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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第七章 どんな冒険者になりたいか

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私は悪くない side弓使いのセリア

 ああ、腹が立つわ。

 あのトーマというガキは、疫病神だった。



 私はエルフの里で生まれた。

 セリウィエラナ、光り輝く娘と名付けられた。

 エルフは他の者たちと違い、貴族階級などはない。村長と相談役がいるくらいだ。

 そんな中で、私は村長の娘として育った。


 それは、もう、特別な女の子でしょう?

 村で一番人気の男の子と結ばれるのが当然でしょ。

 いつも声をかけてあげたし、荷物を持つ栄誉を与えた。信頼の証よ、感謝なさい。


 それなのに、あんな平凡な女を選ぶなんて。

 信じられない。彼は間違ってる。


 問い詰めたら、「お前なんかを好きだったことは、一度もない。友達と遊ぶのも邪魔しやがって。金輪際、俺に近づくな。彼女に手を出したら殺してやるからな」なんて言うのよ?

 ひどい。あり得ないわ。



 お父様に彼の目を覚まさせてあげて、と訴えたの。

 このまま結婚するなんて駄目よ。村の真ん中の世界樹に誓うなんて、許せない。


 お父様は、私をゴミを見るような目で蔑んだ。

「ああ。彼からの訴えは本当だったのだな。つきまとい、奴隷のようにこき使ったと」


 お母様は私をぶった。

「何を勘違いしているの! 

 村長というのは、世界樹様のお世話を一番上手にできる人が務めるのよ。

 その娘というだけで、あなた自身はちっとも偉くないのよ」

 お父様の手伝いに駆け回り、身だしなみも適当なお母様。その分、私が着飾って、村長一家らしくしてあげているんじゃない。


「そもそも前の村長が事故で亡くなって、その補佐をしていた私が村長になっただけだ。

 力不足だから、寝る間も惜しんでお世話しなくちゃいけない。そのせいで、お前に構ってやれなかったのは悪かったと思うが……」

 お父様は頭をかかえた。


「なによ。村長になれたのは私のおかげじゃない」

 あまりにも悔しくて、つい口を滑らせた。


 両親からは表情が抜け落ちた。

「今、なんと言った?」



 それから、私は縛られて、家の倉庫に監禁された。


 そして、彼の結婚式の日。

 私は見張りをしている弟に、縄を解かせた。

 反省している、遠目で見たら諦められそうと言って。



 世界樹は強くて美しい。

 普通に火をつけても、燃えることはない。

 切ることは禁忌で、落ちた枝を大切に使う。

 みんなの、特別な、宝物。



 だから、穢れたものは近付けさせない。

 それも、村長の役目の一つ。



 ねぇ、幸せの絶好調にいるんでしょ。

 私にひどい言葉を投げつけて、いい気なものね。



 愛を世界樹に誓って、その瞬間に枯れたらどう思う?

 私が味わわされた絶望の、一欠片くらいは感じるべきじゃない?



 例えば、姉に裏切られた弟の血を染みこませた矢が、世界樹のてっぺんをかすめたりしてね。

 下の幹は太くて堅いけれど、枝先はまだ柔らかいはず。


 さあ、とくとご覧あれ。



 私は矢が届く、限界の距離から射た。

 続けて、白い衣裳の二人に矢を放つ。

 ああ、じわじわと赤いシミが広がっていく。紅に染まっていくのはキレイね。


 阿鼻叫喚の結婚式をじっくり見ていたかったけれど、急いで逃げた。

 高笑いしたいのも堪えた。

 ふう。なんて理性的な私。正義の一矢だもの……。




 世間知らずだった私は、あっという間に奴隷商に捕まった。

 気持ち悪いジジイに買われたり、呪術師に髪を切られたり、辛酸をなめたわ。


 長年かけて、「ハーフエルフ」と言えば狙われないことに気付いた。

 冒険者として十年ごとに拠点を変え、エレッサの街に辿り着いた。



 火魔法を使える女の子とペアを組んだ。

 次に、いきがっている二人組の青年を見つけ、パーティーを結成。

 リーダーを買って出たガルドが、面倒なことを押しつけられるヤツに声をかけようと言い出した。

 確かに、ギルドとのやり取りや細々とした面倒くさいことは多い。



 だけど、この時に断っていればよかったと、つくづく思う。



 トーマは弱っちいのに、ワイバーン討伐の裏方で活躍したとかで注目されているし。

 私はCランクだから討伐招集を受けたけれど、怪我をしていると言って断ったわ。


 戦いに集中できる日々は予想以上に快適で、気が緩んだ。

 破竹の勢いのパーティーがいると、ギルドニュースの取材まで来てしまった。

 多少不便になってもトーマを排除しなければ。



 トーマがいなくなってせいせいしたと思ったのに、予想以上にパーティーはガタガタになった。

 ブルーノはモンスターによって盾の持ち手を換えないせいで、動きに精彩を欠いた。

 ガルドは致命傷を与える場所がわからず、高額な素材を駄目にすることが増えた。

 ヴェリーはただ攻撃をするだけで、安全対策を怠っている。


 せっかくCランクに上がったのに、あっという間にDランクに落ちた。

 なんと、私も道連れにDランク落ち。


 ついに、ファイアーボールをブルーノにぶつけてしまう事故が起きた。


 しばらく、まともに依頼を受けられない。

 そして、実力を疑われてEランクまで落とされた。

 下手に注目を集めていたせいで、いつもよくしてくれるギルド職員も手心を加えられないと言う。



 そろそろ、こいつらを見捨てて次の街に行くかと検討していたら、いきなり捕まった。



 トーマが生きていたのか。悪運の強い奴め。

 二百年以上前の黒歴史まで持ち出された。エルフのくせに執念深いな。



 エレッサの冒険者ギルドの牢屋から、領主様の牢屋に移された。

 更に目隠しをされて運ばれたので、私は自分が今どこにいるのかわからない。

 でも、揃いの制服やキビキビとした所作から、すごいところに来たのはわかる。色仕掛けも全部スルーされている。仮病も通じない。



 今、私の右手には拷問用の器具がつけられている。

 素直に答えないとギリギリと締め付けられる。やめてよ。弓が引けなくなっちゃうでしょ。

 私が渡り歩いた中に、いくつか犯罪組織があったので、それも吐けってことらしい。なに便乗してんのよ。そういうの、許されるわけ?

 やめろっつってんだろうが! 痛ててててて……ひぃ! やめて、許して、ごめんなさい!


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