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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第八章 意外と知らない世界

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次はどうする?

翌日、冒険者のギルドマスターに、職人街の宿をチェックアウトしたことを伝えた。

もう、いつも使っている冒険者街の宿に戻りたいと相談したら、すぐに了承するのも難しいと悩まれてしまった。


「何日かダンジョンに潜って、その間に決めてもらうってのは、どうにゃ?」

サァラが提案した。


「そうね。ダンジョンを警戒して、あまり行かないようにしていたから……。

戦い方をダンジョンに学習されても問題ないなら、気にせずに闘ってみたいわ」

フォンがわくわくするのを押さえられない様子で言った。


「それもいいかもな。

ただ、トーマとフォンが攫われたり殺されたりすると困るんだよなぁ」


「あたいたちはどうでもいいっての?」

サァラがシャーッと爪を立てるポーズで威嚇する。


「ははは、国際問題になるって話だ。

冒険者の荒っぽい世界じゃ、いろいろと危険があるのは織り込み済みだろ。自分の身は自分で守ってくれや」


「まあ。そうだけど」

サァラが両手を降ろした。



「花猫風月は、みなさんCランクですよね。上位ランクと臨時で組むのはどうでしょう?」

ギルドマスターの部屋で書類の仕分けをしていた職員が、口を挟んできた。


「ああ、勉強にもなるし、その方が安心できるか」

「ギルマス。その組む相手に襲われることもあるだろう。

ダンジョンに信用できない相手と行くなんて、自殺行為だ」

ルナが不機嫌そうな、低い声で言う。


「まあな。ダンジョンでの犯罪ってのは、隠蔽しやすいって面もあるからなぁ」

ギルドマスターはちらりと職員を見た。

「なに、お前? 組ませたい冒険者でもいるのか?」


職員は少し気まずそうに目を泳がせてから、白状した。

「Bランクの鼠獣人が、パーティー休止中で暇を持て余しているんですよ」


「げっ。アイツだったら、絶対にお断り!」

サァラは職員を睨んだ。


「お、なんだ。面識があるのか」

「食堂で絡まれました」

妙に俺に関心を持っているようで、要注意人物なんだよな。


「その顔は、いい印象を持ってないんだな」

「花猫風月でもそうなんですか。

せっかくのBランクなのでこの街を拠点してほしいのですが、臨時で他のパーティーに入っても長続きしないんですよ」


「元のパーティーは産休中と聞きました。復帰するまで他のメンバーで活動すればいいんじゃありませんか? 二人だけのパーティーなんですか?」

フォンの声から面倒をこちらに押しつけるなという圧を感じる。

俺は自分が面倒ごとを持ち込んでいるから、言いにくいけどさ。


「妊婦してるのがリーダーなんだよ。子どもを産んだ後に復帰するかどうかは人によるだろ。

他のパーティーメンバーはリーダー次第っつーか……逆ハーレムパーティーなんだ」

ギルドマスターはちらりと俺を見た。

なぜ、そこで俺を見る? 別に俺たち、ハーレムパーティーじゃ……ないとは言えないけど。


「パーティーの盗賊役のやつが怪我で引退して、他の街から偵察役の鼠獣人をスカウトしてきたらしくてな」


ずいぶん積極的なパーティーだな。求める人材がいなかったら他の街で捜してくるなんて。


「高ランクの冒険者はギルドの宝です。

Bランクでも一人ではできる仕事が限られますし、正直、ぶらぶら遊ばせておくのはもったいない。

トーマ君の戦闘スタイルに対して、助言できるのではないでしょうか。一度だけなら、ダンジョン専門の戦い方を学ぶのもよろしいかと」

職員にまくし立てられた。


え、なに、これ? ギルド職員に営業されて、ねじ込まれそうな勢い……。


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