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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第七章 どんな冒険者になりたいか

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異分子

 フォンが何かを見て、驚いた顔をした。

 足元の荷物を覗き込み、がさがさと何かを探している。


「フォン、どうした?」

 ルナが尋ねるが、返事がない。


「何? 言ってくれたら一緒に探すにゃ」

 サァラは荷物の脇に座り込み、フォンに顔を近付けた。


「……ない」

 フォンは顔を上げ、俺の方を指差した。

「あれ、私の……」


 俺? 何?


 俺の後ろで、ぷっと吹き出す声が聞こえた。

 人の気配を感じていなかったので、ぎょっとして振り返る。


 小柄な鼠獣人の子がぬいぐるみを片手に、残りの手を腰に当てて立っていた。

「ふふ~ん、これでしょ」

 ワイルドベアの討伐に出る前に絡んできた、彼女だ。



「盗んだのか?」

 ルナが半月刀の柄に手をかける。


「気が緩みすぎじゃない? 冒険者として、どうかと思うよ」

 ハスキーな声でそう言って、ぽーんと放物線を描くようにぬいぐるみを投げた。


 フォンは急いで立ち上がり、ぬいぐるみに手を伸ばす。

 そこにその女の子が駆け寄り、フォンの首元に人差し指を添えた。

 一瞬の出来事だった。

「ほら、これであんたは死んだよ。指じゃなくて、刃物だったらね」


「な! ふざけんにゃ!」

 サァラが毛を逆立てた。



「あんたたち隙だらけ。ぬるい依頼を受けて豪遊して、勘が鈍ってるんじゃない?」

 睨まれても怯むことなく、言いたい放題だ。


「あはは。やっぱり、トーマはあたしの元で修行すべき。

 ビキニアーマーの修行したあんたなら、学ぶ環境によって伸びが違うってわかるでしょ」


 ルナは反論せず、唇を噛みしめた。


「修行すべき」と言われて、一瞬だけ心が揺れる俺。

 だが、こんなやり方は違う。一緒に行動したいと思えない。

「人の気持ちを弄ぶようなやり方は、嫌いだ」



「ええ? だってさ、あんなクソみたいな依頼受けてるの、時間の無駄じゃん」

「モンスターを討伐するのは、自分の技を磨くことだけが目的ではないわ。

 戦う術を持たない人々を助ける。その代わりに報酬をいただく。

 それは無駄なことではない」

 フォンが平坦な声で、話す。彼女の安っぽい挑発には乗らないが、怒りが滲み出ている。



「Bランク冒険者ミナス、あなたには心構えの教育が必要なようですね」

 冒険者ギルドの職員が俺たちを呼びに来て、この騒ぎを見つけたようだ。

「このトゥルメル支部に来てから日も浅い。ちょうどいいですね。

 明日、初級者向けの座学を受けるように」


「ただの職員に命令する権利ないでしょ!」

 ミナスはヒステリックな声を上げた。


 職員は眼鏡をくいっと上げて、言い放つ。

「私は、この支部で幹部として働いています。

 秩序を乱す者に対して指導する権限を持ち、放置することは職務怠慢とされます」


 ミナスは職員を睨みつけるが、反論できない様子。


「念のために訊きますが、明日のご予定は? 

 所属する『迷宮の紅爪』は休止状態ですから、講義を受ける時間はありますよね?」

「受ければいいんでしょ」

「結構。すっぽかしたら更なるペナルティを科しますよ」

 厳しい声で鼠獣人に釘を刺す。

「では、『花猫風月』さん。ギルドマスターがお待ちです。行きましょう」

 俺たちにはお手本になりそうな笑顔を見せ、次の行動に誘導した。


「ふむ、『花猫風月』。……トーマさんが『花』なんですかね」

 廊下を歩きながら、そんなことを言出す。


 え……そうか? 

 文字が誰を指すかを考えたら、確かに……いや、ちょっと待て。平凡な俺が『花』なんて、おかしいだろ。


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