次はどうする?
翌日、冒険者のギルドマスターに、職人街の宿をチェックアウトしたことを伝えた。
もう、いつも使っている冒険者街の宿に戻りたいと相談したら、すぐに了承するのも難しいと悩まれてしまった。
「何日かダンジョンに潜って、その間に決めてもらうってのは、どうにゃ?」
サァラが提案した。
「そうね。ダンジョンを警戒して、あまり行かないようにしていたから……。
戦い方をダンジョンに学習されても問題ないなら、気にせずに闘ってみたいわ」
フォンがわくわくするのを押さえられない様子で言った。
「それもいいかもな。
ただ、トーマとフォンが攫われたり殺されたりすると困るんだよなぁ」
「あたいたちはどうでもいいっての?」
サァラがシャーッと爪を立てるポーズで威嚇する。
「ははは、国際問題になるって話だ。
冒険者の荒っぽい世界じゃ、いろいろと危険があるのは織り込み済みだろ。自分の身は自分で守ってくれや」
「まあ。そうだけど」
サァラが両手を降ろした。
「花猫風月は、みなさんCランクですよね。上位ランクと臨時で組むのはどうでしょう?」
ギルドマスターの部屋で書類の仕分けをしていた職員が、口を挟んできた。
「ああ、勉強にもなるし、その方が安心できるか」
「ギルマス。その組む相手に襲われることもあるだろう。
ダンジョンに信用できない相手と行くなんて、自殺行為だ」
ルナが不機嫌そうな、低い声で言う。
「まあな。ダンジョンでの犯罪ってのは、隠蔽しやすいって面もあるからなぁ」
ギルドマスターはちらりと職員を見た。
「なに、お前? 組ませたい冒険者でもいるのか?」
職員は少し気まずそうに目を泳がせてから、白状した。
「Bランクの鼠獣人が、パーティー休止中で暇を持て余しているんですよ」
「げっ。アイツだったら、絶対にお断り!」
サァラは職員を睨んだ。
「お、なんだ。面識があるのか」
「食堂で絡まれました」
妙に俺に関心を持っているようで、要注意人物なんだよな。
「その顔は、いい印象を持ってないんだな」
「花猫風月でもそうなんですか。
せっかくのBランクなのでこの街を拠点してほしいのですが、臨時で他のパーティーに入っても長続きしないんですよ」
「元のパーティーは産休中と聞きました。復帰するまで他のメンバーで活動すればいいんじゃありませんか? 二人だけのパーティーなんですか?」
フォンの声から面倒をこちらに押しつけるなという圧を感じる。
俺は自分が面倒ごとを持ち込んでいるから、言いにくいけどさ。
「妊婦してるのがリーダーなんだよ。子どもを産んだ後に復帰するかどうかは人によるだろ。
他のパーティーメンバーはリーダー次第っつーか……逆ハーレムパーティーなんだ」
ギルドマスターはちらりと俺を見た。
なぜ、そこで俺を見る? 別に俺たち、ハーレムパーティーじゃ……ないとは言えないけど。
「パーティーの盗賊役のやつが怪我で引退して、他の街から偵察役の鼠獣人をスカウトしてきたらしくてな」
ずいぶん積極的なパーティーだな。求める人材がいなかったら他の街で捜してくるなんて。
「高ランクの冒険者はギルドの宝です。
Bランクでも一人ではできる仕事が限られますし、正直、ぶらぶら遊ばせておくのはもったいない。
トーマ君の戦闘スタイルに対して、助言できるのではないでしょうか。一度だけなら、ダンジョン専門の戦い方を学ぶのもよろしいかと」
職員にまくし立てられた。
え、なに、これ? ギルド職員に営業されて、ねじ込まれそうな勢い……。




