きれいなお姉さんたちの受難
ルナをベッドに座らせると、べそべそと泣き出した。
「ふ、雰囲気……悪く……しちゃっ……ごべん」
サァラはルナのベッドに乗り、後ろから抱きしめた。
「ルナのせいじゃない。師匠からもらった武具を大切にするのは、当たり前にゃ」
「そうよ。使い続けられるのは、致命傷を負ったことがないという勲章でもあるわ。
……でも、女の子としては流行遅れとか言われたら悲しくなるわよね。かといって、付与のことを考えたら、気軽に新調できるものでもないし……」
フォンがルナの手を握る。
「それも、そうだけど、量産品って……何が悪いのさ? ズズッ。
師匠はいつも『金がない』って。仕方ないじゃん。他の弟子だっていたし。
それでも、あたしのために作ってくれたんだもん」
一度止まりかけた涙が、また盛り上がってこぼれ落ちた。
ああ、自分のことより師匠のことで泣いているのか。口調は荒いけど、優しいんだよな。
ノックする音がした。
俺が扉を開けると、宿屋の息子が料理を持って立っていた。
「嫌な思いをさせて申し訳ない。綺麗なお姉さんたちがいて、はしゃいじゃったんだと思う。
お詫びに酒を一瓶サービスする」
「なあ、あいつらって、いつもああなの? 女の子が嫌がってるの、顔見たらわかるじゃん。
それなのに構わず、好き勝手言いやがってさぁ」
この兄ちゃんのせいじゃないんだけど、ちょっと俺も怒っていたみたいだ。責めるような口調になってしまった。
「普段、工房に籠もってて、女の子と接触するのはそういうお店だから、距離が変に近いというか。
金を払ってるから、相手が黙って聞いてくれるだろ? その感覚が、染みついてるんだよ」
「じゃあ、話し合っても無駄だな。謝りたいって言ってきたとしても、聞くだけ無駄になりそうだ」
謝罪したいと部屋に押しかけてくることがないように、防波堤になってもらおう。
「う~ん、あいつらのことをかばってやりたいけど、その通りだ……ですね」
彼は慌てて口調を丁寧語に直した。
「いいよ、言い直さなくて」
ちょっと笑ってしまった。この息子さんはどちらの事情も汲んで、しゃべっているんだろう。
「世の中にはああいう技術にのめり込んで周りが見えなくなるタイプがいるのは、わかってる。いい仕事をしてくれそうだ、というのも感じる。
でも、俺はパーティーメンバーとして、心を踏みにじられるのを黙って許すわけにいかない」
この男は悪くない。客がデリカシーのない暴言を、悪気なく吐きまくっているだけだから。
いや、おかみさんみたいに止めてくれたら、よかったけど……まだ若いから、軽くあしらわれそうだな。
「持ってきてくれて、ありがとな。明日、チェックアウトするから」
「そうなるよなぁ~。あれ、褒めてるつもりだから、反省もしてないしな。すまなかった」
残念そうに言って、彼は出て行った。
「ごめん。チェックアウトするって勝手に決めちまった」
どこにトレイを置くか考えながら振り返ったら、ルナと俺のベッドがくっつけられていた。
その真ん中にトレイを置けばいいのか。
音もせずにいつの間に……フォンの風魔法か? こんな大きな物も動かせるって、パワーアップしてないか。
「いやぁ、なんか感動したにゃ」
サァラが目をキラキラさせている。
「今までも、似たようなことはあったわ。私たちが抗議しても聞いてもらえなかったり、火に油を注ぐようになったりしていたのよ」
「悔しい。男ってだけでズルい。グスン」
そうか、苦労してきたんだな。
戦闘力は一番低いけど――俺がいてよかったなら、嬉しい。




