1.『神への問い』
「───神様、どうして貴方は人と対話するの?」
「神なる意思に、測れる尺度はない」
聖女シスリルは聖堂にある巨大な石像に語りかける。
そして神の答を聞く。
その問いは疑いを含まず、その瞳は曇りなく石像を見つめていた。
噛み締めるように息を整え、唾を飲み込んで、彼女は口を開く。
「...そうですよね。素晴らしい答をありがとうございます!」
翳りゆく日差しが、聖堂のステンドグラスを通じて聖堂の内部を虹色に照らす。
「そろそろ聖堂も閉じますか。ではまた明日、話しましょう」
神からの返答はない。そこにはただ、シスリルの独り言が静かな聖堂の中でこだましていた。
そんな中、静寂の中に足音が響く。気づくとシスリルの背後には白銀の鎧を着た修道騎士が、黄色の長髪を左に束ねて立っていた。
「まだその神と話していたか。早く移動を、今夜は魔女の日だ」
それを聞くとシスリルは石像に軽くお辞儀をし、それ以上の言葉は残さず、修道騎士には視線もくれず足早に回廊へと歩んでいった。
───ゴーン、ゴーン、ゴーンーー。重厚な鐘の音が、鐘楼から街中に響き渡る。その3度の音が何を意味するか、民たちは知っている。
墨色の雲が天を密やかに侵食し、街の隙間からは藍色の息吹があがる。
紫がかった髑髏が街中に姿を現し、修道院の方へと歩みを寄せていく。薄気味悪い呻き声が街を汚していく。
月に一度訪れる、この街の災厄──『魔女の日』




