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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第七章 どんな冒険者になりたいか

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ワイルドベア二頭目

 ワイルドベアは村の人たちの食料になるんだから、できるだけ内臓を痛めないやり方で仕留めたいと思う。


「フォン、風魔法で玉を作ることできるか? ファイアーボールの風版みたいな感じ」

「やったことないけど、試してみるわね」


 村長の家を出て、庭で試してみる。

 広場では、村人たちが一頭目のワイルドベアを本格的に解体していた。


「いつもは方向を決めて流す魔力を、曲げて循環させる? こうかな?」

 ぶつぶつと呟きながら、魔法を繰り出していく。


 その間に、ルナとサァラに小さな石を積んでもらった。

 俺は木登りをして、飛び降りる練習をする。


「トーマは何をやってるにゃん」

「ん~? うまくいったら明日の作戦に加えようと思って」

 無事に着地できたが、足がジーンとしている。



「トーマ、できたと思うわ」

 フォンが弾んだ声をあげた。彼女の額に汗が滲んでいる。


「おお、すごいな。じゃあ、あの石に当ててみて」

「え? ああ、そういうことね」

 フォンは俺が何をさせたいか理解したようで、視線を風の玉から積んだ小石へ移し、投げた。

 一番上の小石だけ、ポロッと落ちる。


 思わず拍手が出た。

「これの威力をあげて、ワイルドベアの足元に当てられたらいいなと考えたんだ」

「倒すには、威力が足りないわ」

 フォンが悔しそうだ。

「いや、バランスを崩せばいいよ。それどころか、驚いて隙ができるだけでも楽になるはず」


「なるほどね。あたしが切るにしても、サァラが殴るにしても、相手の意識がよそに向いているってわけだ」

 ルナが意図を読んでくれた。


「言われてすぐにできるって、すごいにゃ」

「ほんとだな。俺の思いつきだから、ダメ元だったんだけど」


 フォンは真っ赤になって、「これくらい、当然よ」とそっぽを向いた。



 夕方まで練習を続け、五段重ねの小石を跳ね飛ばすくらいになった。

 もっと練習したいというフォンをルナが止めた。

「魔力切れして明日できなかったら、本末転倒だろ」と。


 風の玉は、ウィンドボールと呼ぶことにした。




 翌日、昨日討伐したワイルドベアの毛皮の端切れをもらってきた。それを待ち伏せる場所の中央に置き、匂いを風魔法で拡散する。


 ほどなくして、鼻をひくつかせながら二頭目のワイルドベアが現れた。



 毛皮の匂いを嗅ぐワイルドベアの鼻先に、刺激のある粉をフォンの風魔法で飛ばす。

 俺たちは、それを嗅がないように、鼻と口を布で覆っている。


 ワイルドベアが後ろ足で立ち上がり、前足で鼻を押さえた。そこで、足元にウィンドボールをぶつけてよろけさせる。


 サァラがワイルドベアの膝裏に蹴りを入れる。

 ワイルドベアが怒りの咆哮をあげ、サァラを追おうとしたところを、ルナが剣で牽制した。

 突き出された手の先、爪を剣ではじき返して火花を散らす。


 ルナとサァラが互いに攻撃と援護を繰り返し、ワイルドベアは苛立ってきているようだ。


 俺は木の上で、じりじりとチャンスを待っている。

 ワイルドベアの向こう側では、狩人が弓を構えている。俺が失敗したときには、援護してくれるよう頼んだ。


 ワイルドベアが四つ足に戻った瞬間、俺はその背中に飛び降りた。すばやく首に短刀を押し込む。

 背中からさっと飛び降りて距離を取り、ワイルドベアの様子をうかがった。


 即死ではないが、もう思うように動けないようだ。


 狩人がワイルドベアの目を弓で射った。それが頭蓋骨の中まで通り、ワイルドベアが倒れた。

「苦しませないのも、慈悲だら」

 そう言って、静かに手を合わせた。

「肉も毛皮も無駄にはしません」と感謝の言葉を捧げている。



 俺たちも、それに倣って手を合わせた。


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