんだから!」
「……あんたか、槇原としあきの守護者とやらは」
「いや、別に言わなくていいよっ! 何気を利かせて言い直してんの!? お前実は良い人か!?」
「……急に元気になったね、槇原としあき」
突然の登場に杉浦も僕も面食らいましたが、やっと来てくれました。僕を守るために未来からやって来たピンク馬鹿。
「この皇ちゅらが来た以上、とっしーには指一本触れさせないよん!」
頼みましたよちゅらさん。
「任せてっ!」
「俺の心の中は読まなくていいっ!」
「さあ、バトルだよん!」
さぁ、バトルだ!




