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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第八章 意外と知らない世界

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気になるところ

 とりあえず今夜は四人部屋にして、そのあとのことは食事をしながら考えようとフォンに提案された。


 それで了承したが――これ、酒を飲ませてなし崩しにしようとしているパターンな気がする。気を引き締めて、飲まされないようにしなければ。

 そもそも、俺の理性が「女子たちがいいって言ってるんだから、流されてもよくね?」という本音に、必死で抗っている状態なのだ。


 昔、山猫亭で性に奔放な冒険者たちを軽く軽蔑していた少年時代の俺が「冷静になれ、流されるな」と言ってくる。

 遊び人だったばかりに、最愛の人を見つけた時に信じてもらえなかった青年もいた。

 オヤジさんとオカミさんが仲の良いのにすごく憧れたし。

 あ、お嬢さんは元気かな。もう結婚して、子どももいるかもしれないな。あの婚約者はしっかり働いているだろうか。




 一階の食堂に降りていくと、美味しそうな匂いと賑やかな雰囲気に包まれた。

 宿泊客以外の人も飲みに来ているようだ。


 人気メニューを頼み、それぞれが頼んだ飲み物を手に持った。

 リーダーのルナが声をかける。

「依頼クリア、全員生還! 難しい話は禁止ね。今日は祝うだけ。乾杯!」

「「かんぱ~い!」」


 ん? 今、さりげなく部屋割りの話はするなと釘を刺されたのか?

「ほらほら、トーマ。ぐいっといかなきゃ。ね?」

 フォンがウィンクする。

「景気よく行くにゃ」

 サァラがによによと笑う。


 ちくしょう。人の気も知らないで。

 少し自棄になって、ぐびぐびと一杯目を飲み干した。



 ふと見ると、ルナが周囲を警戒している。


「どうした?」


「いや、視線が、なんか……」

 さりげなくテーブルに着いた腕で、胸元を隠そうとする。


 いや、それは逆効果だ! 胸が寄せられて、谷間が強調されてるぞ。


「んん」

 と咳払いをして、椅子の背もたれにかけていた俺のコートをルナの肩にかけた。



 料理を運んできたおかみさんが、近くのテーブルの男たちを軽く叱る。

「女の子のおっぱいをガン見するんじゃないよ。まったく」


 事を荒立てないですまそうと思ったのに、宿の人間が暴露したぞ。


「違うわい。ビキニアーマーを見てたんじゃ」

 髭を生やしたドワーフらしき男が抗議する。


 なんと、堂々とした答えだ。冒険者だってもう少し誤魔化そうとするぞ。

 感心するやら呆れるやら……。


「そうだぞ。どこの工房の作かと推理していただけだ」

「流行的に五年以上前の物なのに、現役で使ってるんだから興味深いだろ」


 あれ? なんか話が違う。

 職人目線の話なのか?


「え、流行遅れなの?」

 ルナは両手で胸を隠した。いや、ビキニアーマーを隠したというべきか。


「気にするの、そこにゃんだ」

 サァラはつぶやいてから、蒸した肉を口に入れた。俺も同じ意見だぞ、猫娘よ。

「女の子ですもの。気になるわよね」


 あ、そうですか……。


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